7話「払うべきものは払ってもらう」
話し合いをするという名目でやって来たにもかかわらず怒りに身を任せて手を出そうとしたダットはさらなる罪を重ねることとなった。
彼はあれこれ言ってごまかそうとしていたけれど、我が父の前ではそんな小細工は無駄なものであった。
「娘に手を出そうとする男を許すことはできない」
父はそう言ってダットを別室へ連れて行った。
ふぅ……
かなり疲れた……。
まさかあそこまで会話が成立しないとは思っていなかった。きちんと話せばもう少し分かってもらえるものかと想像していたのだけれど、良い方向に考え過ぎていた。私が想像しているよりずっと彼は愚かだった。そして同時に自己中心的でもあった。
あんな人と結婚しそうになっていたのだと思うと少々ショックである。
ただ、本来彼はもう無関係な人なので、彼についてあれこれ考える必要はないだろう。
彼との縁は終わった縁。
今の私には何の関係もない。
あの後ダットは我が父に反抗心を抱き暴れたようで逮捕された。
部屋の物品を壊したこと。
家の主の指示に従わず攻撃的な行動に至ったこと。
それらは完全な罪であった。
ダットはこれまでも罪に罪を重ねてきた。そしてここでさらに罪を重ねた。罪というものは、重ねれば重ねるほどに重くなるものだ。罪というのは、反省しなければしないほどに、より一層悪となるもの。彼は平然と深い悪への道へ進んでいっていた。
だがもはやダットに人権はない。
なぜなら完全に犯罪者となっているからである。
牢屋に入れられた人間に人としての権利などない。
他国ではどうかは分からないが。
少なくともこの国においては一般的にそういうものなのである。
その後、慰謝料は支払ってもらえた。
身勝手に婚約破棄した分の慰謝料と家に押し掛け暴れ迷惑をかけた分の慰謝料を重ねて払ってくれたのは、ダットではなく、ダットの両親であった。
後はアレンティーナから慰謝料を支払ってもらうだけだ。
だがそれは私がすべきことではない。……いや、本来は、私がすべきなのかもしれないが。ただ、今回に関しては父が動いてくれることとなっているので、私はその様子を見守っておくだけ。それ以上もそれ以下もない。ややこしいことは父に任せて、私は私で前を向いて歩んでいく。
「何度も何度もすみません」
「殿下!?」
「ああ、驚かせてしまい……申し訳ないです」
「い、いえ。平気です。こちらこそいきなり大声を出してしまい申し訳ありませんでした」
ある朝私の前に現れたのは王子ラムティクであった。
「できればまた少しお話がしたいなと思っておりまして」
「私と……ですか」
「はい」
「面白いお話はありません」
「そう気を遣わないでください。気楽に、でいいんです。のんびりと同じ時間を過ごせればと思っているだけですので」
……の、のんびり?
意味が分からない。
何を言われているのか。
私たちはそういう関係ではないはずなのだが……。




