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結婚したら、夫に愛人がいました。  作者: 仲村 嘉高
 
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初めまして





 入室許可を出したのだからレベッカ達が入って来たのを知っているのに、ジョエルは行為を続けた。

 初めて見る男女の営みに顔を青くしているレベッカの前に、アンが立ち塞がる。

 リズは「失礼します」と耳元で囁き、そっとレベッカを守るようにその身体を抱きしめる。リズの方が背が大分高いので、レベッカは頭を抱えるように抱きしめられていた。


 何やらベッドの方では変化があったらしく、アンの「そうろう」と言う馬鹿にしたような声が聞こえたが、レベッカには意味が解らなかった。



 ジョエルはベッドを降りバスローブを羽織ると、窓際に置いてある応接セットへと移動する。

 入口で待機していたトーマスは、ジョエルの座るソファの後ろへと立った。

「何をしている。早く来い」

 入口付近から動かないレベッカ達を、ジョエルがイライラした様子で呼ぶ。


 リズに(なか)ば抱きかかえられるように、レベッカは室内を移動した。

 本来レベッカとジョエルが使うはずだったベッドの上には、上半身をヘッドレストへ寄り掛からせている女性がいた。

 大きな胸を隠しもせずに見せつけているのは、情事の痕跡をレベッカに見せつける為だろう。


「垂れ乳。デカくても形が悪いわね」

 アンがベッド上の女性を見て、ボソリと呟く。

 アンの言葉を聞いて、思わずレベッカの視線がベッドへ向く。

「レベッカ様、あんな汚らわしいものを見ては駄目ですよ」

 女性の姿を確認する前に、リズに遮られてしまった。



 悲しい場面のはずなのに、レベッカは何も感じなかった。

 驚きも悲しみも、屋敷の入口で落としてきてしまったようだ。

 あの、ジョエルの急変した様子を見た時が、一番辛くて悲しかった。


 ジョエルの席と向かい合うソファに座ったレベッカは、テーブルの上にある書類に気が付いた。

 アンとリズは、レベッカの後ろへ控えている。

 書類には『契約書』と書かれていた。



「お前との結婚は、偽装結婚だ」

 レベッカが書類を見ているのに気付いたのか、ジョエルが話し始めた。

 ベッドに居るのが、ケニントン男爵家の令嬢ロラ・ベジャールである事。

 先代の遺言で、伯爵家以上の令嬢と結婚しなければ、爵位継承が出来ない事。


「それから、俺がお前を抱く事は無い」

 ジョエルが宣言をした。

「しかし教会の規定で、三年白い結婚を続けると、女の方から離婚を申し立てられるというではないか」

 怒りを滲ませながら、ジョエルが話を続ける。納得いかない、と。

 レベッカはそれをただ黙って聞いていた。



「教会では、純潔の判定は出来るが、相手の特定は出来ないらしいぞ」

 ジョエルの(こわ)()が変わり、レベッカは書類から視線を上げた。いやらしくニヤつくジョエルと目が合う。

「お前の相手は、このトーマスだ」

 ジョエルの手が、ソファの後ろに立つトーマスを示した。


「お前には執事と紹介したが、本当は単なる雑用係でな。お前の相手をさせる為に、雇ってやったんだよ」

 ジョエルの婚約者だった頃からトーマスの態度がレベッカを(うやま)っていなかったのは、自分の女になると思っていたからのようだった。




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