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否定も肯定もしない管理者が、世界を一番壊してしまった件

掲載日:2026/01/28

第1章 正当な顔の侵入者


 その日、中央管理棟の空気は、いつもより少しだけ重かった。


 アマンは自分の端末を閉じ、静かに立ち上がる。長机の向こう側では、幹部補佐たちがまだ小声で話し合っていた。先週、前代表が事故で亡くなって以来、組織全体が不安定な状態にある。正式な引き継ぎは終わっているが、感情はそう簡単に切り替わらない。


 ――だからこそ、今なのだろう。


 エントランス側から足音が響いた。許可制のフロアに、事前申請なしで人が入ってくることはほとんどない。警備が止めなかったということは、正規の身分証を持っているということだ。


 姿を現したのは三人だった。


 先頭を歩くのはゼット。かつてこの組織の創設期に関わった人物で、今もなお「古参」を自称している男だ。その半歩後ろにブリューゲル。数字に強いが、常に誰かの影にいるタイプ。そして最後に、ネネ。淡い色の髪を揺らし、場にそぐわないほど柔らかな笑みを浮かべている。


「久しぶりだな、アマン」


 ゼットが、まるで今も自分が上位者であるかのような口調で言った。


「お忙しいところ悪いんですが」


 ネネが一歩前に出て、首をかしげる。その仕草は無邪気で、どこか計算が入っているようにも見えた。


「ちょっとお願いがあって来たんです。アマンさんが管理している《権限キー》、ありますよね?」


 その単語が出た瞬間、室内の空気が微かに張りつめる。


 権限キー――それは単なる端末や記章ではない。特定の区画へのアクセス、予算の承認、指示系統の最終確認。組織の中枢に触れるための象徴的な存在だ。


「ネネはね」


 ゼットが口を挟む。


「これからこの組織で正式に活動する予定なんだ。若いが優秀でね。だから、あのキーを一時的に預けてやってほしい。形だけでいい」


 形だけ、という言葉に、補佐の一人が息を呑んだ。


 それは、軽いお願いのようでいて、決して軽くはない要求だった。


 視線が一斉にアマンに集まる。


 若い管理者。前代表の死後、急遽表に立った存在。周囲の一部には、まだ「仮の責任者」だと見ている者もいる。


 断れば、冷たいと言われる。

 受け入れれば、線が崩れる。


 誰もが、アマンがどう反応するのかを待っていた。


 だが、アマンは眉一つ動かさなかった。


「なるほど」


 穏やかな声だった。


「ネネさんが活動を始める、そのために必要だと?」


「はい。だって、持っていないと不便でしょう?」


 ネネは悪気なく言った。あくまで「欲しい」のではなく、「あったほうがいい」という顔で。


 アマンは頷き、端末を軽く操作する。


「確認させてください。ネネさんの現在の所属登録と、活動許可の範囲を」


「え?」


 一瞬、ネネが言葉に詰まる。


 ゼットが肩をすくめた。


「細かいことはいいだろう。私が保証する。昔からの――」


「規定上、保証では処理できません」


 アマンの声は、淡々としていた。


 否定ではない。

 拒絶でもない。


 ただ、手順をなぞっているだけだ。


 沈黙が落ちる。


 その間、チーズは一言も発さず、壁際で記録端末を構えたまま動かない。まるで、この流れを最初から知っていたかのように。


 ブリューゲルが、わずかに視線を逸らした。


 ネネはまだ、状況を理解していない様子で笑みを浮かべている。


 ゼットだけが、違和感を覚え始めていた。


 ――話が、思った方向に進んでいない。


 だが、まだだ。

 まだ、これはただの確認に過ぎない。


 この時点では、誰もがそう思っていた。


 この場にいる全員が、これから起きる「前提の崩壊」を、まだ知らなかった。




第2章 アマンは否定しない


 空気が止まったまま、数秒が過ぎた。


 アマンは端末から視線を上げ、ネネを見た。その表情には、警戒も軽蔑もない。ただ、業務上の相手を見るときと同じ、平坦な眼差しだった。


「不便かどうか、という点については理解できます」


 そう前置きしてから、アマンは言葉を続ける。


「活動する上で、権限キーが必要になる場面があるのは事実です」


 その瞬間、ネネの顔がぱっと明るくなった。


「ですよね?」


 ゼットも、勝ち誇ったように頷く。


「ほら見ろ。話が分かるじゃないか」


 周囲の補佐たちの間に、微かなざわめきが走った。――受け入れるのか? この状況で?


