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8000字~解放されたVR世界~

作者: きょうすけ

バーチャルリアリティー。略してVR。

最近、VR機器が飛ぶように売れている。


最初にヘッドセット型のVR機器が発売されてから数百年が経った。

特にここ数年での進化は目覚ましく、すでにバーチャルリアリティーの世界は現実と相違ないほどにリアルになった。

五年前に日本企業が開発した”電脳リアリティー”というVR機器は、脳に直接電極を挿すことで五感のすべてをゲーム内で再現できるという優れモノだ。


今では世界の人々の八割以上が電脳リアリティーの虜となっている。

それもそのはず。

バーチャルの世界ではなんだってできるのだ。


ゲーム内の簡単なクエストをクリアするだけで、高級レストランの食事を浴びるほど食べることができる。

人体の五感に直接訴えかけることができるので、味は本物とまったく遜色がない。


ゲーム内で生成された好みの異性は口説き放題、抱き放題。

どんなにドロドロの恋愛を楽しもうがゲームの中の話だということで済んでしまうのでリスクはまったくない。


老若男女問わず電脳リアリティーに夢中になっており、俺もご多分に漏れずこのVR機器にハマっている。


◆◆◆


しかし、最近ちょっとした問題が発生している。

いや、問題というのはおかしいのだが。

むしろ、この電脳リアリティーが優秀過ぎるせいで起こる弊害のようなもの。


リアルすぎるのだ。


現実と遜色のない世界であることで、バーチャルリアリティーの世界こそが現実だと思い込み始める人が出てきた。

そうなると、当初はゲームの中だからと好き放題やってきた人々も、「ここ」が現実なのだと思い込むことで好き放題できなくなってくる。

本来ならどんな無茶苦茶な行動だって許されるはずのバーチャルリアリティーの世界なのに、なぜか世間体だとか、倫理観だとかにうるさくなってくる。

要は、リアル過ぎたために、だんだんと息苦しくなってきたのだ。


人々は困り果てた。

せっかく現実の憂さ晴らしのためにゲームをやっているのに、これじゃあゲームの世界に訪れた意味がない。

「どうにかしろ!」「全然楽しくないぞ!」と無責任な消費者たちは電脳リアリティーに文句をつけ始めた。


そんなとき、誰かが言った。


「電脳リアリティーの中で、電脳リアリティーを使えるようにしろ!」


これはつまり、バーチャルリアリティーの世界の中で、さらにバーチャルリアリティーの世界に入り込めるようにしろという要望だ。

現実逃避の世界が息苦しくなったのなら、さらにその中に現実逃避の世界を作り出せばいい。

これはなかなかにいいアイデアではないかと世間から支持されることとなった。


かくして、電脳リアリティーの利用者たちは、バーチャルリアリティーの世界の中で、さらにバーチャルリアリティーの世界の中に入り込むこととなった。

この対応策は一定の評価を得た。

人々は次々にバーチャルリアリティーの世界から次なるバーチャルリアリティーの世界に旅立っていった。


業界内ではこの世界を二層目と表現するようになった。

二層目は、これまでとは時間の進み方も異なる。

テクノロジーの進化により、人間の脳が物事を感じるスピードを圧倒的に早くすることができるようになったのだ。

現実世界の十分の一ほどの速さで時が流れるので、人々はこの二層目に入り浸るようになった。

受験勉強、学問の研究、バカンス、なんでも二層目で行われるようになった。

今や、人々の生活は、この二層目が中心だ。


◆◆◆


俺は今、第五層の病院にいる。

定期検診を受けに来たのだ。


俺が待合室でボーっとしていると、声を掛けられた。

友人の純一だ。


「よお」


「おう久しぶりだな。純一。お前も定期健診か」


「ああ、お前もか圭太」


「しかし、憂鬱だな。普段から不摂生だから何を言われるか……」


俺はうな垂れる。

そんな俺に純一は元気よく笑いかける。


「なぁに。しょせん、ゲーム内でのことじゃないか。本当に体調が悪くなったわけじゃない」


「だけど、体調を整えるためのアイテムは、高難易度クエストをクリアしないと手に入らないんだ。とても俺一人では無理だよ」


「そう言うなって。クエストは俺も手伝ってやるからさ」


「俺よりもゲームが下手な純一に言われてもなぁ」


「あ、ひっで。手伝ってやろうと思ったのによ」


純一はふくれっ面で文句を言う。

ちょっと言い過ぎたか。


「すまん、すまん。でもさ、おかしいだろ。ゲームの中なのに健康診断があるなんて」


「それも電脳リアリティーの利点の裏返しだな。なんでもかんでもリアル過ぎる」


「そうだよなぁ」


「でもよ。そうでもしないと、電脳リアリティーを運営している奴等が儲けられないんだってよ。特殊な効果のあるアイテムなんかをリアルマネーで買い取ってもらわないと、この膨大な情報量のあるゲームを維持していけないんだとか……」


