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時の魔術師に永遠の幸せを  作者: 鶯埜 餡
再会と喪失
3/28

それぞれの思惑(改稿済み)

途中で視点が切り替わります。

 当事者であるルドルフは自軍の櫓内で、本物の戦では部下という立場になる同期たちと模擬戦における作戦の最終確認をしていた。彼の持つ金髪は太陽を受けて、さらに輝いており、そして、彼が身に纏う青は、まるでその髪に合わせて染められたような色合いだった。


「アーサー、君たちは南東だ。騎兵隊に備えて」

『了解』

「デニス、お前の弓矢部隊は射撃隊の背後から援護を頼む」

『…ああ』

「アーネスト、ジレスと共に俺と共に来てくれ」

『はいよ』


 自ら出陣するために彼らの軍のカラーである青色の甲冑、対象のしるしであるローブ、魔剣を身に纏いながら、彼らにそういう風に命じた。彼と同じ軍に配属されたのは偶然にも男子学生ばかりで、少々櫓内はむさくるしかったが、だれ一人、それを気にする者はいなかった。

 すべての確認し終えた後、彼は懐に即席の魔術具にするための魔工石を十個程度入れた。

(今回は第5競技場が戦場だ。ヒルダ、お前には悪いが、勝たせてもらおう)

 競技場の正反対で櫓を構える少女に向かって、心の中でつぶやいた。







 一方、その彼女、ヒルダの陣営では、彼女以外の姿は見当たらなかった。

「さあ、早く準備して。時間がない」

 濃紺の髪をひっつめた小柄な少女―――ヒルダ・ミレナレックは、魔術具の一つであるスコープを覗きながら配下の学生たちに指示を出していた。彼女の濃紺の髪に対して、彼女が来ている戦装束は緋色であった。その戦装束が風に靡けば、まるで太陽のように闇を飲み込むような錯覚を彼女にから感じ取れた。

(これじゃあ間に合わない。でも、間に合わせる!)

 彼女は内心、焦っていたものの、その焦りを外から見られないように必死に取り繕っていた。

「至急、騎馬隊は西側二十五度の位置に配列。歩兵、弓矢部隊は丘の上に配置、向こうは丘陵地帯の戦いには弱いはずだから、そこからつぶすわ」

 彼女の魔術具から届く指示に、部下役であるほかの学生は無言でその指示に従っていることを、彼女はスコープを通して確認していた。自軍の櫓内には小柄な彼女が一人きりだが、その後ろ姿は、自軍の誰よりもしっかりと地に足がついているように見えた。







 そして、各軍共に配置についた。審判役の教員の合図があるまで、そこで待機だ。

 模擬戦開始の合図は、通常、その学年における本科筆頭教授が行うのだが、今回の合図は、理事長――イジドア・バルザミューラが行うらしく、彼が中央にある特設の舞台に立ち、開始の合図専用の魔術具をまっすぐフィールドに投げ入れた。きらりと光るそれは、中央に落ちて行き、地面に接触すると同時に乾いた破裂音が鳴り響き、双方ともに、相手の軍の方へ向かっていった。



「さて、始まったな」

 中央の舞台から一歩下がった壮年の男性―――このセレヴィック学園の理事長であり、今では禁忌とされている『六獄(ゼクス・ヘル)』の使い手でもあるイジドア・バルザミューラはそう呟いた。この時、彼の後ろにはつい先ほどまでいなかった男がいた。彼は赤い(・・)戦装束を身に纏っていた。その男の方を振り向かずに、

「あの、ホイットニーの小僧を殺せ。手段は選ばない」

 と、イジドアは命じた。


「我が祖先の恨みを果たしてくれよう」

 そのイジドアの言葉に男は黙礼すると、来た時と同じように静かに去っていった。

 イジドアは競技場内を見ながら、目を細めた。

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