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第2話~迫る時間、別れの時間~

園山の家に泊まっている咲良は、園山の部屋で窓から外を眺めていた。夜空の星は満点に輝いていた。


園山「どうしたの?」


何故か分らなかったが、園山は目が覚めた。咲良は園山の方を振り向き


咲良「あら、起きちゃった?・・・」


咲良は空を見ながら園山の名前を呼んだ。園山が返事をすると


咲良「この空を飛んでみたいよね」


園山「え?」


咲良「鳥みたいにこの空を飛んでみたい、知ってる?、鳥ってさ、誰にも看取られずに死ぬじゃない?」


園山「知らないけど、どうしたの?」


咲良「でも、鳥は自分の一番大事な人のそばで死ぬの、だからね・・・」



翌日朝

咲良は、自分は園山の家を後にすることにした。


咲良「じゃあね、佳純」


園山「確か、大阪のおばあちゃん家に行くんだっけ?」


咲良「うん。長くて2週間は会えないかも、ごめんね」


園山「気にしなくていいのよ。気を付けて、行ってきて」


咲良「うん、ありがとう」


咲良は園山に手を振り、歩いて自分の家に向かった。だが、園山は遠くなっていく咲良の後姿を見て、何か永遠を別れのような風に感じた。でも気のせいだと思い、すぐに家の中に入った。


20分後、咲良は足早に家に着いた。9時を過ぎていたが家で寝ていた佳佑は咲良が帰ってきた音で目が覚めた。一階に下りた佳佑は咲良に


佳佑「おかえり、随分早かったな」


咲良は驚いた顔で


咲良「びっくりした。なんだお兄ちゃん、起きたの?、ごめんね」


佳佑「気にするな、いつもはもっと早いし、遅いぐらいだよ」


咲良「良かった」


佳佑「そういえば、何時の便なんだ?」


咲良「確か6時だよ」


佳佑は腕時計の時間を見て


佳佑「送っていくぞ」


咲良は顔は笑みになり


咲良「いいの?」


佳佑は頷く、それに続けて


佳佑「お兄ちゃんな、仕事をしなくちゃいけないから、二階の部屋にいるから、何かあったら呼んでくれ」


咲良「えぇお兄ちゃん、私置いていくんだ」


佳佑「そういうわけじゃ」


咲良はため息をつきながら


咲良「私はさ、お兄ちゃんともしかしたら2週間も会えないっていうのに、仕事ですか、可哀想な妹」


佳佑は微笑みながら


佳佑「分ったよ、仕事は後でも出来るから、話を聞こうじゃないか」


咲良は再び笑顔を取り戻し


咲良「やったぁ、あっそうだ、お兄ちゃんに見せたいものがあるの」


佳佑「なんだ?」


咲良はリビングに行き、映画のパンフレットを見せた。それはつい最近公開されたジャッキーチェンも出演していた香港の大福星だった。咲良は様々な映画の魅力を伝えた。


咲良「それでさ、ジャッキーチェンのアクションが最高でさ。特にこのシーンが面白かった。サモ・ハンの動きも面白くて最高。ジャッキーはコメディとか向いてるよね」


佳佑「ジャッキーチェンはブルース・リーを超えたな」


咲良「かもね、でもね、12月には面白いのやるんだよ」


佳佑「なんだ?」


咲良はチラシをテーブルの上に出し


咲良「バック・トゥ・ザ・フィーチャー!」


佳佑「どんな映画なんだ?」


咲良「なんと、タイムスリップするお話なんです」


佳佑「ほほぅ、面白そうじゃないか、タイムスリップねぇ」


咲良「私だったら、お母さんとお父さんに会いたいな」


佳佑「そうだな」


佳佑が見る限り、咲良は目に涙を浮かべていた。それを見て


佳佑「よし、お兄ちゃんがご飯を作ってやろう」


咲良「本当に?」


佳佑は台所に向かい、冷蔵庫の中身をチェックしながら


佳佑「オムライスでもいいか?」


咲良「オムライス?!」


佳佑「嫌だったか?」


咲良「ううん、大好き」


佳佑は笑顔になりながら、フライパンを用意し、オムライスを作っていった。今思えば、咲良はこの時何を考えていたのか・・・

そして、咲良に料理を出し、食べさせてから


佳佑「ちょっとお兄ちゃん仕事してくるから、ゆっくり食べてろよ?」


咲良「う、うん」


二階に上がる佳佑、2時間後、時間は夕方4時を過ぎていた、佳佑は時間も気にせずに、仕事に取り組んでいた。ペンを持ち、報告書やリスク調査票を書きあげていた。

すると、後ろから咲良の声がし、


咲良「ねぇ、次期課長って、偉いの?」


佳佑「まぁ、この歳で課長は前代未聞だって言われたけどな」


咲良「そうなんだ、凄いことなんだね」


佳佑「急にどうした?、そんなこと聞いて」


咲良「ううん、何でもない、それにお兄ちゃん、時間」


佳佑は時計を見た。目を見開き、


佳佑「しまった。咲良急げ」


咲良「う、うん」


咲良は鞄の支度を整えており、少し時間がかかっていた。そして、佳佑は車で待ちながら


佳佑「咲良、急げ、飛行機行っちゃうぞ」


咲良「待って」


今思えば、この時間がもう少し遅かったら、咲良はあの飛行機に乗らずに済んだかもしれない・・・


しかし、時は残酷にも過ぎていき、場面は羽田空港になり、空港ロビーで二人は、搭乗手続き開始を待っていた。


佳佑「咲良、おばあちゃん家に着いたら、まず先に」


咲良「お兄ちゃんに電話」


佳佑「よし、気を付けろよ」


咲良「ねぇお兄ちゃん」


佳佑「なんだ」


少し会話に間が空いた。


咲良「ううん、なんでもない」


すると空港アナウンスが鳴り


アナウンス「伊丹行123便へお乗りのお客様、搭乗手続きを開始させていただきます・・・」


咲良「行かなきゃ」


佳佑「咲良」


咲良「うん?」


佳佑「気を付けろよ、無事に帰ってこいよ」


咲良「分ってる。じゃあね」


咲良が手を振り、佳佑も手を振った。だが、咲良の振る手には何か嫌な感じがした。それは後にも先にも、この時だけだった。

そして、日航機123便は大空へと飛び立って行った。




第2話終わり


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