 だが、アマンは首を縦にも横にも振らなかった。


「ですから」


 言葉を切り、アマンは淡々と続ける。


「まずは、必要条件を一つずつ確認しましょう」


「……必要条件?」


 ゼットの眉が寄る。


「はい。権限キーは、個人に与えられるものではありません。特定の役割と、特定の契約に紐づいて発行されます」


 アマンの指が端末の画面を軽く叩いた。


「ネネさん。現在、あなたがどの役割で登録されているか、ご存じですか?」


「えっと……」


 ネネは視線を宙に泳がせた。


「ゼットさんの……紹介、みたいな……?」


「紹介は役割ではありません」


 即答だったが、声は柔らかい。


「ブリューゲルさん」


 今度は、隣に立つ男に視線が向けられる。


「あなたは、ネネさんの活動計画書を提出していますか?」


 ブリューゲルは一瞬、口を開きかけてから閉じた。


「……いや。まだだ」


「承認申請は?」


「それも……」


 言葉が濁る。


 ネネは少し不安そうにゼットを見上げた。


「お父……じゃなくて、ゼットさん?」


「細かい手続きだ。後でまとめてやればいい」


 ゼットは苛立ちを隠さず言った。


「昔はそんなもの、もっと柔軟だった。今は融通が利かなさすぎる」


 アマンは、その言葉を否定しなかった。


「確かに、以前は柔軟でした」


 ゼットが一瞬、得意げになる。


「ですが、それは“責任の所在が曖昧だった”という意味でもあります」


 補佐の一人が小さく息を吸った。


「現体制では、役割、責任、権限は必ず紐づけられます。これは、私個人の判断ではなく、組織の合意事項です」


「合意だと?」


「はい。前代表が在任中に承認されています」


 ゼットの表情が、わずかに硬くなる。


 ネネは、話についていけなくなったのか、ぽつりと呟いた。


「でも……私は、ここで頑張ろうと思って……」


「その意思は尊重します」


 アマンはすぐに答えた。


「ただし、意思だけでは登録はできません」


 拒絶ではない。

 突き放しでもない。


 ただ、条件を述べているだけだった。


 沈黙の中で、チーズが一歩前に出る。


「現在の記録では、ネネ様は《外部見学者》としての仮登録のみとなっております」


 感情のない声だった。


「仮登録では、権限キーの発行条件を満たしません」


「仮……?」


 ネネの声が震えた。


「そんな……。私は、ここで一緒にやっていけるって……」


 ゼットが慌てて口を挟む。


「それは私の責任だ。ネネは何も悪くない。だから、融通を――」


「融通という形では処理できません」


 アマンは、同じ調子で言った。


「ですが」


 その一言に、全員の視線が再び集まる。


「正規の手続きを踏んでいただけるのであれば、話は別です」


「……どういう意味だ?」


 ゼットが警戒する。


「活動計画書の提出、役割の明確化、責任範囲の設定。その上で、審査を行います」


 アマンはネネを見た。


「それを経て、必要と判断されれば、相応の権限が付与されます」


 ネネは、ほっとしたように息をついた。


「じゃあ……ダメ、ってわけじゃないんですね?」


「否定はしていません」


 アマンは静かに答えた。


 だが、その言葉の裏にある重みを、ネネはまだ理解していない。


 ブリューゲルだけが、嫌な予感を覚えていた。


 この場で、アマンは一度も「ノー」と言っていない。


 それなのに、話は確実に、ゼットたちの思い描いていた方向から離れていっている。


 ――これは、拒否よりも厄介だ。


 そう気づいたときには、もう遅かった。


 アマンは、ただ淡々と、次の確認事項を口にしようとしていた。






第三章「静かな選択」


 朝の作業場は、いつもより音が少なかった。

 火のはぜる音も、歯車の軋みも、今日は妙に遠い。


「……で? どうするつもりなの、アマン」


 ネネが腕を組んだまま言った。語尾に棘はあるが、声は低い。怒っているというより、測っている。


「どうする、とは」


 アマンは卓の上の地図から視線を離さない。


「とぼけないで。ゼットが戻ってこない理由、分かってるでしょ」


「仮説はいくつかある」


「はっきり言いなさいよ」


 アマンは一拍置いた。

 沈黙が、答えの代わりに広がる。


「……否定はしない」


「肯定もしない、って顔ね」


 ネネは小さく息を吐いた。


 作業台の影から、チーズがひょいと顔を出す。


「ねえねえ、アマン。ゼットが裏切ったって話、ほんとなの?」


「噂は噂だ」


「でも、ブリューゲルは“事実だ”って言ってたよ?」


 その名前が出た瞬間、空気がわずかに張る。


「ブリューゲルは、確率で物を語る」


 アマンは淡々と言った。


「確率が高い=確定、ではない」


「ふーん……じゃあ、信じてる?」


 チーズの問いに、アマンは首を振る。


「信じる、という言葉は使わない」


「冷たっ」


 チーズが肩をすくめる。


 そこへ、重い足音が近づいた。


「――相変わらずだな、アマン」


 ブリューゲルだった。

 腕を組み、口元だけで笑っている。


「感情を切り離した判断。合理的で、無機質だ」


「評価は求めていない」


「だが決断は必要だ」


 ブリューゲルは一歩踏み出す。


「ゼットを切るか、追うか。どちらかだ」


 アマンはようやく地図から顔を上げた。


「二択だと思っている時点で、視野が狭い」


「ほう?」


「切る、追う、その前に確認する」


「何を」


「彼が“選ばされた”のか、“選んだ”のか」


 ネネが目を細める。


「そこ、そんなに重要?」


「重要だ」


 即答だった。


「結果は同じでも、原因が違えば、次の行動が変わる」


「……相変わらず、めんどくさい男」


 ネネは苦笑した。


「でもさ」


 チーズが口を挟む。


「それって、ゼットを信じたいってことじゃない?」


 アマンは少しだけ考えた。


「違う」


「えー」


「信じたい、ではない。誤差を残したくない」


「同じようなもんじゃん」


「違う」


 その声は、静かだが揺れていなかった。


 クワコが壁にもたれながら言う。


「つまり、アマンはまだ結論を出さない」


「出す必要がないからな」


「優柔不断とも言う」


「慎重とも言う」


 ブリューゲルが低く笑った。


「だが、その冷静さが命取りになることもある」


「感情で動く方が、早く死ぬ」


 アマンは淡々と返す。


 沈黙が落ちる。


 誰も否定できなかった。


「……分かった」


 ネネが折れた。


「じゃあ確認しに行くのね」


「そうだ」


「ゼットが敵でも?」


「その時は、その時だ」


 アマンは立ち上がり、外套を手に取った。


「否定しない。だが、決めつけもしない」


 その背中を見ながら、チーズがぽつりと言った。


「ほんと、氷みたいな人だね」


 アマンは振り返らなかった。


「氷は、割れる」


 それだけ言って、扉を開けた。





第四章「確率を上げる男」


「――アマンは、動かない」


 ブリューゲルはそう断じた。


「いや、“動けない”と言うべきか」


「聞こえてるよ、それ」


 ネネが即座に突っ込む。


「聞かせるために言っている」


 ブリューゲルは悪びれない。


「彼は確認が終わるまで結論を出さない。だが世界は、彼を待たない」


「だからって、勝手に話を進める気?」


「勝手ではない。“補助”だ」


 ブリューゲルは机の上に小さな金属筒を置いた。


「何それ」


 チーズが覗き込む。


「合図だ。正確には、誤情報を含んだ合図」


「最悪じゃん」


「必要悪だ」


 ブリューゲルは淡々と続ける。


「ゼットが潜伏している可能性が最も高い地点に、偽の移動情報を流す」


「罠?」


「誘導だ」


 ネネが眉をひそめる。


「ゼットが敵だった場合、どうなる?」


「彼は必ず動く。味方だった場合も、動かざるを得ない」


「……どっちに転んでも、姿を現すってわけ」


「そうだ。確率は八割を超える」


 その場に、短い沈黙。


「アマンは?」


 クワコが尋ねた。


「知らせない」


 ブリューゲルは即答した。


「は?」


「彼は判断を歪める。意図せず、だ」


「それ、裏切りじゃない?」


 チーズが言う。


「違う。彼の美徳を守るためだ」


「意味わかんない」


「分からなくていい」


 その時、扉が開いた。


「……今の話、どこまでが冗談だ」


 アマンだった。


 ブリューゲルは一瞬だけ目を細め、すぐに笑う。


「半分は事実だ」


「残り半分は」


「君が止める前提の計画」


「止めるつもりはない」


 アマンはそう言い切った。


 場がざわつく。


「ただし」


 アマンは続ける。