「なるほど。基本プレイが無料だからって、すべてのサービスがタダってわけにはいかないもんな」


「そういうこと。……それにお前なんてまだいいほうだよ。俺は養育費やらなんやらで火の車なんだぜ?」


「ええ? 純一って結婚してたっけ?」


初耳だ。


「四層でちょっとな。できちゃった婚ってやつだ」


「まじかよ。なんていうか、おめでとう、だな」


「ありがとよ。だけどなぁ。四層にいる子どもとかみさんのために、二層でずっと働かなきゃいけなくなった。幸せかどうかって言われたら微妙なもんだよ」


「なるほど。二層は時間の流れが割と遅いからな、出稼ぎってわけだ」


「そうなんだよ。しかも二層から四層へお金を移すときの為替レートがよく変動するから、送金の時期も考えて働かなきゃならない。最近の俺はそのことで頭がいっぱいだよ」


「だったら、なおさら俺のクエストを手伝っている暇なんてないじゃないか」


「はは。まぁな」


笑っているが、その顔からはかなりの疲労が見て取れる。

だいぶ疲れているようだ。


「純一、辛いなら、四層でのデータをすべて初期化したらどうだ。そうすれば養育費だなんだって悩む必要はなくなるだろう」


俺は純一を慰めるつもりでそう言った。

だが、純一は目をキッとさせて睨みつけてくる。


「馬鹿野郎。俺の子どもが腹をすかして待っているのに、そんな無責任なことできるかよ。俺がデータを初期化したって、子どもとかみさんまで消えるわけじゃないんだ」


ごもっともだ。

電脳リアリティーでの出来事は、すべてがリアル。

現実世界となんら遜色のない世界で、すべてのプレイヤーの情報はリンクしている。

だから、自己破産をするが如く、ゲームのデータを初期化したとしても、自分のデータだけが初期化されるだけで、その世界はそのまま続いて行くのだ。


「幸いなことに、二層の時間の流れは十分の一だ。金を稼ぐための時間は十分にある。この定期検診が終わったらすぐに二層に行ってラーメン屋でバイトするんだ」


「……そうか、頑張れよ」


「ああ、お前もな」


◆◆◆


定期健診を受けて家路に着く。

ついでに、帰りにコンビニで焼き鳥とうどんを買った。


チャリ。


はあ。

だいぶ貯金が少なくなってきた。

俺もそろそろ二層に行って働かなきゃな。


二層にはたくさんの仕事がある。

前述したとおり、二層は人々の娯楽のために生み出された場所だ。

二層に暮らしている金持ち連中はすべてが満たされている超ビップどもだ。

彼らの生活を支えていくためには、俺のような低所得者があくせく働かなくてはならない。


富裕層を生み出すためには、貧困層がいなければならないのだ。

当たり前のことだ。

上があるということは、下があるということ。

左があるということは、右があるということ。

金持ちがいるということは、貧乏人がいるということ。


このバーチャルリアリティーの世界にいの一番にやってきた連中は既得権益をむさぼっている。

それはあとからやってきた俺を含める大半の人間には覆すことのできない圧倒的な格差となっている。


理不尽だ。

電脳リアリティーは、現実の憂さ晴らしのためのゲームだったはず。

それがいつの間にか本当の現実よりもシビアな世界を生み出してしまっているのだ。

元も子もないとはこのことだ。


家に帰ってきた。

電子レンジで焼き鳥を温めながら、テレビをつける。


「どっこいしょっと」


冷蔵庫からビールを出して開ける。


ああ、この瞬間だけが癒しだ。

現実世界でも、バーチャルリアリティーでも、このときだけは楽しい。


ビールを一気に煽る。

俺がいい気分に浸っていると、テレビの中が騒がしくなっていることに気が付いた。

アナウンサーが嬉々とした表情でなにかを言っている。


『みなさまに朗報です。なんと、来月から第七層がプレオープンするとの情報が入りました』


なんだって?

第七層?


これはビッグニュースだ。

俺はテレビの音量を上げた。


『なんと第七層では時間の流れがこれまでの百分の一になるそうです。これで金銭面で不安を抱えていた人たちもゆっくりと仕事をすることができます。また、第二層での暮らしに飽き飽きしている富裕層の方々にとっては、新たな観光先として人気を博すことが予想され……』


アナウンサーは淡々と話を進めるが、その表情はなんとも嬉しそうだった。

まるで、誰にとっても嬉しい出来事が起こったかのように話す。

コメンテーターの面々も「これで貧困層の金銭問題が解決される」「富裕層にとってもより快適な世界になっていく」「だれにとっても損のない良策だ」と褒めちぎっている。


まさしくその通り、誰にとっても嬉しいニュースのはずだ。

だが、俺は少し複雑な気持ちになった。


本当に、これでいいのか……?


