34.ルチェル、盤石である為に
あれから、私はあっという間にレイダール侯爵家を紹介され、そこの養女として収まったわ。
男爵今の義父には、もう用はないわ。
私が王妃になって、集られたら困るもの。
義父は私を溺愛しているけれど、内実は借金だらけで領地経営も上手くいっていない。
権力欲の高い親族を黙らす事さえ出来ない。
王城の一室に用意された私の部屋には、呼んだ覚えもない伯父の姿。
目尻が下がり、一生懸命に小娘に下手に出てる。
『身元も分からない下賤な小娘に兄は騙されている‼︎
私は騙されないぞ。お前からは厠の臭いがする』
言われた言葉は忘れないわよ。
私、執念深いから。
男爵家だって順風満帆だったわけじゃない。
邪魔な親族だらけだった。
消す?
必要の無くなったお父様ごと?
甘ちゃん王子にも影はいる。
王子は私の言う事は全て聞いてくれる。
でも、王様にも知られる……か。
上手くやらないとね?
フィリアを堕として、高見の見物するんだし。
私は伯父に心にもない笑顔を返す。
「私がここまで来れましたのも、父上、引いては親族の方々のお陰ですわ。勿論、分かっておりますわ。伯父様にお世話になった事、ちゃんと王子にお伝えするわ。安心なさって。」
ね?追い返すのも造作もないの。
望む言葉を確信無しに伝えれば相手は満足するんだもの。
ただ、増長して手に負えなくてもマズいからやっぱりお父様には……。
謀に頭を巡らせながら、香り高い紅茶を飲む。
茶葉まで高級。当たり前だけど焼き菓子も最高級。
口の中でほろほろと解ける楕円形のクッキーを咀嚼する。
控えのメイドに目を遣り、次の来客の訪問は断る。
「ルチェル様、孤児院への表敬訪問は如何致しましょうか」
メイド長が口を開く。
私が話してもいいて、許可もしてないのに、生意気なおばさんね。腹立たしいけれど笑顔で答える。
「行くわ。私、子供達が大好きよ。皆、砂糖菓子は好きかしら? リザ、包んでくれるかしら。私はもうお腹いっぱいなの 」
子供達なんて大嫌い。
生きる為に切羽詰まってるんですもの。なのに、砂糖菓子は無いわね。お腹に溜まるものが良いのでしょうね。でも、あげない。私だっていつも空腹で死にかけてたわ。そんな簡単に甘やかすなんていけない事よ。
だから、甘ったるい焼け付く様にお砂糖を塗したお菓子をあげるわ。