「俺を外す理由を、説明しろ」


「簡単だ」


 ブリューゲルは一歩前に出る。


「君は、ゼットを“確認”したい。私は、“結果”が欲しい」


「衝突するな」


「だから分業だ」


 アマンは数秒、黙った。


「……失敗した場合」


「責任は私が取る」


「命も?」


「必要なら」


 ネネが鼻で笑った。


「大げさ」


「いや、現実的だ」


 ブリューゲルは視線を逸らさない。


「確率を上げるには、賭け金が必要だ」


「その賭けに、俺を使うな」


「使わない。だから外す」


 アマンはゆっくり息を吐いた。


「……分かった」


 全員が驚いた。


「止めない。ただし条件がある」


「聞こう」


「ゼットが現れた場合、最初に接触するのは俺だ」


「合理的とは言えない」


「だが最短だ」


 ブリューゲルは少し考え、頷いた。


「いいだろう。確率は下がるが、許容範囲だ」


「数字で人を測るな」


「測らなければ、死ぬ」


 短く言い切る。


 金属筒が起動音を立てた。


「もう止まらない?」


 チーズが聞く。


「止める理由がなくなった」


 ブリューゲルは微笑んだ。


「さあ、盤は動いた」


 アマンは窓の外を見た。


「……ブリューゲル」


「何だ」


「ゼットが戻らなかった場合」


「その時は?」


「次は、俺が動く」


 ブリューゲルは肩をすくめる。


「それでこそだ」




第五章「反応速度」


「……来た」


 ゼットは、音もなく端末を伏せた。


「やっぱり、か」


 独り言のように呟く。


 画面に表示されたのは、移動ログ。

 正確すぎる座標。

 そして――わざとらしい“焦り”。


「雑だな。ブリューゲルにしては」


 ゼットは口角をわずかに上げた。


「でも、嫌いじゃない」


 背後で、微かな足音。


「見てた?」


 声を潜めた女が言う。


「見せられてた、が正解だ」


「罠?」


「八割」


「高くない?」


「彼の性格を考えれば、むしろ低い」


 ゼットは立ち上がり、コートを羽織る。


「行くの?」


「行かされる」


「行かなきゃいいじゃん」


「そうすると、別の形で盤を動かされる」


 女は溜息をついた。


「相変わらず、嫌なやつ」


「褒め言葉だ」


 ゼットは振り返らずに言った。


「――問題は」


「何?」


「アマンが、これをどう扱うかだ」


 女が一瞬、黙る。


「……まだ気にしてるんだ」


「気にしている、ではない」


 ゼットは扉に手をかけた。


「計算に入れている」


「感情を?」


「彼の“確認癖”を」


「それ、感情でしょ」


「区別はしていない」


 外に出ると、空気が冷たかった。


「さて」


 ゼットは通信を入れる。


「こちら、予定外の動きだ」


『想定内だ』


 即座に返ってきた声。


「早いな」


『君が反応しない確率は二割以下だった』


「相変わらず数字が好きだ」


『嫌いではないだろう』


「まあね」


 ゼットは歩き出す。


「で? これは誰向けの芝居だ」


『二重だ』


「やっぱり」


『君と、もう一人』


「アマン?」


『ああ』


 ゼットは足を止めた。


「……それは、少しズルい」


『君が彼を切らなかった結果だ』


「切ってないわけじゃない」


『まだ線が残っている』


「線は、消せない」


 少し間が空く。


『では、どうする』


「決まってる」


 ゼットは微笑った。


「罠に、正しい反応をする」


『正しい、とは』


「逃げも隠れもしない」


『それは危険だ』


「彼が来るなら、尚更」


『君は――』


「分かってる」


 ゼットは通信を切った。


 路地の奥、影が動く。


「……来たか」


「やっぱり気づくよね」


 ネネの声。


「気づかせる配置だ」


「ブリューゲルが?」


「彼以外にいない」


「じゃあ、アマンは?」


 ゼットは一瞬、言葉を選んだ。


「……まだ、来てない」


「来ると思う?」


「来る」


 即答だった。


「どうして?」


「確認しないと、前に進めない人だから」


 ネネは小さく笑った。


「変わってないね」


「変わらないのが、彼の強さだ」


 足音が、重なった。


「ゼット」


 その声に、ゼットは振り向く。


「久しぶりだな、アマン」


「逃げなかったんだな」


「逃げる理由がない」


「罠だぞ」


「知ってる」


 短い沈黙。


「……確認したいことがある」


 アマンが言った。


「答えられる範囲なら」


「これは、敵対行動か?」


 ゼットは少し考え、首を横に振った。


「いいや」


「なら、協力か?」


「それも違う」


「曖昧だ」


「正確だ」


 ゼットは一歩近づいた。


「俺は“反応”しただけだ」


 アマンは目を細める。


「ブリューゲルの想定通り?」


「半分はな」


「残り半分は」


 ゼットは笑った。


「君が来ること」


 空気が張り詰めた。


 遠くで、何かが動き出す音。


「……盤は、もう戻らないな」


 アマンが言う。


「ああ」


 ゼットは頷いた。


「次は、君の番だ」








第六章「保留という結論」


「――で?」


 ネネが腕を組んだ。


「今のところ、どう判断するの」


「まだしない」


 アマンは即答した。


「それ、判断放棄じゃない?」


「違う。“判断しない”という判断だ」


「同じに聞こえる」


「機能が違う」


 ゼットが小さく笑った。


「相変わらずだな」


「変わってほしかった?」


「いや。期待通りだ」


 ブリューゲルは一歩前に出る。


「アマン。確認は終わったはずだ」


「事実の確認はな」


「では、なぜ結論を出さない」


 アマンは視線を上げない。


「結論を出す条件が、まだ揃っていない」


「条件?」


「意図だ」


 ネネが眉をひそめる。


「意図って……気持ちの話?」


「違う。行動の方向性だ」


 アマンはゼットを見る。


「お前は罠に反応した。それは事実だ」


「否定しない」


「敵対でも協力でもないと言ったな」


「ああ」


「なら聞く」


 アマンは間を置いた。


「次に取る行動は、どっち側に力を与える?」


 沈黙。


 ゼットはすぐに答えなかった。


「……まだ、決めていない」


「それが答えだ」


 ブリューゲルが口を挟む。


「それは危険だ。未確定要素は排除すべきだ」


「排除は、結論だ」


「そうだ」


「だから、今はしない」


 ネネがため息をつく。


「めんどくさ……」


「簡単にすると、こうだ」


 アマンは顔を上げた。


「ゼットは“未定”。だから、未定として扱う」


「それって……」


「敵でも味方でもない、第三の状態だ」


 チーズが首を傾げる。


「そんな扱い、できるの?」


「制度上は可能だ」


 ブリューゲルが目を細める。


「暫定観測対象、か」


「そう」


「彼を“固定しない”と?」


「固定すると、行動が歪む」


 ゼットが肩をすくめた。


「信用されてないな」


「信用していないわけじゃない」


「じゃあ?」


「信用を使っていない」


 その言葉に、場が静まる。


「アマン」


 ゼットが低い声で言う。


「それは、逃げじゃないのか」


「違う」


 即答だった。


「これは前進だ」


「どこへ?」


「選択肢が増える方向へ」


 ブリューゲルが短く笑う。


「非効率だ」


「効率より、再現性を取る」


「理想論だ」


「現実論だ」


 アマンは言い切った。


「過去の失敗は、全部“急いだ結論”から始まっている」


 ネネが少しだけ表情を緩めた。


「……それ、あたしにも刺さる」


「刺さらなくていい」


「刺さるって」


 ゼットはアマンを見つめた。


「じゃあ、俺はどうすればいい」


「自由だ」


「放置?」


「観測下での自由だ」


「最悪だな」


「安全だろ」


「どっちにとって?」


「全員にとって」


 ブリューゲルが一歩引いた。


「……了解した」


 珍しく、素直だった。


「計画は?」


「更新する」


「君を中心に?」


「いや」


 アマンは首を振る。


「中心を作らない」


 沈黙。


「それが、今回の結論だ」


「結論を出してないって言ったくせに」


 ネネが言う。


「否定も肯定もしない、という結論だ」


 ゼットは小さく息を吐いた。


「……やっぱり、変な男だ」


「今さらだ」


 アマンは淡々と言った。


「お前を敵だとは言わない」


「味方とも?」


「言わない」


「保留?」


「観測継続」


 ゼットは笑った。


「それ、案外悪くない」