そのとき、純一から電話がきた。


『おい圭太! テレビを見てるか!?』


『ああ、見てるよ。第七層ができるんだってな』


『そうなんだよ! しかも、時間の流れがこれまでの百分の一になるそうじゃないか! ああ、これで妻や子どもを助けることができる。なんてありがたいんだ』


『はは。よかったな』


『これで十分に休みながらゆっくりと仕事ができるな。圭太が七層に行くときは言ってくれよ。一緒に行こう』


『そうだな。楽しみにしているよ』


そう約束をして電話を切る。


そうか。

金銭面で苦しんでいた純一にとっては、時間の流れが百分の一になる第七層は渡りに船といえるだろう。

なにせ、時間が百分の一になるということは、それだけゆとりをもって仕事をすることができるのだ。

週休二日で健康的に働いて、数年我慢すればそれなりに貯金ができる。

その貯金したお金を四層にいる妻子に送金すれば生活は安泰となる。


第七層なら一年間仕事をしたって、第四層では三日間しか経たない。

家族を養っていくには最適の方法と言える。


純一の喜ぶ声が聞けて、俺も嬉しい。

さっき病院で会ったあいつは本当に悩んでいるように見えたから。


……だけど、なにかがおかしい気がする。

誰も損はしてない。

みんなが幸せになっている。

なのに、なにかが腑に落ちない。

人類はなにかとんでもない見落としをしているのではないかと、不安が胸をよぎる。


「やっぱりこんなの間違ってるよな……」


ここはバーチャルの世界だ。

元々バーチャルの世界は、現実世界で溜まったストレスを解消するためのゲームとして生み出された。

だが、人々はそのバーチャルの世界でもストレスを溜めるようになり、新たなバーチャルの世界を生み出し、そちらに移住し始めた。

そして、ずっとそれを繰り返している。

とうとう第七層まで生み出されようとしている。


……一体、いつまでこの連鎖は続くのだ。

この調子でいくと際限なく階層が生み出されていく気がする。

そのうちに、奥の階層まで入り込みすぎて出てこられなくなるのではないか。


ゾッとする。

そもそも、電脳リアリティーで生み出された世界は、すべてが嘘っぱちなのだ。

それが今や、現実世界よりも重視され始め、みんなはバーチャル世界で生きていくためにあくせく働くようになっている。

純一にしたって、悩むくらいなら電脳リアリティーそのものを辞めてしまえばいいはずだ。

それなのに、第七層に行って働けることを喜んでいる。

面倒臭ければすべて投げ出していいはずなのに。

投げ出したって現実世界で誰かに責められるわけでもないのに。


「みんな、電脳リアリティーに騙されている」


◆◆◆


決心がついた。

俺は電脳リアリティーを辞めようと思う。


こんな世界にしがみついていたってしょうがない。

所詮は虚構の世界だ。

これまでやってきたクエストの数々のことを思い起こせば、ここで辞めてしまうのはもったいないという気がしないでもない。

だが、そんなことを言っていたらいつまで経っても辞められない。

辞めるならスパッと辞めよう。


第五層をログアウトする。

さらに、データをすべて初期化。


第四層に移る。

第四層もログアウトする。

データをすべて初期化。


第三層に移る。

