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「私は王子を一度たりとも好きになったことはありませんもの。」
扇でパシンと軽くカールバンの手を打ち
「茶番に付き合わされるのはごめんですの。帰っていいかしら?」
たしなめたつもりが逆上しましたよ?
「っ。」
私の手はカールバンによって捻られます。
今度は止める間もなくソーヤが剥き身の剣をカールバンの首元に突き付け
「フィリア様の手を離せ。」
冷淡に殺気を放つ。
カールバンは不敵に笑い、
「学内での帯剣は禁止されている。お前の主が言った通りにな。従者風情が意気がるな。」
鼻で笑い、私を掴む手に更に力を加える。
「んっ。」
悲鳴なんてあげませんよ。
敵に弱味を見せるのは嫌いです。
そこ!ルチェル、期待に満ちた眼差しで見ないでもらえます?
冷や汗はさっきからかいてますわよ。
痩せ我慢してますからね。
続いてカールバンの私的な兵がソーヤの四方に
展開する。
途端
「‼︎‼︎⁇」
ホール内に尋常ならざるソーヤの殺気が放たれました。
全開ですね!容赦がない…。
震えがくる程の本気の殺気を漲らせる。
戦場に赴いた事のない者には到底、真似出来ない
残酷なまでの圧倒的な差があるのでしょうね。
カールバンの力が弛み、私兵が動けないでいる最中
優しげな手が私を包み込み、癒しの治療を施す。
「は?」