 外で風が鳴った。


 盤は、まだ固定されていない。


 だが確かに、次の一手の余白が生まれていた。







第七章「未定の裏切り」


「――動いたな」


 ブリューゲルが低く言った。


「まだ“裏切り”って決めてないでしょ」


 ネネが返す。


「保留状態での独断行動は、定義上は裏切りだ」


「定義、定義って……」


「感情で測るな」


 通信端末が鳴った。


『こちらゼット』


 一同の空気が変わる。


「繋げ」


『聞こえてるな』


「聞こえてるよ。今どこ」


『管轄外』


「……やったね」


 ネネがぼそっと言う。


「意図を説明しろ」


 アマンの声は静かだった。


『説明はできる』


「してくれ」


『だが、納得はさせられない』


「それでいい」


 短い沈黙。


『俺は今、第三勢力に接触した』


「は?」


『ブリューゲルの想定外だ』


「……続けろ」


『彼らは、俺たち全員を“まとめて切る”準備をしている』


「根拠は?」


『内部ログ』


「提示できる?」


『できるが、今は渡さない』


 ネネが声を荒げる。


「何それ!?」


『信用の問題じゃない』


「じゃあ何?」


『速度の問題だ』


「……ゼット」


 アマンが呼ぶ。


『何だ』


「それは、保留を破る理由になるか?」


『なる』


「どうして」


『待てば、選択肢が消えるからだ』


「確定情報がないまま動くのは危険だ」


『確定を待つ時間がない』


「それは君の判断だな」


『ああ』


「組織の判断ではない」


『最初から、そうだ』


 ブリューゲルが割り込む。


「君は自分を特別扱いしすぎだ」


『していない』


「ならなぜ、共有しない」


『共有すると、止められる』


「止めるのが役割だ」


『だから止めさせない』


 空気が張り詰める。


「……つまり」


 ネネが言う。


「ゼットは、わざと“悪者”になる選択をした?」


『悪者ではない』


「じゃあ何?」


『先行者だ』


 チーズが小さく呟く。


「嫌な言い方……」


「ゼット」


 アマンが一歩踏み出す。


「君は今、“保留”を破った」


『理解している』


「それは、こちらが君を“未定”として扱えなくなる行為だ」


『分かっている』


「敵対と見なされる可能性もある」


『それも込みだ』


 しばらく誰も話さなかった。


「……理由を一つだけ聞く」


 アマンが言う。


「なぜ、俺に知らせた」


『知らせない選択肢もあった』


「だろうな」


『だが、それは完全な裏切りになる』


「半分ならいいと?」


『半分なら、戻れる』


 ネネが鼻で笑う。


「都合いいなぁ」


『都合の問題じゃない』


「じゃあ何?」


『線を残したかった』


 アマンは目を伏せた。


「……君は、ずるい」


『そうだな』


「確認する」


 アマンは顔を上げる。


「その第三勢力への接触は、被害を減らすためか?」


『ああ』


「君自身の保身ではない?」


『結果的には、守る』


「誰を?」


『君を含む、全員を』


 ブリューゲルが冷たく言った。


「証明できなければ、意味がない」


『証明は後でできる』


「後では遅い」


『だから今、俺が動いた』


 再び沈黙。


「……結論を言う」


 アマンが言った。


「君の行動は、保留を破った」


『ああ』


「だが、即座に敵対とは判断しない」


 ネネが目を見開く。


「え?」


「条件付きで“逸脱者”として扱う」


『随分やさしいな』


「違う」


「何?」


「厳しい」


 アマンは続ける。


「君はもう、制度の内側にはいない」


『理解している』


「戻るには、行動で示せ」


『……ああ』


 通信が切れた。


「アマン」


 ブリューゲルが言う。


「甘いぞ」


「甘くない」


「制御不能だ」


「制御しない」


 ネネが小さく息を吐く。


「ほんと、変な判断」


「そうか?」


「普通じゃない」


「普通は、盤を固定したがる」


 アマンは静かに言った。


「だが今は、動かした方がいい」


 遠くで、何かが軋む音がした。


 保留は破られた。

 だが線は、まだ切れていなかった。



第八章「結果は音もなく現れる」


『――接続完了』


「早いな」


『向こうが焦ってる』


「それは良い兆候?」


『悪い兆候だ』


「……理由は?」


『予定より早く“切り札”を切ってきた』


「もう?」


『ああ』


 通信越しに、わずかな雑音。


「具体的に何が起きた」


『第三管区の管理権限が、今この瞬間に失効した』


「失効?」


『正確には、上書きされた』


 ネネが声を上げる。


「ちょっと待って、それって——」


『ブリューゲルの管轄だ』


「……っ」


 別回線が開く。


『確認した』


 ブリューゲルの声だった。


『事実だ。権限ログが改変されている』


「いつ?」


『五分前』


「五分……」


『つまり』


 ゼットが言う。


『俺が接触した直後だ』


 沈黙。


「……反応が早すぎる」


 ブリューゲルが呟く。


『向こうは、俺を“交渉者”じゃなく“引き金”と見た』


「それは想定内?」


『半分は』


「半分?」


『完全に無視される可能性もあった』


「でも、そうはならなかった」


『ああ。だからこれは——』


「結果、だね」


 ネネが言った。


『そうだ』


「で? 悪い結果?」


『まだ判断できない』


「曖昧すぎる」


『だが一つだけ確かなことがある』


「何?」


『俺の行動で、盤面は動いた』


 アマンが口を開く。


「それによって、何が可視化された?」


『敵が、待てない段階に入っている』


「切迫している?」


『余裕がない』


「それは、こちらにとって有利か?」


『条件次第だ』


「……ゼット」


 アマンの声は低い。


「君は今、“引き金”を引いた自覚はあるか」


『ある』


「怖くはない?」


『怖い』


 ネネが小さく息を呑む。


「即答なんだ」


『怖くない選択は、遅れる』


「……なるほど」


 別の音声が割り込む。


『警告』


「チーズ?」


『第三勢力が、内部向け通達を出した』


「内容は?」


『“逸脱者ゼットの行動により、監視レベルを引き上げる”』


「名指し……」


『ああ』


 説明するまでもなく、重い。


「つまり」


 ブリューゲルが整理する。


「ゼットの行動は、敵の警戒を一段階引き上げた」


『そうだ』


「それは、こちらに不利だ」


『短期的には』


「短期的?」


『だが同時に、隠していたカードを一枚吐かせた』


「……どのカードだ」


『“上書き権限”の存在』


 沈黙が落ちる。


「それは……」


 ネネが言葉を探す。


「今まで、仮説だったやつ?」


『ああ』


「確証がなかった」


『今はある』


「代償が大きすぎない?」


『大きい』


「後悔してる?」


『していない』


 アマンが静かに言った。


「君は、最初の結果を選んだ」


『ああ』


「次は?」


『次は——』


 通信が一瞬、途切れた。


『……来たな』


「何が?」


『向こうからの正式な接触だ』


「もう?」


『ああ。予想より二時間早い』


 ブリューゲルが低く笑った。


「完全に想定外だ」


「でも」


 ネネが言う。


「動いたから、向こうも動いた」


『それが狙いだ』


「……ほんとに厄介な人」


『褒め言葉として受け取る』


 アマンは目を閉じ、短く息を吐いた。


「確認する」


「この結果は、引き返せない段階か?」


『いいや』


「まだ、修正は可能?」


『可能だ』


「代償は?」


『増える』


「……それでも?」


『それでも』


 アマンは一拍置いて言った。


「なら、この結果は受け入れる」


 ネネが振り向く。


「いいの?」


「いい」


「怖くない?」


「怖い」


 アマンは静かに続けた。


「だが、動かない方が怖い局面に入った」


 通信の向こうで、ゼットが小さく笑った。


『……了解』


「次の報告を待つ」


『すぐになる』


「生きて戻れ」


『努力する』


 通信が切れた。


 部屋に残った沈黙は、さっきより重い。


「……これが“最初の結果”か」


 ネネが呟いた。


「まだ序章だ」


 ブリューゲルが言う。


「本番は、これからだろう」


 アマンは答えなかった。


 ただ、盤の上で確かに動いた駒を、静かに見つめていた。


次はどうする?


9章で第三勢力との直接会話(ゼット視点)


それともアマンが結果を受けて組織判断を下す章に行く?