第三層もログアウトする。

データをすべて初期化。


第二層に移る。

第二層もログアウトする。

データをすべて初期化。


第一層に移る。

第一層もログアウトする。

データをすべて初期化。


終わった。

これで電脳リアリティーのすべてのアカウントの情報を初期化した。


それぞれの階層で人間関係があったが、あえてなにも言わずにおいた。

所詮はゲームだ。

いつ辞めようが、それは俺の勝手のはずだ。


未練がないと言えば噓になるが、俺は自分の判断は間違っていないと確信している。

このままでは、きっと取り返しのつかないことになる。

そうなる前に辞められて、内心ではホッとしている。


◆◆◆


目が覚める。

眩しい。

久しぶりに生の眼球に光が差してきているので、目が痛い。


目をこすろうとすると、「ちゃぷ」と音がした。

生温かい緑色の液体が身を包んでいるのだ。

この培養液に使っているお陰で体の腐食を防ぐことができている。


「ああ、久しぶりの現実だ……」


生命維持装置を外してカプセルの中から出る。

周りを見渡すと、俺が入っていたのと同じような生命維持装置のカプセルがたくさん並んでいる。


ここは電脳リアリティー専用の施設だ。

都内に住んでいるほとんどの人間が、この施設で電脳リアリティーを利用している。


「よっと……」


俺は隣に置いてあるカプセルのことを蹴らないように慎重に移動した。


◆◆◆


屋外に出る。

時間はちょうど正午を回ってくらいで、太陽が高い位置に来ている。


昨日は雨が降ったらしく、あたりが少し濡れている。

寒冷前線が抜けたあとの涼しい風が吹き抜け、俺の体を撫でる。


「気持ちいいな」


雨のおかげなのか、空気がきれいになっている気がする。


いや、もしかすると、電脳リアリティーの世界よりも、現実世界のほうが五感が鋭く働いているのかもしれない。

作り物の虚構世界で感じるよりもやはり現実世界で感じる風のほうが気持ちいいようだ。


やっぱり、バーチャルリアリティーの世界よりも、現実世界のほうがいい。

あんな嘘っぱちの世界で生きていたって、現実世界にはなんの影響もないんだ。

こうやって直に感じることのできる体験こそが人生においては重要だと思う。

どうして今まで気が付かなかったんだろう。


木陰にあるベンチに座る。

木漏れ日が気持ちいい。


肌に当たる日光が体をじんわりと温めてくれる。

体温の上がってきた体をときおり吹く風が少しだけ冷ましてくれる。


「あ~、癒されるなぁ」


「ほっほっほ。日光浴ですかな」


俺がベンチで休んでいると、お爺さんが隣に座った。

人の好さそうな、優しい顔をしたお爺さんだ。


「ええ、久しぶりにリラックスしたら、すごく気分がいいですよ」


「ほっほ。ええことじゃあ、今はみんな、忙しく働いていて余裕というものを見失っておる」


「本当にそうですよねぇ」


みんなは電脳リアリティーを使ってバーチャルの世界に入り込み、そこで生き抜いていくために神経をすり減らしている。

本来は自由を謳歌するために作り出された世界の中で、現実世界以上に頑張って働いてしまっている。

本当に、元も子もないとはこのことだ。


きっとこのお爺さんは、俺と同じような考えをもっているにちがいない。


