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月華の姫将軍  作者: 久永 雅貴
21/61

act.21 疑念とないものねだり

本日3話目です。

「……なぜ貴様が『アイツ』の存在を知っている」


 俯くソレイユがフリューゲルに問う──いや、その口調は強制的な尋問に近い。

 フリューゲルを捉える双眸も鋭い。


(『アイツ』の存在は極秘だ。近衛の副隊長が知っていていいことではない)


 事実を突き付けられた時は罪悪感が先立ったが、自分の感情よりも優先すべき事柄を見つけたソレイユに一切揺らぎはない。

 場合によっては機密事項の漏洩に繋がるだけに放置できない。


「貴様は何者だ」


 睨みつけてくる鋭い視線に、フリューゲルが肩を竦めた。


「元気になられたようで何より何より。……そんなに見つめないでくださいよ」


 おどけてみせるフリューゲルに、ソレイユの視線が鋭さを増す。

 冗談も通じないのを見てとり、フリューゲルがため息をつく。


「俺の素性なんて、初めから隠してないですってェ。そのくらい自分で調べてくださいよ」


 呆れ顔で告げるも、ソレイユの視線は正面から受け止める。


「「…………」」


 互いに譲らない時が過ぎる。


「……まあいい」


 先に目をそらしたのはソレイユだった。


「おや、随分とお早い諦めで」


 茶化して来るフリューゲルに一瞥をくれて、ソレイユもソファーに身体を沈める。


「貴様の言うとおり、調べれば済むことだ」


 徐々に普段の調子を取り戻してきたソレイユに、フリューゲルは内心でほくそ笑んだ。


「まぁ、俺の素性はともかく、情報源くらいはお教えしてもいいですけどねェ」

「誰だ」


 勿体振るフリューゲルと、即座に食いつくソレイユ。

 調べずとももらえる情報は即入手ということのようだ。無論、事後確認もするが。


「総帥閣下」


 フリューゲルが答えると、ソレイユが眉をひそめた。


「……シャール総帥が、なぜ貴様に情報を流す」

「その辺はご自分で調べてくださいよ」


 のらりとかわされる。

 確かに軍の最高責任者で、皇帝の近衛兼相談役をしているシャール・リエラ・マーベラスなら、『彼』を知っているのも道理だ。


(その辺りも調べるしかないな)


 無理に聞き出そうとしても、フリューゲル相手では、うまく情報は引き出せないだろう。


(適当にあしらわれるだけだ)


「……さぁ、仕事の話は、ここまでにしてェ」


 フリューゲルが話の打ち切りを宣言をする。


「話を戻して、野郎二人で恋ばなと洒落込みますかぁ」

「…………言っていて虚しくないのか」


 渋面で愚痴るソレイユ。

 大仰に頷くフリューゲル。


「虚しいですとも。──ただ、今必要なのは、これからあの二人とどう接していくか、でしょう?」

「…………」


 フリューゲルの指摘をソレイユは否定できない。


(エクラレーヌはともかく、リュンヌは俺が会うのを拒んでいることに気づいただろうからな)


 エクラレーヌとの接し方は悩むほどでもない。今までと変わらなければ、悪化することもない。


(……例え『アイツ』のことがあるとしても)


 問題は、リュンヌとの接し方だ。あれのことだから、ソレイユの想いを見越して、心底案じながら、エクラレーヌと距離を置くことばかり考えているだろう。


(俺は、リュンヌを縛るために、ともにありたいと願っているわけではないというのに)


 いつまで経っても、あの頑固者は自身を顧みない。


「──いい加減、わからせないとな」

「あ。自己完結しましたぁ? よかったですねェ」


 ソレイユが決心を口にすると、向かいから気のない声があがった。

 ソファーの肘置きに頭を乗せて横になって寛いでいるフリューゲルがいた。


「…………」


 あまりな寛ぎ様に、ソレイユの眉間に皴が寄る。


「……野郎二人で恋ばなと洒落込むのではなかったのか」


 不機嫌な低い声で指摘すると、フリューゲルが緩慢に手を振った。


「嫌ですねェ。そんなめんどくてキモいこと、俺がするわけないじゃないですかぁ」

「…………」


 同意見だが、フリューゲルに言われると、無性に腹が立つのはなぜだろう。眉間に皴がまた増える。

 ソファーで寛いだまま、フリューゲルが嘲るような笑みを口端に乗せる。


「さて、ないものねだりがお好きな我が儘殿下が自分で納得したなら────来ますねェ」

「! おいっ」


 さらに聞き捨てならないものが聴こえ、ソレイユが問い詰めようと声を上げた時──


 ──バンッ!!


「「殿下っっっ!!」」


 勢いよく扉が開き、エクラレーヌとリュンヌがなだれ込むように入ってきた。

 大概息など切らさない二人が、ソレイユの顔を見るなり、肩を上下させ、無理矢理息を整えようとする。

 凄い勢いに面食らうソレイユ。

 横になったままのフリューゲルはさらに口端を上げ、ソレイユにだけ聞こえるように話す。


「──ほら、二人はあんたが大切で大切で仕方がないってのに、あんたはもっと欲しがってる」


(……コイツに言われるのは癪だが、確かにその通りだ)


 必死な二人を見て、安堵する自分がいた。



内容について、ひと言。

ソレイユは欲張りやさん。


ブックマークありがとうございます<(_ _*)>

とっても嬉しく、励みにさせていただいております。

感想などもよろしければ、お願いいたします<(_ _*)>

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