第八章「結果は音もなく」


「――来た」


 ゼットが言った。


「早いな」


「向こうも急いでる」


「想定より?」


「三割増しで」


「それは悪い知らせ?」


「いい知らせだ」


「根拠は?」


「焦ってる」


 通信越しに、低いノイズ。


『確認した。アクセス痕跡あり』


「誰の?」


『第三勢力の中枢』


「……釣れたか」


『釣った』


「ゼット」


『分かってる』


「深入りするな」


『もう深い』


「戻れ」


『戻らない』


 間。


「理由は」


『今なら、引きずり出せる』


「危険だ」


『危険じゃない選択肢は、もう無い』


「……ログを送れ」


『今送る』


 データ転送音。


「受信した」


「ネネ、確認」


「ちょっと待って……」


「ブリューゲル」


「見て知道した」


「どう?」


「……本物だ」


「本当に?」


「偽装がない」


「やば」


「中枢が動いた証拠だ」


「ゼット、よくやった!」


『褒めるな』


「なんで?」


『次が来る』


「次?」


『報復だ』


 空気が変わる。


「どの規模?」


『限定的』


「限定?」


『俺一人に向けて』


「……!」


「ゼット、離脱しろ!」


『できない』


「何で!」


『ここを離れると、痕跡が消える』


「命より?」


『命を賭ける価値がある』


「勝手に決めるな!」


『決めた』


「……アマン」


 ネネが呼ぶ。


「判断を」


「待て」


「でも!」


「待つ」


 短い沈黙。


『来た』


「何が」


『接続遮断』


「ゼット!」


『まだ繋がってる』


「どこだ」


『地下層』


「単独?」


『単独』


「援護を――」


『要らない』


「強がるな!」


『強がってない』


 銃声のような音。


「今の!」


『警告』


「撃たれた?」


『撃った』


「は?」


『向こうが』


「……生きてる?」


『生きてる』


「状況を言え!」


『囲まれてる』


「数は!」


『三』


「多い!」


『減らす』


「ゼット!」


『静かに』


 息を整える音。


『一人、沈黙』


「……」


『二人目、退いた』


「どうやって」


『交渉』


「交渉!?」


『条件を出した』


「何を」


『ログの公開』


「脅しか」


『取引だ』


「三人目は?」


『まだいる』


 間。


『……終わった』


「終わった?」


『逃げた』


「怪我は?」


『軽い』


「ほんとに?」


『本当だ』


 長い息。


「……ゼット」


 アマンが言う。


「結果を報告しろ」


『第三勢力の中枢は、内部崩壊を恐れてる』


「なぜ分かる」


『動きが雑だ』


「他は」


『俺への報復は失敗』


「被害は?」


『最小』


「証拠は残った?」


『残した』


「……成功だな」


『ああ』


 ネネが声を弾ませる。


「すごいじゃん!」


「まだだ」


 ブリューゲルが言う。


「これは“最初の結果”に過ぎない」


『分かってる』


「君はもう戻れない」


『承知している』


「それでも?」


『それでも動く』


「理由は変わらない?」


『変わらない』


「何だ」


『待てば、選択肢が消える』


 アマンは小さく笑った。


「……確認する」


「何?」


「ゼットの行動は、結果を生んだ」


「うん」


「だが同時に、次の段階を呼び込んだ」


『そうだ』


「もう一度聞く」


「何?」


「君は、それを引き受ける覚悟があるか」


『ある』


 即答だった。


「……なら」


 アマンは言った。


「次は、こちらも動く」


『やっとか』


「単独行動は許可しない」


『制限付きなら』


「条件を出す」


『聞こう』


「生きろ」


『……善処する』


「約束だ」


『努力目標だな』


「それでいい」


 通信が切れた。


「……結果、出たね」


 ネネが言う。


「ああ」


「でも、怖い」


「そうだな」


「アマン」


「何だ」


「これ、もう後戻りできないよ」


「最初からだ」


 静かに、だが確かに。


 ゼットの行動は、世界を一段押し動かしていた。





第九章「陣形変更」


「――全員、聞いてるな」


 アマンの声が、部屋に落ちた。


「聞いてるよ」


 ネネが即答する。


「当然だ」


 ブリューゲルも続く。


「……はい」


 チーズは少し遅れて。


「クワコは?」


「黙ってるけど、端末は生きてる」


「問題ない」


 アマンは卓上の投影図を操作した。


「これより、配置を変更する」


「やっと来た」


 ネネが小さく笑う。


「前提を共有する」


「ゼットの独断行動が、最初の結果を生んだ」


「成功だったよね?」


「短期的には」


「長期は?」


「未確定だ」


「いつもそれだな」


「未確定を扱うのが役割だ」


 ブリューゲルが口を挟む。


「結論は?」


「中央集権をやめる」


 一瞬、空気が止まった。


「……は?」


 ネネが聞き返す。


「もう一度言う」


「中央を、解体する」


「正気?」


「正気だ」


「統制は?」


「分散させる」


「リスク高すぎない?」


「今のままの方が高い」


 アマンは淡々と続けた。


「これまでの陣形は、“待てる”前提だった」


「うん」


「だが今は、待つほど削られる」


「だから?」


「動ける単位を増やす」


「ゼットみたいなのを?」


「違う」


「何が違うの?」


「独断ではなく、裁量だ」


「言い換えただけじゃん」


「責任の所在が違う」


 ブリューゲルが腕を組む。


「具体的に言え」


「三系統に分ける」


「三つ?」


「観測、交渉、干渉」


「役割分担か」


「固定ではない」


「流動的?」


「ああ」


 ネネが首を傾げる。


「で、私はどこ?」


「観測」


「えー、地味」


「最重要だ」


「ほんと?」


「君の判断速度が要る」


「褒めてる?」


「事実だ」


「……まあいいけど」


「ブリューゲル」


「何だ」


「交渉を任せる」


「皮肉か?」


「最も冷静だからだ」


「納得はしていないが、受け取る」


「チーズ」


「は、はい!」


「干渉補佐」


「補佐?」


「直接動くな」


「えっ」


「判断が揺れる」


「……はい」


「クワコ」


 返事はなかった。


「聞こえてるな」


『……ああ』


「単独判断を許可する」


『は?』


「条件付きだ」


『珍しいな』


「制限時間を設ける」


『面白い』


「時間を過ぎたら、強制共有」


『分かった』


 ネネが目を丸くする。


「思い切ったね」


「思い切らないと、崩れる」


「ゼットは?」


 その名が出て、空気が少し張る。


「ゼットは“外部可動”」


「……つまり?」


「正式な陣形外」


「それって」


「矛だ」


 ブリューゲルが低く言う。


「制御不能の」


「制御しない」


「再度言うのか」


「ああ」


「理由は」


「彼は、動くことで均衡を壊す」


「危険だ」


「必要だ」


 ネネが息を吐く。


「ほんと、賭けるね」


「賭けではない」


「じゃあ何?」


「選択だ」


 間。


「確認する」


 ブリューゲルが言う。


「この陣形変更は、不可逆だな」


「戻すつもりはない」


「責任は?」


「俺が取る」


「全て?」


「全てだ」


 その即答に、誰も言葉を挟めなかった。


「……分かった」


 ブリューゲルが頷く。


「従おう」


「ネネ」


「了解了解」


「チーズ」


「が、がんばります」


「クワコ」


『面白くなってきた』


「以上だ」


 アマンは端末を閉じた。


「これで、陣形は変わった」


「実感ないなあ」


「すぐ来る」


「何が?」


「反応が」


 その瞬間、警告音。


「……来たね」


「早い」


「第三勢力?」


「おそらく」


 アマンは静かに言った。


「各自、役割を遂行しろ」


「了解」


「了解」


『了解』


 誰も迷わなかった。


 陣形は組み替えられた。

 もう、以前の形には戻れない。


 だが――

 それでいいと、アマンは思っていた。






第十章「外に立つ者」


「……切れたか」


 ゼットは独り言を落とした。


「通信、問題なし」


 自分に返事をする。


「陣形変更、確認」


「了解」


 誰もいない。


「外部可動、か」


「いい響きじゃない」


 足音が反響する。


「中央から外れた」


「正確には、外に出された」


「違うな」


「選んだ」


 端末が振動した。


『位置確認』


「するな」


『義務だ』


「今は“外部”だ」


『……了解』


「そう素直だと、逆に怖い」


『心配している』


「知ってる」


「だから距離を取った」


 短い沈黙。


「なあ」


 ゼットは空間に向かって話す。


「俺がここにいる意味、分かるか」


「分かってる」


「均衡破壊」


「刺激役」


「厄介者」


 笑う。


「全部だ」


 遠くで金属音。


「……来るか?」


「いや」


「まだだ」


「孤独ってのは、音が多い」


 端末が再び鳴る。


『ゼット』


「アマンか」


『聞こえるか』


「聞こえてる」


『状況を共有しろ』


「拒否」


『理由は』


「今は、俺が“観測点”だ」


『観測はネネの役割だ』


「内側の、な」


『……外の観測か』


「そう」


「嫌いだろ、曖昧なの」


『嫌いだ』


「でも切らない」


『切らない』


「それが答えだ」


 しばらく無音。


『無理はするな』


「する」


『生きろ』


「努力目標だ」


『……そう言うと思った』


「そっちはどうだ」


『陣形は動いている』


「摩擦は」


『ある』


「良い」


『良い?』


「摩擦がない再編は嘘だ」


『君は本当に――』


「分かってる」


「面倒だ」


 通信が切れた。


「……やっぱり、外は静かだ」


「誰も命令しない」


「誰も止めない」


「自由だ」


 小さく舌打ち。


「不自由だな」


 影が動く。


「……来た」


「三人」


「いや、二」


「いや」


「一人だ」


 声が響く。


「ゼット」


「名前を呼ぶな」


「久しぶりだな」


「知らない」


「嘘をつくな」


「嘘はついてない」


「覚えてないだけだ」


「それは同じだ」


 距離が詰まる。


「中央を離れたそうだな」


「噂は早い」


「外部可動、だったか」


「そう呼ぶな」


「じゃあ何と呼ぶ」


「俺」


「傲慢だな」


「今さらだ」


「戻る気は?」


「ない」


「誘いだ」


「断る」


「理由は?」


「孤独の方が、まだマシだ」


「強がり」


「事実だ」


 間。


「ここで殺すか?」


「できるならな」


「やらないのか」


「やらない」


「なぜ」


「俺を消すと、均衡が変わる」


「賢い」


「面倒なだけだ」


「……忠告だ」


「聞かない」


「中央は君を守れない」


「最初から、守られてない」


「違う」


「何が」


「君は、選ばれていた」


「選択肢として、な」


「それが嫌だった?」


「それだけじゃない」


「じゃあ何だ」


「保留が嫌いなんだ」


「未定が?」


「そう」


「白か黒か?」


「いや」


「決めないことを、決める」


 相手は黙った。


「……やはり厄介だ」


「褒め言葉だな」


「じゃあな、外部可動」


「次は敵か?」


「未定だ」


「それが嫌いなんだろ」


「今は、使う」


 影が去る。


「……」


「一人だ」


「外は、広い」


 ゼットは歩き出す。


「アマン」


「聞こえてないだろうが」


「陣形は、悪くない」


「孤独は」


「慣れる」


 足音が遠ざかる。


 外部可動は、孤独だった。

 だがその孤独こそが、

 次の一手を生む余白だった。





第10章「試される陣形」


来たな」


 アマンが短く言った。


「どこ?」


 ネネが即座に返す。


「境界線の外縁」


「早くない?」


「予定通りだ」


「予定してたの!?」


「来ると決めていた」


 ブリューゲルが低く息を吐く。


「試しだな」


「ああ」


「第三勢力?」


「断定はしない」


「またそれ」


「だが“測っている”」


 投影図に複数の点が灯る。


「接触は?」


 チーズが聞いた。


「まだだ」


「でも近い」


「近づけている」


「え、わざと?」


「新陣形の耐性を見る」


「怖いことするね」


「怖くない判断は、遅い」


 ネネが肩をすくめる。


「で、私の役割は?」


「観測」


「いつも通り」


「違う」


「何が?」


「共有しなくていい」


「……ほんと?」