「俺は、電脳リアリティーなんて余計なものは必要ないと思うんですよ」


「ほぉ。いまや世界中の人が利用し、有り難がっている電脳リアリティーを必要ないとおっしゃられるか」


「はい。世界中の人たちがやっているからと言って、いいものだとは限りませんよ」


「それはそうじゃな。じゃが、電脳リアリティーの中では時間の流れが緩やかになり、これまで以上に緩やかに生きていけると好評のようじゃ。その部分も否定してしまうのかね?」


「はい。俺はそんなものは必要ないと思うんです。だって、時間の流れが緩やかになっても、緩やかに生きていられる人はほんの一握りの富豪たちだけですよ」


俺は語気を強めて力説する。


「バーチャルの世界に行っても、結局は格差がある。その格差社会の中でなんとか生き抜こうとして必死になればなるほど、人々は疲弊していくんです」


「ほほぉ。そうじゃのう」


「本来は自由のために作られたバーチャル世界での生活は、いまや義務と責務でがんじがらめになっています。それなら、最初からやらなければよかったんだ」


お爺さんは静かに俺の話を聞いてくれる。


「第七層なんてものができたそうですが、絶対に利用しないほうがいいと思うんです。いつか、人類はバーチャルの世界と現実の世界を区別できなくなりますよ。そうなったら、本当に恐ろしい。ずっとバーチャルの世界での出来事に振り回されて生きていくことになってしまう。バーチャルの世界なんて、所詮は嘘っぱちで全部虚構に過ぎないのに」


「ふむ」


「俺はアカウントをすべて削除してきました。差し出がましいようですが、お爺さんもアカウントなんてすべて消したほうがいいですよ。精神がバーチャルの世界に蝕まれる前に……」


お節介かとも思ったが、真剣に説得してみた。

それは、もしかしたらこの人になら俺の言葉が届くのではないかと期待をしたからだ。

バーチャルの世界にどっぷりと浸かった連中よりも、この時期に現実世界で過ごしているこの人にならわかってもらえると思う。


俺の言葉を聞いて、何か考え込む素振りをしていたお爺さんは「そうじゃなぁ」と口を開いた。


「たしかに、おぬしの言う通りかもしれん。いつまでのバーチャルの世界に居座ることは健康的とは言えんだろう」


わ、わかってもらえた。


「賛同してもらえますか」


「うむ。目が覚めたようじゃ。これから残ったアカウントをすべて削除して、余生はすべて現実世界で過ごすことにするよ」


「それがいいでしょう」


お爺さんはすっくと立ちあがる。


「ほっほ。それじゃあ、一足先に現実世界に戻っておこうかのう。えーっとログアウトは……」


お爺さんが虚空を見つめて手を動かす。


おいおい。

マジかよ。

ボケてるのか。


「お爺さん。ここは現実世界ですから、ログアウトはできませんよ……」


まいったなぁ。

俺はこんなボケ爺さんに真剣に自分の考えを語っていたのか。


「ああ、あったあった。このボタンじゃったな」


そう言ってお爺さんは虚空に向かって手をかざした。

そして、その瞬間にその体は虚空の中へと消えていった。






~fin.~


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