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幼馴染みで婚約者だった彼に切り捨てられてしまいましたが、自分にできることをしながら生きていたところ意外な良縁に恵まれました。  作者: 四季


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19話「分かると楽しい」

「これって……もしかして、さっき教えてくださっていた、新しい花のもとになるものじゃないのですか!?」

「ああ、はい、確かにそうですね」

「わあ……! 形が可愛い……!」

「実物を見られるなんてラッキーですね」

「本当に、そうですよね! あの方も珍しいものだと仰っていましたし! こんな形で出会えるなんて嬉しいです」


 知識を持って庭園を眺めるとそれまでとはまた違った気づきを得ることができた。

 人間というのは知らないものへはそれほど目が向かないもの。それゆえ貴重なものだとしても見逃してしまいがちなのだ。

 けれどもいざ知ってから見れば、どんなに小さなものだとしても、案外その存在に気づくことができるもので。ゼロかイチか、ではないけれど。ほんの少し知識を得ただけでも見ている世界は大きく変化するものである。


「分かると楽しいですね!」

「とても楽しそうですね、マリエさん」

「あ。……す、すみません、はしゃぎ過ぎてしまって。迷惑、ですよね」

「いえ。楽しそうだなと思っただけです。迷惑だなんて、そんなこと、あるわけがないですよ」


 ラムティクはその面に柔らかな笑みを滲ませて。


「純粋な感想を口にしただけです」


 そう続けた。


「そうでしたか」

「マリエさんは知識欲が豊富な方なのですね」

「ええと……私としては特にそうは思いませんし、そこまで頭も良くないです。でも、楽しいと感じることは楽しいです」

「ある意味シンプルな思考、ということですね」

「そうかもしれません」


 ラムティクは心の綺麗な人だ。それゆえ発する言葉に嫌みがない。どのような内容を口にする時でも、そこには確かに温かさと優しさが宿っている。だからこそどんな時でも棘や毒を感じることなく交流することができる。


 温かい、優しい、そんな空気を作る才能があるラムティクとなら、何があっても楽しく過ごせる気がする。


「この後はどうしましょうか」

「私などただの女だというのに、こんなに時間をかけていただいて問題ないのでしょうか? ……少し申し訳なく感じられてきました」

「ただの女、なんて、己を下げる必要はありません」

「……すみません、不快ですよね」

「悪く言うつもりはありません。ただ伝えたいのです。自信を持っていてください、凛としていてください、マリエさんの行いは常に偉大なのですから」


 心地よい風を感じながら、庭園の散歩は終わった。


 こうしてラムティクと二人で過ごす時間は柔らかく温かい。

 ずっとこのままでいたいと思うほどに。


 未来のことは分からないけれど。


 それでも今は、この愛おしい今を大切に想っていたい。

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