「君の裁量で切れ」


「了解」


 ブリューゲルが口を開く。


「交渉系統、動くか?」


「まだだ」


「挑発されても?」


「乗るな」


「耐えるのが試験か」


「そうだ」


 警告音。


「来た!」


「どれ?」


「このライン!」


「……接触だな」


 音声が割り込む。


『こちらは管轄外の確認を求める』


「来た来た」


「応答するな」


「え?」


「今はしない」


『繰り返す、応答せよ』


 チーズが不安そうに言う。


「無視、ですか?」


「無視ではない」


「何が違うんですか」


「選別だ」


「選別……」


 ブリューゲルが苦笑する。


「性格が悪いな」


「必要だ」


 沈黙。


『応答がない場合――』


「来るね」


「来させる」


 ネネが指を止めた。


「……アマン」


「何だ」


「これ、中央を狙ってない」


「分かっている」


「じゃあどこ?」


「“外”だ」


 一瞬、誰も言葉を発さなかった。


「……ゼット?」


 ネネが小さく言う。


「名は出るな」


「でも」


「想定内だ」


「守らないの?」


「守るかどうかは、彼次第だ」


「冷たい」


「違う」


「何が違うの」


「選ばせている」


 ブリューゲルが静かに言った。


「外部可動の価値を、試している」


「ああ」


「彼が折れれば?」


「陣形は失敗だ」


「折れなければ?」


「機能する」


 チーズが息を呑む。


「そんな……」


「賭けじゃない」


「選択だ」


 通信が切れ、別の信号が走る。


「侵入未遂!」


「抑えられる?」


「ギリ!」


「行ける」


「行け」


 短い指示。


「……止めた」


 ネネが言った。


「中央は?」


「無傷」


「記録は?」


「全部取れた」


「よし」


 ブリューゲルが目を細める。


「試験結果は?」


「合格、とは言えない」


「だが」


「可能性は示した」


 アマンは端末を伏せた。


「……ゼットは?」


 誰かが聞いた。


「沈黙している」


「それは」


「正常だ」


「え?」


「彼は“外”にいる」


「中央に報告しない自由がある」


「……なるほど」


「だが」


 アマンは一瞬だけ言葉を切った。


「このままでは、次は来る」


「もっと直接的に?」


「ああ」


「ゼットに?」


「彼が選ばれる」


 ネネが笑わずに言う。


「大変だね」


「本人が一番分かっている」


「切らないんだ」


「切らない」


「理由は?」


「彼がまだ、判断していない」


 沈黙。


「以上だ」


 アマンは立ち上がった。


「陣形は、生きている」


「だから」


「次は、再接続の時期だ」


 誰も反論しなかった。


 外部可動は、まだ呼ばれない。

 だが次に動くとき――

 それは、偶然ではなくなる。









第10・5章

「陣形は試される」


「――で、中央は黙ったままか」


ブリューゲルは卓上の表示板を指で弾いた。淡い光が揺れ、数値が一瞬だけ更新される。


「黙ってる、というより……様子見ですね」

ネネが即座に答える。

「通信は遮断されていません。ただ、こちらからの再照会には応答がない」


「ふん。反応がないってのは、反応してるのと同じだ」

ブリューゲルは口角を上げた。

「動いたな、中央は」


チーズが椅子にもたれ、腕を組む。

「試しに来る、ってこと?」


「そうだ」

ブリューゲルは視線を上げ、奥の席を見る。

「アマン、来るぞ。測定だ」


アマンは答えない。

卓の上に両手を置き、表示板の変化だけを見ていた。


「……第三管区、接触準備」

ネネの声が少しだけ低くなる。

「公式ルートです。監査名目」


「早いな」

チーズが息を吐く。

「陣形組み替えて、まだ半日だろ」


「半日あれば十分だ」

ブリューゲルが言う。

「“外部可動”がどこまで自由か、確かめたいんだ」


その言葉に、室内の空気が一段重くなった。


「ゼットは?」

チーズが聞く。


「まだ動かさない」

アマンが初めて口を開いた。

「予定通りだ」


「予定通り、ね」

ブリューゲルは肩をすくめた。

「中央は予定を崩しに来てるぞ」


「だからだ」

アマンは淡々と言う。

「こちらが崩れないか、見ている」


ネネが画面を切り替える。

「第三管区、条件提示です。“外部可動の権限範囲”について確認したい、と」


「確認?」

チーズが眉をひそめる。

「それ、干渉だろ」


「言葉は丁寧だ」

ブリューゲルが笑う。

「中身は踏み込み」


沈黙。

アマンは数秒、何も言わなかった。


「回答は?」

ネネが促す。


「――出す」

アマンは短く言った。

「だが、範囲は示さない」


「示さない?」

チーズが思わず身を乗り出す。

「それ、逆に怪しまれない?」


「怪しませる」

アマンは言う。

「測定に対して、測定で返す」


ブリューゲルが低く唸った。

「いいな。曖昧さは武器だ」


通信が開かれる。

公式的で、整えられた声が流れた。


『こちら第三管区。外部可動の現在位置および行動許可範囲について――』


「回答する」

アマンが割り込む。

「外部可動は、陣形外にある。だが切り離されてはいない」


『……具体性に欠けます』


「それで十分だ」

アマンは言う。

「貴管区が知りたいのは、位置ではない。“従属”だろう」


一瞬、向こうが詰まる。


『従属という表現は――』


「否定もしない」

アマンは遮った。

「肯定もしない」


ブリューゲルが小さく吹き出した。

「出たな、いつもの」


『……確認を続行します』


「どうぞ」

アマンは淡々と返す。

「ただし、こちらからの追加情報はない」


通信が切れた。


室内に、短い静寂。


「来たね」

チーズが言う。

「完全に“測られた”」


「いや」

ブリューゲルは首を振る。

「測り返した。中央は今、自分たちの手応えを疑ってる」


ネネが小さく息を吸う。

「外部可動の存在、圧になってます」


アマンは表示板を閉じた。


「これでいい」

静かな声だった。

「結果はまだいらない。陣形が、耐えるかどうかを見る」


その視線は、誰でもなく、中央でもなく――

まだ姿を見せていない“外部”を向いていた。





第11章

「接続要求に対する回答」


「――外部可動、応答せよ」


低く、整えられた音声だった。

感情の起伏を排した、中央特有の声。


ゼットは立ち止まらない。

歩調も変えず、視線も上げない。


「通信を受信していることは確認できている」

声は続く。

「こちらは中央統制局。直接接続を要請する」


ゼットは一度だけ息を吐いた。


「“要請”ね」

独り言のように呟く。

「命令じゃないあたり、慎重になってる」


再度、音声。


「外部可動は現在、曖昧な位置にある」

「中央は状況の整理を望んでいる」


ゼットは足を止めた。

背後には誰もいない。

前方にも、誰もいない。


「整理、か」

ゼットは言う。

「それは便利な言葉だ」


沈黙が一拍。


「接続すれば、説明は容易になる」

中央の声が淡々と続く。

「対話の場を設けたい」


ゼットは、少しだけ首を傾けた。


「対話?」

「それは“同じ机につく”って意味?」


「そうだ」

即答だった。


「ふうん……」

ゼットは小さく笑った。

「それ、中央にとって都合がいいだけじゃない?」


一瞬の間。


「外部可動は中央の枠外にある」

「だが、完全に独立しているわけではない」


「知ってる」

ゼットは遮る。

「だから今、あんたたちは困ってる」


声は否定しない。


「接続すれば、立場は明確になる」

中央が言う。

「不確定要素は減る」


ゼットは静かに目を閉じた。


「ねえ」

低い声。

「不確定って、そんなに怖い?」


「統制には必要だ」


「そう」

ゼットは目を開ける。

「でも、私には必要ない」


通信がわずかにノイズを含む。


「接続を拒否するという判断か」


「そうなるね」

ゼットは即答した。

「私は、外部でいる」


「理由を聞かせてほしい」


「いいよ」

ゼットは立ち止まり、天井を見上げた。

「接続した瞬間、私は“説明可能な存在”になる」


「それが問題か」


「問題」

ゼットはきっぱり言う。

「説明された瞬間、私は“使いやすく”なる」


沈黙。


「アマンは?」

中央が唐突に聞いた。

「彼の判断か」


ゼットは、ほんの一瞬だけ考えた。


「いいえ」

答えは短い。

「これは私の判断」


「彼は否定も肯定もしないはずだ」


「知ってる」

ゼットは笑う。

「だからこそ、私が決める」


通信が静かになる。


「接続を断れば、保護は保証されない」


「最初から期待してない」


「外部可動としての裁量も――」


「それもいい」

ゼットは遮った。

「裁量が減るなら、減った状態で動くだけ」


再び、間。


「最終確認」

中央の声が言う。

「接続要求を拒否するか」


ゼットは、はっきりと言った。


「拒否する」


その瞬間、通信が切れた。


世界は何も変わらない。

音も、光も、配置も。


それでも、何かが確実に“越えられた”。


ゼットは歩き出す。


「……さて」

小さく呟く。

「これで、揺れるのは向こうだ」


中央ではない。

アマンでもない。


“判断を保留する”という立場そのものが、

初めて試される。


ゼットは振り返らなかった。







第12章

「想定外は報告書に載らない」


「――拒否、だと?」


中央統制局、第三室。

報告を受けた瞬間、室内の空気がわずかに歪んだ。


「はい」

担当官が淡々と答える。

「外部可動ゼットは、直接接続要求を拒否しました」


「理由は」


「『説明可能な存在になることを拒む』とのことです」


一瞬の沈黙。


「……意味が曖昧だな」

上席監査官が言った。

「翻訳しろ」


「中央語に直すなら」

別の声が補足する。

「“管理対象になる意思がない”」


「それは拒否理由にならない」

監査官は即座に切り捨てた。

「外部可動は、あくまで構造上の例外だ。独立した主体ではない」


「しかし」

若い分析官が口を挟む。

「例外であるからこそ、接続を要請したのでは?」


視線が集まる。


「続けろ」


「はい」

分析官は端末を操作する。

「通常、外部可動は中央との接続を“利益”と認識します。保護、裁量、情報――」

「拒否は、過去事例にありません」


「ゼロか」


「正確には」

分析官は一瞬だけ言葉を選んだ。

「“拒否できると判断した例”が、ありません」


室内が静まる。


「判断主体が存在した、ということか」

誰かが呟いた。


「ありえない」

監査官が即座に否定する。

「判断は陣形内部で完結する。外部可動は――」


「可動です」

分析官が言った。

「可動である以上、判断点を持ち得ます」


「理屈の話をしているんじゃない」

監査官は苛立ちを隠さない。

「現行モデルでは、想定されていない」


「その“想定”が」

別の声が低く言う。

「崩れたのでは?」


一拍。


「アマンは?」

監査官が問いかける。


「中央からの照会に対し」

担当官が答える。

「“否定も肯定もしない”立場を維持しています」


「……やはり、彼か」


「ただし」

分析官が続ける。

「今回の拒否は、アマンの指示ではないと明言されています」


「切り離した、という主張か」


「はい」


監査官は椅子に深く座り直した。


「厄介だな」

低い声。

「指揮官が否定せず、可動体が独立判断を示す」


「中央としては」

別の官が言う。

「どちらに責任を置くべきでしょう」


「置けない」

監査官は即答した。

「それが問題だ」


沈黙。


「再接続は?」

誰かが聞く。


「現時点では推奨されません」

分析官が首を振る。

「再要請は“圧力”と解釈される可能性があります」


「外部可動が?」

監査官が眉をひそめる。


「はい」

分析官は真っ直ぐに言う。

「そう判断する主体が、確認されました」


「……想定外だな」


その言葉は、報告でも記録でもない。

ただの、漏れた本音だった。


「陣形は?」

監査官が切り替える。


「安定しています」

担当官が答える。

「むしろ、反応速度が向上している」


「外部可動が拒否したのに?」


「拒否した“から”かもしれません」


誰も否定しなかった。


「つまり」

監査官はゆっくり言う。

「中央が触れなかったことで、内部判断が強化された」


「可能性は高いです」


「……面白い」


その言葉に、数名が顔を上げる。


「これは失敗ではない」

監査官は続けた。

「だが、成功でもない」


「では?」


「観測だ」

監査官は静かに言う。

「外部可動が“外部で居続けた場合”、何が起きるか」


「アマンは?」


「彼は動かない」

監査官は断言した。

「否定も肯定もしない男だ。今は、最も危険で、最も安定している」


「では中央は」


「中央も動かない」

監査官は立ち上がった。

「想定外には、即応しない。時間をかけて、枠を作る」


端末が静かに更新される。


外部可動:接続拒否(継続)

