第二話 計略
タッタッタッタッ…
あたしの家から李斗の家まで、走っても15分はかかる。
バレー部員(入りたてホヤホヤ)のあたしは、遅いながらも一生懸命走っていた。
――着いたぁっ
呼吸を整え玄関のチャイムを鳴らそうとした。…その時。
「ウチの彼氏の家に何ズカズカ入ってきてんだよ、香山ぁ?」
どこからともなく大柄な女の子があらわれる。あたしの名前を何で知ってるんだろう。
――あっ……
あたしの名前を知っている、あの子。
あの子は…野純 由羽(のずみ ゆう)。
あたしのクラスで1年生なのに不良入りしちゃってる子。先生達を困らせるスペシャリストだ。
…ちょっと待て、今、野純さんは李斗の家のことを“ウチの彼氏の家”って言った。
つまりこれは、李斗と野純さんは付き合っているって事になるんだろうか。
返事をしないあたしにキレて、野純さんは叫んだ。
「なんだよテメー!!ちょっとここに来い!!」
そして後ろを向いて、
「先輩、お聞きになりましたよね?コイツが“例の奴”です!」
「「「みんなでシメるか」」」
野純さんの後ろから3人、恐そうな顔をした女の子が拳を握って出てきた。
――ヤバイぞ
明らかにこっちの方が不利だ。
「何様のつもりだテメー!!」
そう叫びと共にストレートのパンチが飛んでくる。必死でパンチを避ける。
…ガチャリ
玄関のドアがと開いた。
「おぅ、何してんの?」
そこには、ニヤニヤ笑っている李斗が立っていた。