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最終回~妹が遺した言葉~

3日後、佳佑は家で少し休んでいた。仁と真佐子は新たに始めた建設業の打ち合わせで外に出ていた。

一人、自分の部屋で本を読んでいると、インターホンが鳴った。佳佑は立ち上がり、玄関を開けると、そこには園山佳純が立っていた。

佳佑は気づいた、確か咲良の葬式でずっと泣いていた女性だったと


佳佑「あっあなたは」


園山「私、咲良の友人である園山佳純と申します」


佳佑は驚いた。まさかと思い


佳佑「もしかして。8月11日に咲良が泊まりに行った友達って」


園山は少し冷静になるために、間をあけて


園山「あっ私のことです」


佳佑「そうでしたか。どうぞお入りください」


園山が家に上がり、近くの居間に案内される。そこには咲良の仏壇があった。


園山「あの、お参りしていいですか?」


佳佑「あぁ、お願いします」


園山が仏壇を参り始める。1分間黙とうをした後に、後ろを振り返り


園山「すいません。待たせてしまって」


佳佑「いや、いいんだよ」


佳佑から笑顔で言われた園山は、少しホッとした。

でも笑顔になれずに、少し泣きそうな顔で


園山「あの、本当にすいませんでした」


頭を下げる園山に、少し困惑する佳佑


佳佑「そんな、どうしたんだよ」


園山は涙ながらに


園山「まさか、葬式の時に声をかけてくれた人が、咲良のお兄さんだったなんて知らなくて、つい逃げるようにして、その場から離れて、本当にごめんなさい」


佳佑は何だそんなことかと思いながら


佳佑「いいんだよ。顔を上げて園山さん」


恐る恐る顔を上げる園山。

佳佑は笑顔で


佳佑「実は、正直に言うと、会ってみたかったんです」


園山「え?」


佳佑「咲良が、友達と会っているときどんな顔をしていたのか。それに園山さんと咲良はどんな話をしてたかとか。色々と気になっちゃって」


園山は意外な反応に、少し戸惑いながらも


園山「咲良は、凄い明るくて、それに活発的だし、とりあえずいい友人です」


佳佑は微笑みながら、少し涙目になり


佳佑「そうか。それはよかった」


園山「あっそれに」


佳佑が園山に目線が行く。


園山「いや、咲良が亡くなる日の夜中かな。咲良こんなこと言ってたんです」


~回想・8月12日深夜~

咲良「この空を飛んでみたいよね」


園山「え?」


咲良「鳥みたいにこの空を飛んでみたい。知ってる?鳥ってさ、誰にも看取られずに死ぬじゃない?」


園山「知らないけど、どうしたの?」


咲良「でも、私は自分の一番大事な人のそばで死ぬの、だからね。私、お兄ちゃんのそばで死にたいんだ。お兄ちゃんさ、凄い頭いいし、頼りになって、とてもいいお兄ちゃんなんだ。だからさ、私に何かがあったら、一目散に見つけてくれるのはお兄ちゃんだよね」


そのままずっと外の空を眺めている。


~現在・1985年~

佳佑「咲良、そんなことを言ってたんだ」


園山「私、咲良の分まで生きます。そして咲良の分まで幸せになります」


園山の必死さに、佳佑は笑顔で


佳佑「よろしく頼むよ」


園山「ありがとうございます」


園山は泣きながら頭を下げた。

夜中・佳佑は一人咲良の仏壇の前にいて


佳佑「咲良。いい友達に恵まれたな。生まれ変わって鳥になったら、真っ先に俺のところに来てくれ、大事にすっからよ」


佳佑は泣くのを堪えながら、外の空を眺めていた。


~現在・2019年

佳佑は御巣鷹の尾根までの山道を登っており、息を切らしながらもなんとか慰霊塔に着く。

そこには園山の姿があり、自分に向かって手を振っている。

佳佑が園山の前まで行くと


佳佑「ごめんね。こんな暑いときに来てしまって」


園山「大丈夫です。一度登ってみたかったんで」


佳佑「聞いたよ。今度墜落事故をテーマにしたドラマ書くって」


そう園山は今をときめく脚本家。次々にヒット作を生み出す天才脚本家として売れっ子だった。


園山「えぇ、咲良のためにも書きたいなって思って」


佳佑「大丈夫なのか?」


園山「大丈夫です。絶対にヒットさせますから」


佳佑「絶対に見るよ」


園山「ありがとうございます」


佳佑「よし行こうか」


2人は慰霊塔でお祈りをした。


佳佑「咲良、向こうの世界でも頑張って暮らせよ」


園山「咲良、今幸せだからね。頑張ってるからね」


祈りを終えた2人の顔は、真っ青の青空へと向かっていったのだった。


~最終回終わり~


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