評価:未確定


「……」

監査官は画面を見つめた。


「判断しない者と、判断した者」

小さく呟く。

「どちらが先に限界を迎えるか――」


答えは、まだ書類にならない。









第13章

「保留は重さを持つ」


報告は簡潔だった。


「――外部可動ゼット、中央からの直接接続を拒否」


ネネの声は、いつもより少しだけ慎重だった。


アマンは、すぐには反応しない。

卓の上の資料を一枚めくり、視線を落としたまま言った。


「理由は」


「本人判断です」

ネネが答える。

「指示の有無についても明確に否定しています」


「そうか」


それだけだった。


ブリューゲルが、椅子をきしませながら体重をかける。


「……で?」

わざと軽い調子だ。

「お前はどうする、アマン」


「どうもしない」

即答だった。


チーズが眉をひそめる。

「“どうもしない”で済む話?」


「済む」

アマンは言う。

「少なくとも、今は」


ネネが一瞬、言葉を選んだ。


「中央は、想定外として受け止めています」

「再要請は保留。観測段階に移行したとのことです」


「妥当だ」

アマンは頷く。

「中央は、急がない」


「でも」

チーズが食い下がる。

「ゼットは、もう一歩踏み込んだよ」


アマンの指が、わずかに止まった。


「踏み込んだ?」


「拒否した」

チーズは言う。

「保留じゃない。判断だ」


沈黙。


ブリューゲルが、低く笑った。

「来たな。これだよ」


「何がだ」

アマンは視線を上げない。


「お前の“保留”が、初めて他人の判断に置いてかれた瞬間」


室内が静まる。


「置いていかれてはいない」

アマンは静かに言った。

「ゼットは外部だ。判断していい」


「理屈はな」

ブリューゲルは肩をすくめる。

「感覚は?」


アマンは答えない。


ネネがそっと口を開く。

「……アマン。中央から、非公式な問い合わせが来ています」


「内容は」


「“外部可動の行動に、あなたは責任を負うのか”」


アマンは、ほんの少しだけ目を細めた。


「答えは変わらない」

「否定も肯定もしない」


「それを」

ブリューゲルが言う。

「いつまで続ける?」


アマンは、ゆっくりと椅子にもたれた。


「続けられる限り」


「続けられなくなったら?」


「その時に考える」


チーズがため息をつく。

「それ、逃げじゃない?」


「違う」

アマンは即座に否定した。

「責任の置き所を、固定しないだけだ」


「でもさ」

チーズは言う。

「ゼットは、自分で置いたよ。責任」


その言葉は、静かだったが重かった。


アマンは、しばらく黙っていた。


「……ゼットは」

ゆっくりと言う。

「中央と対等に話すこともできた」


「うん」


「それでも断った」


「うん」


「それは」

アマンは言葉を探すように、間を置いた。

「外部でいる覚悟だ」


ブリューゲルが頷く。

「覚悟ってやつはな、判断だ」


「そして」

ブリューゲルは続ける。

「判断は、周囲を動かす」


ネネが静かに言う。

「中央が、あなたを見る目が変わりました」


「どう変わった」


「“動かない指揮官”から」

「“動かないことで影響を与える存在”へ」


アマンは小さく息を吐いた。


「……重くなったな」


その言葉は、誰に向けたものでもなかった。


「今まで」

アマンは続ける。

「保留は、軽かった。余白だった」


「今は?」


「重りだ」

アマンは言った。

「誰かの判断を、上に載せる」


沈黙。


「それでも」

アマンは顔を上げる。

「私は、まだ動かない」


「理由は?」

ブリューゲルが問う。


「ゼットが動いたからだ」


全員が、アマンを見る。


「外部が判断した」

アマンは言う。

「今、私が判断すれば――それを回収することになる」


「回収?」


「奪う」

アマンははっきり言った。

「彼女の覚悟を」


チーズが、静かに頷いた。

「……なるほど」


「だから」

アマンは言う。

「重くても、保留する」


ネネが小さく微笑んだ。

「それが、あなたの判断ですね」


「違う」

アマンは首を振る。

「判断しない、という判断だ」


誰も笑わなかった。


その夜、アマンは一人で記録を見返した。

ゼットの拒否。

中央の観測。

そして、自分の“保留”。


「……まだだ」


呟きは、誰にも届かない。


だが確かに、

保留はもう、軽くはなかった。







第14章

「第三者は、保留を許さない」


警告は、正式な回線では届かなかった。


「アマン」


低い声だった。

ブリューゲルが、珍しく名を呼び捨てにする。


「来たぞ」


「誰が」


「――評議外監査局」


その言葉に、ネネが息を呑んだ。


「……まさか」


「中央を通さず、直接だ」

ブリューゲルは端末を操作する。

「正式名称は“構造安定化委員会”。通称、壊し屋」


チーズが顔をしかめる。

「保留を嫌う連中だ」


「嫌う?」

アマンが問う。


「違うな」

ブリューゲルは言った。

「存在として認めない」


端末が点灯する。

映し出されたのは、白い背景に座る一人の男だった。


「――初めまして、現中央統括補佐官アマン」


丁寧な声。

だが、温度がない。


「私はレオン」

男は続ける。

「監査局の臨時執行官です」


「要件を」

アマンは即座に返す。


「単刀直入に」

レオンは微笑む。

「あなたの“保留”は、構造的欠陥です」


室内の空気が張りつめた。


「欠陥、とは」

アマンは声色を変えない。


「判断を回避し続けることで」

レオンは言う。

「外部可動に自律判断を許し、中央の責任線を曖昧にした」


「それは設計通りだ」

ネネが反論する。

「外部可動は――」


「承知しています」

レオンは遮る。

「だから問題なのです」


チーズが噛みつく。

「何が問題?」


「“どちらにも属さない判断”は」

レオンは淡々と言う。

「危機時に、必ず遅延を生む」


「今回のゼットの拒否は?」

ブリューゲルが問う。


「好例です」

レオンは頷く。

「中央は動けず、外部は独走した」


「独走していない」

アマンが言う。

「彼女は外部として、正当な判断を――」


「正当かどうかを決めるのは誰です?」

レオンが問い返す。


沈黙。


「あなたですか?」

「それとも、誰でもない?」


その言葉は、鋭かった。


「我々は」

レオンは続ける。

「構造の安定を保つために来ました」


「具体的には?」

アマンが聞く。


「三択です」


レオンは指を立てる。


「一。外部可動ゼットを中央管轄下に戻す」

「二。外部可動制度そのものを凍結」

「三。――あなたの保留を、終了させる」


チーズが立ち上がる。

「待てよ、それは――」


「どれも」

レオンは言った。

「“構造として正しい”」


ブリューゲルが笑う。

「便利な言葉だな」


「便利でなければ」

レオンは平然と返す。

「秩序は保てません」


アマンは、ゆっくりと息を吸った。


「つまり」

アマンは言う。

「私に、判断を強制する」


「ええ」

レオンは頷く。

「保留は、選択ではない」


「それはあなたの定義だ」

アマンは言った。


「構造の定義です」


ネネが小さく言う。

「アマン……これは……」


「分かっている」

アマンは答えた。


レオンが続ける。

「期限は二十四時間」

「それまでに、あなたの立場を明確にしてください」


「明確に、とは」


「否定か、肯定か」

レオンは微笑む。

「あるいは――失格」


「失格?」


「中央判断機構からの排除です」


沈黙が落ちる。


「脅しか」

ブリューゲルが低く言う。


「事実です」

レオンは淡々と返す。

「構造は、人を待ちません」


映像が暗転する。


通信が切れた。


誰も、すぐには口を開かなかった。


「……来たな」

ブリューゲルが言う。

「本気で壊しに」


チーズが拳を握る。

「最低だ」


ネネがアマンを見る。

「どうしますか」


アマンは、すぐには答えなかった。


「彼らは正しい」

アマンは言った。

「構造としては」


「でも」

チーズが言う。

「それじゃ――」


「分かっている」

アマンは目を伏せる。

「保留は、許されなくなった」


ブリューゲルが静かに言う。

「壊される前に、選ぶか?」


アマンは、ゆっくりと首を振った。


「いいや」


「まだか」

ブリューゲルは笑う。


「まだだ」

アマンは言った。

「壊されるなら――」


顔を上げる。


「壊し方は、私が決める」


その瞬間、

保留は、初めて「防御」ではなくなった。


それは――

対抗姿勢だった。







第15章

「相談という行為」


夜だった。


中央棟の最上階。

照明は最低限、窓の外には都市の輪郭だけが浮かんでいる。


アマンは、端末を閉じたまま椅子に座っていた。


「……来てるんだろ」


しばらくして、静かな足音。


「呼ばれた気がした」

ブリューゲルが、壁にもたれて腕を組む。

「珍しいな。お前からは」


「呼んだ」

アマンは認めた。

「正式じゃない」


「それがもう異常だ」

ブリューゲルは笑う。

「で?」


アマンは、少し間を置いた。


「――分からなくなった」


ブリューゲルが、目を細める。

「今のは?」


「相談だ」

アマンは言った。

「初めてだ」


沈黙。


「壊し屋の件か」

ブリューゲルが言う。


「それもある」

アマンは頷く。

「だが、本質はそこじゃない」


「ゼットか」


アマンは否定しなかった。


「彼女は判断した」

アマンは言う。

「外部として、拒否した」


「立派だろ」

ブリューゲルは言う。


「立派だ」

アマンも認める。

「だから――困っている」


「何がだ」


「私の保留が」

アマンは続ける。

「彼女の判断を、踏み台にしている気がする」


ブリューゲルは黙って聞いている。


「私は動かないことで、彼女の自由を守った」

「だが同時に、責任も押し付けた」


「押し付けた、か」

ブリューゲルは呟く。


「彼女が選んだと言えば聞こえはいい」

アマンは言う。

「だが、選ばせたとも言える」


「……珍しく自分に厳しいな」


「構造の話だ」

アマンは首を振る。

「感情じゃない」


「嘘つけ」

ブリューゲルは即座に返す。

「お前、感情を構造の言葉で包むのが上手いだけだ」


アマンは、言い返さなかった。


「なあ」

ブリューゲルは声を落とす。

「お前、誰に聞きたいんだ」


「……判断の仕方を?」


「違う」

ブリューゲルは言う。

「背負い方だ」


アマンの視線が、わずかに揺れた。


「私は」

