2.日々の戯れ。
(*'▽')ランキング載りたい。
趣味作と云えども……。
「セレナさんは本当に働き者で、助かっていますよ」
「そうなんですか?」
セレナがリーデングロス家に引き取られ、数日が経過して。
視察も兼ねてアクリオが足を運ぶと、クレア婦人がとにかく嬉しそうにそう語った。客間で出された紅茶を啜りつつ、青年は少々意外に思いつつもどこかで納得する。
自分より目上、とりわけ大人からの指示には従順な彼女のことだ。
おそらく本人としては、ただ『任務』を遂行しているだけなのだろう。
「……あぁ、あの子は大人に逆らえないですから」
「いえいえ。そうではないのですよ」
「え……?」
そのことを思い出し、若干の憂いを抱くアクリオ。
だが、そんな彼にクレアは首を左右に振って笑顔を見せるのだった。
相手の意外な反応に対して、青年はいったいどういう意味かと問いかけるような視線を送る。すると婦人は自分の紅茶を一口してから、子細を説明し始める。
「セレナさんは面倒見がよくて、誰に言われるでもなく年下の子供たちと遊んでくれています。今ではすっかり、みんなの頼れるお姉さんですよ」
「頼れる、お姉さん……?」
その話は、さらに意外な内容だった。
それこそ帝国の『操り人形』として扱われてきた彼女に、そのような一面があったとは。アクリオは婦人の話を聞いて、思った以上の喜びを覚えていた。
あの日以降、セレナは無事に生活できているかと不安で仕方なかったのだ。
嬉しくないはずがないだろう。
「それでは一度、見学されますか?」
「えぇ、是非」
明るい表情になったアクリオに、そう提案するクレア。
彼は即座に承諾し、子供たちのいる部屋へと向かうのだった。
◆
『あら、あなた。おかえりなさい!』
『ただいま帰投しました。本日の夕食の材料は滞りなく入手できましたので、問題なく調理工程へ移行できるかと思います』
『それなら、先にお風呂に入ってきてくださる?』
『指令、承諾いたしました。これから入浴による身体洗浄を行います』
子供部屋の中央では、左手に人形をはめたセレナがいた。
対面に幼い少女――ミオがいる。周囲には他の子供たちが囲むように座っていて、セレナが口にする独特な言い回しを楽しんでいる様子だった。
ただ、アクリオにとっては何というか――。
「(なんか、思っていたのと違う……)」
――少なくとも、一般的な飯事とは違うだろう。
しかし子供の中に溶け込めているのは、間違いない事実であるようだ。どのような形であれ、苛烈な境遇である彼女が受け入れられているのであれば、それは喜ばしいことだろう。アクリオはそう考え直して、苦笑しながらもクレア婦人へ話しかけた。
「あの人形は、どこから?」
「あれは、ミオちゃんの宝物ですよ」
「ミオ――あぁ、一緒に遊んでいる子の名前ですね」
そこでアクリオは、ミオを見て頷く。
そして、思ったままの感想を素直に口にした。
「元気な女の子、ですね」
ミオは絶えることなく笑みを浮かべ、セレナのことをリードしている。
どちらが姉役かは、言うまでもなかった。おそらく、あの少女がいるからこそセレナは受け入れてもらえたのだろう。
そんなことを考え、アクリオは言ったのだ。
「そう、ですね……」
「……え?」
だが、その言葉にクレア婦人は少しだけ声を詰まらせる。
アクリオは首を傾げるが、次の瞬間にはもう彼女はいつもの顔色に戻っていた。
「それでは、そろそろ戻りましょうか!」
そして、そう言って部屋を出てしまう。
「(いったい、どうしたんだ……?)」
アクリオは微かな違和感を抱いたまま、彼女の後を追うのだった。
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