表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

紫鏡

作者: 紫尾

 紫に染まる寝室、川の字で横たわる母子、螺鈿細工の鏡台、私は眠り込んでいる私たちをみつめている


 窓の向こうを紫を纏った兵隊が往く、螺鈿細工の鏡面は紫を帯びる


 窓の向こうの規則正しい足音の群れに怯える私


 呪われし不吉なる紫鏡、枕元に座り込む紫の父


 父の軍服をみて、嗚呼父が戦地より還ってきたのだと思った


 その顔色は菫の如く紫、血の引いた、青の向こう側の色


 所々に穴が開き、引き裂かれたぼろぼろの軍服、雑草の如き無精髭


 其の渇いた果ての無い砂漠の様な瞳が紫に揺れていた


 私は父が既に此の世の者ではないことを悟った


 悲しい程に規則正しい兵隊の行進の足音、揺れる紫鏡、無表情の抜け殻の父

 八月の熱帯夜がみせた悪夢


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