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時の魔術師に永遠の幸せを  作者: 鶯埜 餡
再会と喪失
2/28

模擬戦(改稿済み)

 樹木が紅色に染まる季節――――


 毎年、その冬に学園を卒業する四年生が二手に分かれて実戦形式で戦う模擬戦が国内最高峰の魔術学園とも呼ばれる、ここセレヴィック学園において開かれる。


 しかし、今年の盛り上がり方は尋常でなかった。

 なぜなら、この模擬戦おける総大将――今年、卒業する学生の上位二名――はとても学園内で有名だったのだ。


 片方は建国伝説に出てきた大富豪の末裔であり、未だに皇帝から寵が厚いホイットニー公爵家の嫡男、ルドルフ・ホイットニー。

 彼の実家は魔力を持たないはずの家柄で、彼も本来ならば魔力を持たないはずであった。

 しかし、なぜか生まれつき持っている魔力が膨大で、この学園の中でも特に魔術の使用に特化した魔術科において優秀な生徒だった。そのため、学園全体において彼の名前を知らない者はいなかった。


 そして、もう一人。彼の幼馴染でもあるが、それ以上にこの学園ではライバルといわれている少女、ヒルダ・ミレナレック子爵令嬢。

 彼女は座学では常にトップの成績を誇り、総合成績でも常に学年で三位という立場を守ってきた。

 そのため、男子生徒が多い魔術科でも目立つ存在であり、ほかの専攻科の学生のみならず、後輩からも注目を浴びていた。


 そして、なによりこの二人は別の方面でも有名だった。


 そう、彼らの間にはすでに婚約しているという噂も流れているのだ。

 その噂に二人は肯定も否定もしておらず、大方の学生の間では、この模擬戦の後にでも婚約が公にされるのではないかと言われていた。







 そんな模擬戦の観覧席は満席に近い状態だった。

 いつもならば通常授業があるはずの下級生たちも今年に限っては、授業は取りやめになって、この模擬戦の観覧を実地研修とする講義もあった。






 競技場。観客席にて


「ねえ、アレクシーったら」






 アレクシー――アレックス・ムーブメント――の友人であるフレディは彼女の肩を揺らしながら呼んだ。


「――――あ、ごめん。つい見入っちゃった」


 アレックスは肩で切りそろえられた髪をなびかせながら、友人の方へ振り向いた。


「ま、そうよねぇ」

 友人であるフレディ・マルディナはクスリと笑いながら、彼女を許した。


「なんて言っても、今年はあの(・・)ルドルフ様とヒルダ様が卒業されるんですものねぇ」


 フレディは自身の明るいベージュの巻き髪をいじりながらそう言った。






 四年制であるセレヴィック学園は貴賤問わず入園できる。

 しかし、魔力を持っているものしか入ることは許されず、たとえ名門であっても、魔力を持っていないものは入園することはできない。


 大富豪の末裔であるホイットニー家は、魔力や魔術がものをいう『帝国』内において、その血が魔力を持たずともきちんとした執務能力さえ持っていれば、皇帝に重宝される、という特殊な血筋である。その影響か、歴代の当主は魔術師の血を入れることを良しとせず、魔術師のものと婚姻関係を結ぶ場合は、たとえ男子であろうとも必ず外に出ることになっていた。

 魔力は血によって決まっており、魔術師の血をひいていない限り魔力を持つ子供を産むことはない。しかし、そんなホイットニー家に19年前に誕生した跡取り息子は並外れた魔力を持っていた。


 それがルドルフだ。


 そして、そのルドルフと幼馴染でありライバルであると有名なのが、ヒルダ・ミレナレック子爵令嬢だった。

 彼女の実家―――ミレナディック子爵家は地位や魔力こそ劣っているが、彼女やミレナディック子爵家の持つ知識量は半端ではなく、帝立博物館や帝立図書館の蔵書量に匹敵する、と言われている。そのため、ホイットニー家としてもよだれが出るほど欲しい(・・・)人物だった。もちろん、ルドルフが公爵位を継ぐか、ヒルダ嬢をとるかはまだ決まっていないものの、なぜか二人の間にはすでに婚約が成立しているといううわさもあった。


 その二人が今、学園の集大成をかけて争う。

 アレクシーやフレディを含めたすべての人が、この模擬戦を、かたずをのんで見守っていた。

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