ジンジャークッキー
ぐいっと。グリューワインを飲み干す。
結構、酒精が強い。シナモンとかで誤魔化してるけど、安酒だな。
こいつはうわばみだ。いくらでも飲めるから味など、どうせ気にしないだろう。
僕は嗜む程度。明日も仕事だし、酩酊していられない。この氷点下。路上で寝たら命が危険だし、基本的に治安も良くない。僕は味のわかるタイプなんだ。なんなら利き水もできるからこいつよりはグルメだ。間違いない。
しかし、まあなんとも言えない「結末」を持ってきたな、こいつ。
「なあ、何が見えた?」
「お前の怒った顔」
なんだよ、意外そうな顔すんなよ。
お前、そもそも怒りっぽいじゃん。
「な」
「いいから、ダンプリングが食べたい。あと白ワイン。リースリングで。席とられないように待ってるから買ってきて」
「わかった」
不承不承感は見ない。知らない。
そんな顔したところで「結末」が甘くなる訳でもない。
大体「まだ何も始まっていない」のだ。
「ピースも揃っていない」。
ぼんやりと教会を見ていると、視界の隅の屋台。おお、すごい量のポテトフライを揚げている。見ているだけで胸焼けしそうだ。あとはジンジャークッキーか。ジンジャークッキーはアイシングがきつくてあんまり好きじゃない。
せっかく来たんだし、あとでモーツァルトのケーキでも買って行くかな。どうせ「調べ物」が始まるんだろうから。
「こっちは」あいつが調べてくるとはいえ「向こう」は僕が調べて、ピースを揃えないと「物語」が始まらないか、望ましくないエンディングだ。
教会を見上げると、時報が鳴った。
カラクリ時計が動いて、人を模した人形が悪魔に追いかけられている。
その上から天使の人形がラッパを吹いた。
19時か。結構長居している。足が痺れてきた。
食べたら、帰ろう。