第四話 秘めた想い
知らなかった。あたしはずっと李斗に嫌がられていたの…?
李斗は話し続ける。
「もうこれ以上俺を“幼馴染みの李斗”として見るのはやめてくれよ。いい加減お前の望む通りの李斗を演じるのは、飽きたんだよ。」
あたしは起き上がろうと必死になった。
…悪夢のようなこの場所から、一刻も早く逃げ出したかった。
「…何…で…あたしは…李斗……」
そこまで言って、気付いた。…あたしは、李斗のことが、好きだったんだ。そんなあたしに、李斗は言った。
「もう、俺とお前は何の関係もない“赤の他人”なんだよ!!」
あたしと李斗は、赤の、他人……?
「…も…う…幼馴染み…には戻…れない…の…?」
お願い。今言ったことは、全部嘘だと、言って。
いつもの笑顔のまま。あの優しい笑顔のまま。
そして怒った顔のまま、李斗は答えた。
「もう、戻れないよ。それに俺は、戻りたいとも思わない。」
――李……ッ
李斗はあたしの携帯を取ると、アドレス帳の中から“李斗”を消去した。
「さよなら、蘭。」
そう言うと、李斗は野純さんに目配せして、手をつないで自分の家に入っていった。
そしてカチャンカチャンと二重ロックをかける音がして、家中のカーテンが閉まっていった。
もうあたしがこの家に入ることはないのだ。
あたしは泣いた。
久しぶりに流したしょっぱい涙。
泣きながらギシギシ鳴る体を起こして、フラフラと家に帰った。
今はもう他人と化した李斗との思い出を、記憶の中から消去しながら。