アマンは言った。

「奪わないことを選んできた」


「知ってる」


「だが」

アマンは続ける。

「奪わないという選択が、誰かを孤独にするなら」


「それは?」

ブリューゲルが促す。


「正しいのか」


沈黙。


「正しくない」

ブリューゲルは即答した。

「でも、間違いでもない」


「……それが分からない」


「分かる必要はない」

ブリューゲルは言う。

「選ぶだけだ」


「私は」

アマンは静かに言う。

「選ばないことを、選んできた」


「それも選択だ」

ブリューゲルは言った。

「でもな」


「でも?」


「相談した時点で」

ブリューゲルはアマンを見る。

「もう一人で背負う気はなくなってる」


アマンは、目を伏せた。


「私は」

「中央のために判断しない」


「知ってる」


「外部のためにも判断しない」


「それもな」


「それでも」

アマンは言う。

「誰かが、結果を引き受ける」


「ゼットか」


「あるいは」

アマンは小さく言う。

「私だ」


ブリューゲルは、ゆっくりと息を吐いた。


「聞きたいか?」

ブリューゲルは言う。

「俺の答え」


「……ああ」


「じゃあ言う」

ブリューゲルははっきり言った。

「お前は、もう保留じゃない」


アマンが顔を上げる。


「何だと」


「重さを自覚した時点で」

ブリューゲルは言う。

「それは判断だ」


「私は」

アマンは言う。

「まだ動いていない」


「動くかどうかは関係ない」

ブリューゲルは続ける。

「“どう壊れるかを選ぶ”って言ったな」


「……言った」


「それが答えだ」


アマンは、しばらく黙っていた。


「相談してよかったか?」

ブリューゲルが軽く聞く。


「……ああ」

アマンは小さく頷く。

「判断は、できていない」


「それでいい」


「だが」

アマンは言う。

「一人で背負う気は、なくなった」


ブリューゲルは笑った。

「それが一番厄介で、一番マシだ」


二人の間に、静かな時間が流れる。


「次は?」

ブリューゲルが聞く。


アマンは、窓の外を見る。


「次は」

「ゼットと話す」


「直接?」


「ああ」

アマンは言った。

「奪わないために」


夜は、まだ深かった。


だが、

アマンの“保留”は――

確実に、形を変え始めていた。





第16章

「対話は、命令ではない」


回線は、中央経由ではなかった。


「……映像、安定」


ネネの声が、わずかに緊張を帯びる。


「外部可動ゼット、非公式チャンネルで接続完了」


アマンは頷いた。

「ありがとう。ここからは一人でいい」


「ですが――」


「問題が起きたら、すぐ切る」

アマンは言う。

「それも含めて、私の責任だ」


静かに、部屋が暗転する。


映像が立ち上がった。


画面の向こうに、ゼットがいた。

簡素な作業区画。背景には中央のロゴも、所属表示もない。


「……久しぶりですね」

ゼットが言った。

「“直接”は、初めてですけど」


「そうだな」

アマンは答える。

「応じてくれて感謝する」


「感謝されるようなことはしてません」

ゼットは肩をすくめる。

「判断しただけです」


「だからだ」

アマンは言った。

「判断したあなたと、話したかった」


一瞬、ゼットの表情が硬くなる。


「中央からですか?」

「それとも――あなた個人?」


「個人だ」

アマンは即答した。

「命令でも、要請でもない」


「……信じていいんですか」


「疑ってもいい」

アマンは言う。

「今日は、説得しに来たわけじゃない」


ゼットは、少しだけ間を置いた。


「じゃあ」

「何しに来たんです」


「相談だ」

アマンは言った。


ゼットが目を見開く。


「……は?」


「驚くのは分かる」

アマンは苦笑した。

「私も、初めてだからな」


「あなたが?」

ゼットは信じられないという顔だ。

「“否定も肯定もしない人”が?」


「その通りだ」

アマンは頷く。

「だから、限界が来た」


ゼットは腕を組む。

「……壊し屋の話、聞きました」


「早いな」


「外部ですから」

ゼットは淡々と言う。

「風向きには敏感です」


「彼らは」

アマンは言った。

「私に判断を強制している」


「でしょうね」

ゼットは言う。

「保留は、嫌われますから」


「あなたは」

アマンは続ける。

「それを見越して、拒否したのか?」


ゼットは少し考えてから答えた。


「半分は」

「半分は……自分の問題です」


「聞かせてくれるか」


「命令じゃないなら」

ゼットは言う。

「話します」


一呼吸。


「私は」

ゼットは静かに言った。

「中央と対等に話す準備が、できてませんでした」


「……意外だな」


「そうですか?」

ゼットは苦笑する。

「あなたが思ってるほど、私は強くない」


「それでも」

アマンは言う。

「拒否した」


「はい」

ゼットは頷く。

「外部でいる覚悟の方が、先に固まった」


「その結果」

アマンは言葉を選ぶ。

「あなたを、孤独にしたかもしれない」


ゼットの視線が、揺れた。


「……それを言われると」

「ちょっと、ずるいですね」


「すまない」


「いえ」

ゼットは首を振る。

「でも、孤独にしたのは、あなたじゃない」


「?」


「私自身です」

ゼットは言った。

「選んだのは、私」


沈黙。


「だから」

ゼットは続ける。

「あなたが判断しなかったことを、恨んでません」


アマンは、ゆっくりと息を吐いた。


「だが」

アマンは言う。

「私は、あなたの判断に乗っている」


「……それは」


「奪わないと言いながら」

アマンは続ける。

「結果として、あなたに重さを預けた」


ゼットは、しばらく黙っていた。


「……アマン」

ゼットは初めて、名前を呼び捨てにした。

「それを自覚してるなら」


「うん」


「もう、保留じゃないですよ」


アマンは、わずかに目を細める。


「ブリューゲルにも、同じことを言われた」


「賢い人ですね」


「そうだな」


ゼットは、少しだけ身を乗り出す。


「聞きます」

ゼットは言う。

「あなたは、これからどうするつもりですか」


「まだ決めていない」

アマンは正直に言った。

「だが、一つだけ決めた」


「何を」


「あなたの判断を、回収しない」

アマンははっきり言う。

「中央に戻せとも、対等に来いとも、言わない」


ゼットの目が、わずかに潤む。


「……それ、嬉しいです」


「だが」

アマンは続ける。

「守るために、動くことはある」


「中央と?」


「ああ」

アマンは頷く。

「彼らが“外部”を消そうとするなら」


ゼットは、静かに笑った。


「……やっぱり」

「あなたは、動かない人じゃない」


「動き方が、遅いだけだ」


「重い一歩ですね」


「そうだ」


しばらく、二人は黙っていた。


「アマン」

ゼットが言う。

「次に接続を要求する時は」


「うん」


「対等に、話します」

「それが、私の覚悟です」


アマンは、ゆっくりと頷いた。


「その時まで」

「私は、壊し方を選ぶ」


通信が、静かに切れる。


アマンは、しばらくその場に立ち尽くしていた。


「……これでいい」


それは、判断ではなかった。


だが確かに――

対話は、成立していた。







### 第17章:第三者が、強制執行に踏み切る


 その日は、あまりにも静かに始まった。


 朝の光が差し込む執務室で、アマンは机に置かれた書類を見つめていた。署名はまだない。だが、空白の行は、これ以上放置できない重さを帯びていた。


「……来るな」


 独り言のように呟いた瞬間、扉がノックされた。


「失礼します」


 低く、事務的な声。第三者――執行官リュカだった。


「予定より早いな」

「ええ。ですが“保留”が限界を超えました」


 リュカは淡々と告げる。その目には感情がない。あるのは、手続きと期限だけだ。


「まだ終わっていない」

「終わっていないからです」


 リュカは一歩踏み出した。


「これ以上の猶予は、規定違反になります。あなたが決めない以上、第三者が決める。それだけのことです」


 アマンは椅子にもたれ、深く息を吐いた。


「……ゼットは?」


 その名を出した瞬間、空気がわずかに揺れた。


「既に呼んでいます」


 扉が再び開き、ゼットが姿を現した。


「話は聞いた」


 短い言葉。だが、声は硬い。


「アマン。これはもう、俺たちの問題じゃない」


 アマンは視線を上げない。


「わかっている。だが――」

「だが、何だ?」


 ゼットが詰め寄る。


「お前はずっと“保留”を理由に、何も選ばなかった。選ばないことで、守っているつもりだったんだろう?」


 沈黙。


「……守れていたか?」


 アマンの声は、かすれていた。


 リュカが二人の間に割って入る。


「感情の整理は後にしてください。これより、強制執行に入ります」


 机に書類が置かれる。


「ここに署名がなければ、自動的に規定Bが適用されます」


 アマンは初めて、はっきりと顔を上げた。


「それは、最悪の選択だ」


 ゼットが低く言う。


「だからだ。お前が選べ」


 指先が震える。


「俺は……誰かを切る決断が、できない」


 ゼットは一瞬、目を閉じた。


「違う。お前は、切られる側に立つのが怖いだけだ」


 その言葉が、深く刺さった。


 リュカがカウントを始める。


「残り三十秒」


「待て!」


 アマンは立ち上がった。


「俺が署名する」


 ゼットが息を呑む。


「条件がある」


 リュカは眉一つ動かさない。


「聞きましょう」


「俺が選ぶ。その結果がどうなっても、責任は俺が負う。第三者の判断は、介入させない」


 沈黙ののち、リュカはゆっくり頷いた。


「受理します」


 ペンが走る音が、やけに大きく響いた。


 署名が終わる。


 その瞬間、何かが確かに終わった。


「……これでいい」


 アマンは呟いた。


 ゼットは何も言わず、ただ一度だけ、強く頷いた。


 リュカは書類を回収し、踵を返す。


「強制執行は中止。以後は、あなたの選択が履行されます」


 扉が閉まる。


 静寂が戻った。


「終わったな」


 ゼットが言う。


「いや」


 アマンは首を振った。


「やっと、始まった」


 保留は壊れた。


 それは救いではない。

 だが、逃げ場でもなかった。


 ――選んだ者だけが、前に進む。


 そういう世界が、ここから始まる。






















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