天城武人の憂鬱・11月編【安平学園物語】
本編はもう少しお待ちを…(¯―¯٥)
※なお、時間軸は本編の1年前くらいです。
(本文:1686字)
「なぁ天城。今日は何の日か知っているかい?」
期末考査の勉強中、突然子安は、ニヤニヤしながらそんなことを尋ねてきた。何が楽しいのか、それはとてもニヒルな笑みだ。
「いきなりどうしたんだ」
「いやなに、今月は11月だろう? 11月は『良い〇〇の日』という語呂合わせから、他の月と比べて多くの〇〇デーが設定されているのさ」
「まあ、11月5日で『いい子の日』とか、11月26日で『いい風呂の日』とか、たしかにたくさんあるな。でも、それが突然どうしたんだ?」
そう言って子安の方を向こうとして(子安は伸びをするために立ち上がっている)、はたと思い至った。子安がなんの考え無しにそんなことを聞いてくるか、と。
この女、子安麻耶とは、小学校中学年頃のクラス替えからの付き合いだ。『いい性格』をしており、小学生の頃からよく弄られてきた。一方で面倒見がよく、大抵のことはなんでもできるため、どこかへヘルプに入る姿もよく見かける。
見た目は一言で表すと「クール系」…なのだが、いかんせん普段のこいつは、黒髪黒目眼鏡巨乳ショートジャージニーハイ、と記号じみた格好をしており、他の奴らいわく
『『『『『『要素が多い!!!!!!』』』』』』
という感じだ。
さて、そんなやつが俺にこの話を振ってくる…。
「いったい何を企んでいる?」
なんせ今までが今までだ。警戒するに越したことはない。そう思っていると、
「おや〜?」
ーー子安はますます笑みを深めていた。
なぜだ、俺は何か地雷を踏んだのか?
「な、なんだ、その顔は」
「私はキミに『今日は何の日か知っているか』と聞いただけだ。だというのに、両腕で身体を抱えて息を荒くして。いったいナニを期待しているのかと思ってね〜」
「んなっ!?」
そう言われて自分の身体を見下ろすと、確かに俺は胸の前で腕組みし、息は荒くなっていた。無意識のことで、自分でも驚いた。これではまるで、
「まったく。私からの手解きに興奮を覚えるような男に育てた覚えはないぞ?」
「お前のせいだろうが!」
「ほほう。つまりキミは、私によって調教を施された、という認識を持っていると」
「ちょっ!?///」
突然のワードに、思わず顔が熱くなる。そしてしまったと思った頃には、子安にまたも詰め寄られる。
「やれやれ、その程度の単語で頬を赤く染めるとは、相も変わらず初心だなあ」
カーペットの上に座る俺に、四つん這いでにじりよってくる子安。今の子安は上着を脱いでおり、ジーパンにTシャツというラフな格好で、その首周りは少し緩k…
「おおすまない」
「わざわざ胸元を強調するな! そして揺らすな!」
俺が後ろに下がれば、その分子安が詰めてくる。それを繰り返すうち、とうとう俺は壁際まで追い詰められた。
「んふふ♪」
「ッ!?」
四つん這いで下から顔を覗き込んでくる子安に、俺は思わず声を漏らす。
別に、力で負けているとか、そういうことはない。小学校からバスケをしてきた俺と違い、子安は中学こそ女子バスケ部の副キャプテンをしていたが、高校では男子バスケ部マネージャー。負ける要素はない。
ないが、だからといって子安に危害を加えることはできない。どれだけ腹が立っても、子安は女子生徒だ。
もうあとがない。俺は目を瞑り、これからの衝撃にそなえたーー。
「……はあ。やれやれ、キミはやはり女に甘いな」
しかし予想に反し、子安はこれ以上近づいてこなかった。
「えっ?」
「いや〜、最近ストレスが溜まっていてね〜。うん、おかげでいい発散になったよ」
「あ、いや、ああ」
「それじゃ、いい時間なことだし、そろそろ私はおいとまするよ。お母様にも、よろしく伝えておいてくれ」
そう言って帰り支度を進める子安。時計の短針は本日2度目の「5」を指しており、たしかに元々の帰宅時刻とも合致している。いるのだが、このモヤモヤはなんだろうか。
「あ、ちなみに今日は『世界テレビ・デー』なんだそうだ」
「は?」
「ではまた明日、学校で」
そう言い残して子安は、家を出て帰路についた。
……言いたいことはたくさんある。が、すぐに出てきたのは、
(いや『いい〇〇の日』じゃねぇのかよ!!!!!!)
ということだけだったーー。
読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m
※諸事情により、
作中の日付は「11月21日」となっています。
ご了承ください (_ _)