第九話 <約束>という謎
お久しぶりです、高紗都です。
新展開、井田原君の登場です。嫌われキャラになりそうですね・・・。
それから二人で反省文を書いて、教室に戻った。
教科書とノートは、ビリビリに破かれ、ゴミ箱に捨ててあった。
筆箱は、掃除用具入れの中から見つかった。
カバンは、まだ発見されていない。
こんな悲惨な状況なのに、あたしはドキドキしっぱなしだった。テンが、一緒に探してくれたからだ。
「蘭!これで全部か?」
テンは長らく拭かれてない教卓の中からカバンを出すと、ホコリを払ってくれた。
「あ、うん。多分、そうだと思う。」
「…ったく。このクラスはどうなってんだ…。」
テンは忌々しげに舌打ちした。
「これから何かあったら俺に言いに来いよ!!出来る限り力になる!!」
真剣に言ってくれているのが、嬉しい。
「あ、うん。あり……」
――誰かが、こっちを睨んでる…。
前世占いで鹿が出たあたしは、そういうことに敏感だった。
――怖い…。
「…テン?」
テンは、何も気付いていない。
「何?」
「さっきからあた……」
「テン!!こっちで遊ぼうよぉ!!」
「そんなバイキンといないでさぁ!!」
声の主は窓際に集まって騒いでいた女の子達だった。
……バイキンっていうのは、多分あたしの事なんだろう。
「…バイキンって、誰のこと?」
テンは静かにそう言った。顔が、ものすごく、怒っていた。
「えぇー?そんなの決まってるじゃん!!香山菌だよ、香山菌!!」
「ほらほらテン、臭いのがうつっちゃうよ!!」
女の子たちはあたしの方を指差し、鼻をつまんでいる。
その時。
――ドンガラガッシャーン!!
あたしの横にあった机が、宙を舞った。
その場にいた誰もが、一瞬何が何だか分からなかった。
机があった場所には、テンが立っていた。
テンは、何も言わずに女の子達を睨んでいた。
冷ややかな、目。そこには、怒りしかなかった。
「・・・蘭の事を、そんな風に言うなよ。いつ蘭が、お前等に迷惑かけたんだよ・・・?」
みんな、何も言うことが出来なかった。
突然・・・。
後ろから、クスクスという笑い声が聞こえた。
振り返ると、井田原が口に手を当てて笑っていた。
「おい、遠屋。何いい子ぶってんだよ?」
井田原は、ゆっくりとテンの方に進んでいく。
「俺の遊びを邪魔しちゃいけないなぁ、遠屋?邪魔するとどうなるか、分かってるよなぁ?」
テンの頬を、井田原の指が滑る。
「遠屋、<約束>を忘れたのか?もう一度、思い出させてやろうか?」
テンの顔が引きつる。
「どうする、遠屋?」
「・・・ごめんなさい・・・。」
テンは、泣くのを必死で堪えていた。
「・・・ま、ませ・・・・。」
「あ?何て?」
歌うように、井田原が問う。
「邪魔、しません・・・。」
ふぅん、と井田原が答える。
「そういう事なら許してやるよ。ただし・・・」
ギラリと、井田原の目が光る。
「次は無いと思えよ。」
それだけ言うと、井田原は教室から出ていった。