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第6話~優しい親戚~

翌日

ずっとこの体育館にいれるわけでもなく、咲良の遺体を自分の家に連れてきた。でも自分は何もする気分でもなく、ただ咲良の遺体がある棺桶の前にいるだけだった。

すると、航空会社の男性社員二人ががやってきた。佳佑は何とも言えなかった、ただ何故だが、社員を家に上げてしまった。社員は土下座をして謝ってきた。


社員A「誠に申し訳ございませんでした」


佳佑「・・・」


何も言われなかった。今は言葉に出したくない悲しみが大きかったからだ。


社員B「これをお納めください」


社員はそう言い、多額のお金を風呂敷に包み、渡してきた。その時に悲しみより、怒りが爆発し


佳佑「ふざけないでください。あなたたちは金さえ渡せば、それでいいって考えですか」


強めに言った。


社員B「別にそんなわけじゃ」


佳佑「返せ、妹を返してください。あいつはね、教師目指してたんですよ。その夢をあんたたちが壊したんですよ!」


怒りは頂点まで来ていた。当時の気持ちは航空会社を恨んでいた。その気持ちが勝っていたからだ。


社員A「本当に申し訳ございません」


すると、丁度良く、玄関に祖母である真佐子と叔父の仁だった。


真佐子「佳ちゃん、大丈夫かいなって・・・誰や?」


二人は社員を見つめる。佳佑が一言


佳佑「航空会社の人。金渡しに来た」


すると、仁が激怒し


仁「何しに来たんや!、帰れや、ボケ!」


そういい、社員を無理矢理追い出した。


佳佑「ごめんね、叔父さん」


仁「ええんや。なんやねん、無責任な」


仁はそのまま、真佐子と一緒に上がる。佳佑はお茶をだし、二人は咲良の棺桶の窓を開き、遺体を見る。真佐子は泣き出し、仁も黙ったまま、なんとも言えない気持ちでいた。佳佑は居間から黙って見ていた。


真佐子「咲良ちゃん、怖かったやろう。可哀想に」


佳佑「消防団の人が奇跡だと言ってました。数多い遺体の中で、こんなに綺麗に残っているは珍しいと」


真佐子「咲良ちゃん・・・」


佳佑「お茶入りました」


二人は居間に来て


仁「ほんまにありがとうな。気を使わんでええのに」


佳佑「いや、こんなことしかできないけど、させて欲しい」


仁「佳くん、大丈夫なんか?」


佳佑「まぁね。でも今は何もしたくなくて、あいつの前で泣くだけ」


仁「あのな佳くん」


佳佑「ん?」


仁「行くときに母ちゃんと考えたんやけど、二人でここにいてもええか?」


佳佑「え?」


佳佑は驚きの表情をする。まさかの言葉だったからだ。


仁「あかんか?」


佳佑「いや、そんなことないけど」


仁「母ちゃんもこんな年やし、ろくに動けもせん。だから、片道の分しか持ってきてへんねや」


佳佑は笑顔になる。叔父さんらしいな、そう思っていた。


佳佑「ありがとう」


そこから、二人は家事から全て、自分の代わりにしてくれるようになった。凄く嬉しかった。数日後、咲良の葬式を行うことにした。近くの葬儀場で執り行って、咲良の友人や自分の会社の上司や同僚などが、来てくれた。会社の部長は自分に


部長「私も、人の死を見てきたことがあるが、こんなに可哀想な死に方は僕は、見たことない」


佳佑「すいません。部長にまで来ていただいて」


部長「気にするな。あっそうだ、大事な話がある」


佳佑「え?」


自分は思った、過剰な考えだとは思うが、会社をクビだと思った。それは今の状況で多分いられないと心のどこかで覚悟していた。


部長「実は君を、特別有休をあげることにした」


佳佑「はい?、特別有休?」


部長「期限は3ヵ月、多分今の間は苦しいと思うが、ゆっくり休んでくれ」


凄く嬉しかった。涙が出そうになった。


佳佑「部長。ありがとうございます」


部長「私の案じゃないんだ」


佳佑「え?」


部長「社長の案だ。それじゃ」


部長はその場を後にした。その後ろ姿に佳佑は頭を下げた。涙を流しながら。

しばらくして、会場に戻ると、そこにずっと、遺影に向かって泣いている少女がいた。それは咲良の友達の園山佳純だった。しかし、佳佑は会ったことないため、それには気付かず


佳佑「大丈夫?」


園山も知らない人に声を掛けられたと勘違いし、その場を去って行く。佳佑は気に留めず、会場に戻っていった。

その後、家で祖母と叔父に社長からのある意味のプレゼントを話した。


仁「そうなんか?、ええなぁ、俺は建設業やらから、中々休みとれへん」


佳佑「そうなの?今は大丈夫なの?」


真佐子「脅したもんな、やることやんなかったらクビやって」


佳佑「うわ、脅しだ」


仁「母ちゃん余計なこと言うなや」


食卓が明るくなる。少し安心した。

すると、事故から二ヶ月が経った10月、叔父が夕飯中に


仁「なぁ、俺家売ったから」


佳佑「は?」


真佐子「ここの方がええわって思ってな、佳ちゃんを一人にさせたくないんや。だから、余生はここで暮らすことにしたわ。ええやろ?」


佳佑「う、うん」


最初は戸惑ったが、でも少し安心していた。本当はいつ二人が帰るか怖ったからだ。夜、二人が寝静まったころ、咲良の仏壇の前で


咲良「いい親戚持ったよな、咲良。お兄ちゃん嬉しいよ」


佳佑は笑顔になり、泣いた


第6話終わり

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