表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

第十話 曝睡少年

「…おーい!テーン!」

どんなに呼んでも。

「悪いけど非常時だから許してくれよっ!」

《パシッッ》

力自慢の男子が思いっきり平手打ちをしても。


「「「意識無いねぇ…。」」」


みんなで不吉な言葉をハモってしまった。

非常時と言うだけあって、シカトも休業中だ。さすがに話しはしないけど、みんなと同じ空間にいることができた。


「さすがに呼吸はしてるよなぁ…?」

「つかさぁ、なんで倒れてるわけ?殴られてねぇから、貧血かなんかか?」

「保健室連れていった方がいいんじゃない?」

「呼吸はしてるんじゃない?お腹動いてんじゃん。」「次、英語じゃん。平澤ひらざわ先生優しいから、早退とかパパッとやってくれるっしょ。」

「そっか!次は恵海えみちゃんの授業かぁ!!絶対大丈夫だし!!」


みんなが口々に騒ぎだす。

そこへ平澤先生が入ってきた。騒いでいたから気付かなかったけど、もうとっくに鐘は鳴ってたんだ。


「授業始めるから、席に着いてね〜。」

平澤先生、いくら知らないとはいえ危機感無さすぎです。

「ちょっと恵海ちゃんそれどころじゃないって!」

「遠屋が倒れたんだよッ!意識不明の重体なんだよぉッ!!」

「イヤ、意識不明っていうより寝たまま起きないっていうほうが正しいんじゃないかな〜?」


「「「えぇッッ!?」」」


みんなが振り返ると(今までは平澤先生に訴えるために前を向いていたのだ)、クラス一の学力を誇る森洞しんどうが脈を測っているところだった。

「特に何も異常が無い。一発バキッと殴れば起きると思うけど、僕としてはこのまま休ませたほうがいいと思うよ。」

そう言いながら、指をバキバキと鳴らしている。殴る気満々なんじゃないだろうか?


みんなが沈黙していると、ずっと唸っていた平澤先生が、ぽんと手を叩いた。

「それじゃあ遠屋君には早退してもらうってことで。ちょっと待ってね…。」

すぅっと息を吸って。

「はぁっ!!」

ヒュッと手を伸ばし。

――ひたっ

テンの鼻をつまんだ。



――数秒経過。

テンは。

「…ぅげほっ」

いささか苦しそうに起きてきた。


平澤先生は、そんなテンににっこりと微笑みかけた。

そして。

「おはよう、遠屋君。君さ、顔色が悪いから早退してね〜。」

と言うと、いつの間にかまとめられているカバンを渡して、教室から出してしまった。

…あっという間の出来事だった。


「…恵海ちゃん。早退届け書かせなくてよかったの?」

女の子が、心配そうに尋ねる。


平澤先生の返答は。

「うわ〜。忘れてたわぁ。ま、いっか。偽造しちゃえば。」

――教師とは思えません。


あたし達は、みんな揃って口をあんぐりと開けていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