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時の魔術師に永遠の幸せを  作者: 鶯埜 餡
復讐と喪失
15/28

査問会(中編)

 査問会が開かれたのは通常、少人数での講義を行う場所だった。

 そこに侍女の格好をしたヒルダとともに入ると、すでに審議担当の教授たち――――ジルベルト教授(・・・・・・・)も含んでいた―――はそろっており、理事長のイジドアも中央の席に座っていた。どうやら、ヒルダはジルベルト教授以外の教授や理事長には単なる侍女としてしか見られなかったらしく、多少、眉はひそめられたものの、何も言われることはなかった。

「遅くなって申し訳ありません」

 ルドルフは一礼して、その部屋の中央に向かった。当然、招集状に書かれていた時間通りには来ていた。しかし、すでに教授や理事長がそろっていることからあくまでも事務的に『遅くなって』といったのだ。

 彼の姿を見て、ほとんどのものは困惑していた。通常、査問会に招集された学生はセレヴィック学園の制服を着用するという習わしがある。しかし、ルドルフはそれよりも貴族社会での身分を優先させたのだ。それに、普通はいくら貴族といえども侍女(・・)を査問会に連れてくる学生はいない。その姿に理事長は不愉快そうな顔をし、ジルベルト教授は理事長から見えないところでにやにやと笑っていた。

「―――――――早く座れ」

 しばらく黙っていた理事長だが、これ以上黙っていると彼の分が悪くなると踏んだのだろう、ルドルフに対して命じた。もちろん、査問会の中心はルドルフであるので、ヒルダは気配をそっと消し、部屋の隅に立った。


「これから、ルドルフ・ホイットニーに対する査問会の開催を宣言する」

 イジドア理事長は威圧的にそういった。どうやら本人は『いくら公爵家の子供だろうが容赦はしない』という意思があるみたいだが、はっきり言ってルドルフやジルベルト教授、ヒルダには通用していなかった。

 そんな各人の思いなど露知らないイジドア理事長は、

「お前はここに呼ばれたのは、公務と称してこの学園における責務を放棄し、当初の目的以外のことをしたことについてだ」

 と言った。確かに、ルドルフは公爵嫡子ならではの仕事があり、それに伴って学園の講義を休んだりすることもある。そして、その仕事のついでにほかの仕事もこなしているだけなのだが、どうやらそれを『目的外』とみなされたらしい。

「それについては、後日、報告書を提出する際に大まかに記載しておりますが」

 ルドルフはそう返した。しかし、それに対しても理事長は、

「ならば、今回の外出届についてはどうなんだ。目的には『貴族院への出席と公爵家業務』と書かれていたが、()は貴族院は開かれるはずはないと聞いたぞ」

 と言った。確かに今回は目的が目的だったため、あまり公にはできないため、かなりはぐらかした書き方になり、あまり自分でもどのように書いたか覚えていなかった―――――そもそも、本人宛の届け出にかけるわけがないのだが。しかし、貴族院への参加と書いた自分は迂闊だったと後悔したルドルフだった。しかし、彼にとって、聞き逃せないことが一つあった。なぜ、このタイミングで貴族院が開かれるはずがないことを知っているのか。

「それについては申し訳ありませんでした。火急の用事があったため、つい癖であのように書いてしまいました」

 一度は殊勝に謝ったルドルフ。しかし、謝った時――――頭を下げた時に、理事長がにやりと笑ったのが見えた。

「しかしながら、理事長」

 ルドルフは頭を上げて、そう笑いながら言った。まさか、彼にそのように反論されると思っていなかった理事長は非常に不機嫌さを隠さなかった。

「なんだ」

「どうして理事長は、このタイミングで貴族院が開かれるはずがないことをご存じなのですか?」

 ルドルフの問いに理事長は一瞬、何を言っているんだこいつ、という表情になったが、

「それはある貴族に聞いたからだ」

 という、かなり差しさわりのない答えを言った。その答えが嘘であるとルドルフには分かった。なぜなら、それを知っているのは、貴族院の開催決定権がある皇帝と皇太子、貴族の中でも唯一、参加する義務(・・)があるホイットニー家の当主である父親と嫡子であり魔術師(見習い)である彼のみ。皇帝と皇太子は論外としても、自分が迂闊にこの学園内で漏らすはずがない。そして、ルドルフの父親はこの理事長とはある事件に関する後始末で犬猿の仲になった。よっぽどのことがない限りは二人とも連絡とることをさえしないだろう。

 そう思ったら、残された可能性は一つしかない。


「それはおかしいですよね」


 ルドルフは笑った。しかし、ヒルダやアレックスに向ける笑みとは違い、非常に黒い笑みだった。早々にだんまりを決め込んでいたジルベルト教授でさえ、身震いしていた。

「何がだ」

 しかし、ジルベルト教授の様子にさえ気づいていない理事長は、あくまでもしらを切ろうとした。

「あなたが知っているということがおかしいんですよ」

 その言葉にようやく理事長は気づいたらしく、はっとなった。しかし、時はすでに遅く、ルドルフは鉄槌を振り下ろそうとしていた。

ネタはあるのに、寒すぎて書けない…

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