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幼馴染みで婚約者だった彼に切り捨てられてしまいましたが、自分にできることをしながら生きていたところ意外な良縁に恵まれました。  作者: 四季


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1話「涙が出そうだった」

「マリエ、君との婚約は破棄とすることとした!!」


 目の前で女連れの婚約者が叫ぶ。


「僕の可愛いアレンティーナを虐めていた女なんざとは二度と関わりたくない! 悪女よ、立ち去れ! 今すぐ消えろ!」


 それは二人の関係が一気に崩れ去る瞬間であった。


 ああ、なんて悲しいこと……。


 どんなものだってそうだ。

 崩壊はいつも突然やって来る。



 ◆



 私マリエ・フローレニシアとその婚約者である彼ダット・ティオドールは幼馴染みだった。


 互いにそこそこ良い家柄の出ではある。そんな私たちが出会ったのはまだ十歳にもなっていなかった時。まだ物心つく前と言っても過言ではないような頃の出会い。親に連れられて参加したとあるパーティーにて知り合った。


 以降、定期的に一緒に遊ぶようになった。


 二人で過ごす時間は楽しかった。

 純粋な心で仲良しだった。

 一応異性ではあるのだけれど、そこに性別の壁なんてなかったし、それ以上の絆が私たちには確かにあったのだ。


 そんな私たちはある程度の年齢になると婚約することとなった。


 最初その話が出た時は驚いたけれど、彼となら支え合ってきっと上手くやっていけると思えたので受け入れた。私が頷いた時、向こうの両親も喜んでくれて。また当人である彼も前向きな言葉を発してくれていて。だからこれですべてが上手くいくと思った。そんな気があって始まった関係ではないとしても、確かな絆は存在しているのだから、共に生きてゆくとなれば協力し合い進んでゆけるはず。その時の私は何の迷いもなくそう信じていた。


 ――だがその後すべてが壊れてしまうこととなる。


 ダットが仕事で知り合った女性アレンティーナと急激に親しくなったのだ。


 その頃からダットは平気で私を放置するようになり。

 そうなるともう二人の関係は悪化するしかなくて。


 結果あっという間に私たちの関係は崩れていってしまったのだった。


 私は何とかしようど努力してきたつもりだ。話し合いの機会を求めたこともある。けれど彼はまったくもって応じてくれなかった。都合が悪くなると無視、なんていうのは平常運転で。何なら初めから流されてしまうことも多いくらいで。酷い時には、声をかけても一切無視、聞こえないふり、なんていうこともあったくらいであった。


 ただ、それでもダットは一応婚約を破棄しようとはしてこなかったのだが、それすらもやがて変化していく――というのもアレンティーナが私の悪口を言うようになったのだ。


 睨まれた。当たられた。虐められている。


 ――なんて、もちろん嘘なのだけれど。


 ダットの婚約者である私の存在を鬱陶しく思っていたアレンティーナは平気で嘘をつき私を悪女に仕立て上げていった。



 ◆



「……はぁ」


 婚約破棄を告げられた時、私ははっきりと「彼女を虐めてなどいない」と主張した。


 けれどもダットには届かなかった。

 その時の彼には私の声なんて届くはずがなかったのだ。


 で、結局話はそのまま進んでしまい、婚約は破棄に。


「これからどうしようかしら」


 両親は何がどうなったのかを理解してくれている。私がおおよその流れについて説明したからだ。不幸の中にも幸運があったと思うのは、親が味方でいてくれたこと。もし仮に両親すらも私を悪女であると信じ込んでしまっていたとしたら、きっと今、私はもうまともではいられなかっただろう。


 ダットとの関係は終わってしまった。

 もうどうにもできやしない。

 ならばもう彼のことは諦めて異なる道へと進むしかないのだろう。


 とはいえどうすればよいものか……。


 いきなり家から放り出された子どものような状態になってしまっている。


 自室であれこれ考え込んで、溜め息をついていたら、突如近所の子どもがやって来た。


「お姉ちゃん、あそぼ!」


 近所の子どもというのは、我が家の近くに住む子どもたちのことである。私は時折その子たちの相手をしている。男の子も女の子もいるのだが、皆純粋で一緒にいると楽しいので、たまに遊んでいるのだ。


 そんなこともあって、子どもたちの親からはよく感謝されている。


「ええ」

「あれ? お姉ちゃん? 何か、元気ない?」


 男の子は首を傾げる。


「ちょっとね」

「も、もしかして、風邪!?」

「いいえ」

「じゃあ遊べそうかな……でも体調悪かったら無理しないほうがいい気もするし……」


 こんな子どもに心配されていては駄目だな、と思った。


「行けるわよ、遊びましょう」


 私には居場所がある。

 今はそれを強く感じる。


 ダットはいなくても、結婚は遠ざかっても、それでも今日を生きてゆくのだから――。


「ほんと!? やったぁ! お姉ちゃんと遊べるなんて嬉しいな! みんなも喜ぶよ!」

「何して遊ぶ予定なの?」

「うーん、まだ決めてないっ」


 男の子はこんな日でも明るい。

 その姿を目にするとこちらまで明るい気持ちになれた。


「何人くらい集まっている?」

「えーとね、今のところ……いち、に、さん……五人くらいかな」

「なら色々できそうね」

「運動系がいいな! 楽しいし! 勉強より得意だし!」

「そうなるといいわね。皆で話し合って決めましょう」

「はーい!」


 こんなにも子どもの純粋さに支えられたことがあっただろうか。


「お姉ちゃん連れてきたー!」


 今は彼らに救われている。


「「「「わーい! わっしょーい!」」」」


 澄んだ瞳の彼らと過ごしていると、その時だけは、どんなに嫌なこともすべて忘れられるような気がする。


「会いたかったよ~、お姉さん~。大好き~」

「遊んで遊んで」

「今日はぁ、何して遊ぶぅ? お姉たまだいちゅきだからぁ、あたしぃ、もっとお姉たまといちゃいちゃしたいのぉ」

「おいお前! そういうのやめろよ! 一人だけ愛を主張とかずるいだろ!」


 ――ありがとう、子どもたち。


 涙が出そうだった。

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― 新着の感想 ―
最初の一話で、静かな痛みと優しさの温度がすぐ伝わりました。 失ったものの中にまだ“息づくもの”を描いていて、読んでいて不思議と心が落ち着きます。 言葉のひとつひとつが丁寧で、マリエという人の強さと優し…
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