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30.祭司長の葛藤


「配流の塔に3ケ月もの間、禁錮だと⁉︎ 」


巫女として上り詰めた彼女への仕打ちーー。

彼女程、この国を真に思う者はいないと言うのに。


彼女の笑顔がよぎり、矜持を思うと望まれなくとも権力ちからを使い助け出したくなる。


だが、望まないのが彼女だとも分かっている。


「3ケ月…」

「無理てもんですよ、リディード様」


優秀な側近でもあるラズが溜息を吐きながら、私の言葉を遮る。


「そもそもドルセンへ向かう予定はなかったんですよ。いくら何でも長居しすぎです。禁錮3ケ月程度ではあの公爵令嬢は折れないでしょう。それに、ここにはソーヤがいます」


「だから、私に安心だとでも言いたいのか⁉︎ 」


普段、声を荒げない私を見ているカヤはびくっと身体を揺らし視線を彷徨わせる。


「落ち着いて」

「落ち着けるかっ‼︎ 彼女の禁錮は私の馬車に乗ったからだろう。私のせいでもある 」


「リディード様、そんなのは建て前だとお分かりでしょうに…」


この国を蝕まんとする悪意ーー。


憎悪。王宮に蔓延る怨嗟。

陰りをみせる王朝。


沈みかかるふねに彼女を置く謂れはないのではないか。


「リディード様、また何か良からぬ事をお考えでは…」


「煩いぞ、ラズ。明朝、彼女に面会する。王に伝えろ」


「っ。はい、はい。俺は知りませんからね。お伝えはしますが…望まれていない事ですよ」


側近のラズは臆する事無く、己の心情を訴える。


ルードである私が元とはいえ、一巫女に肩入れしすぎか?

自嘲をしても、譲れない。


手離すのでは、なかったーー。

あの時の決断は間違っていなかったのだと、思うのに悔やまれる。


フィリア。君の聖性はまだ失われてはいないんだよ。

君が望まないにしてもーー。


私はらしくもなく、側近であるカヤも目に入らず深い思考のおりに耽った。


走り出した歯車は誰にも止められないのだ。


ドルセンの若き王子、アランド・フリー・ドルセン。君に彼女は似合わない。

私の宝なんだ。渡せないよ。



この国がいらないと言うなら、私の元に彼女は返してもらうよ。





………………………


sideラズ


絢爛豪華な廊下を渡り、ラズは赤茶けた己の髪を搔き上げる。護衛ならではの鍛えあげた筋肉に日焼けた肌、やや下がり気味な瞳の色は碧。


すれ違う王宮内の人間が振り返りラズを捉える。

すっかり慣れた視線に戸惑う事無く、颯爽と足早に王の間へ歩みを進める。


急ぎながらラズはひとりごちる



勘弁して下さいよ、リディード様。

あまり、あの娘には構わないでもらいたい。

聖性があれど、もう巫女ではないのですよ。


そして、カヤが不安定になるじゃないですか。

血族を喪ったカヤは祭司長ルードに拠り所を求めている。


公爵令嬢は一人でも立てられます。

ましてや軍神ソーヤが付いているんですよ。


ああ、本当にリディード様は、甘すぎる。

普段は全くもって無理は通されないと言うのに。






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