28.招聘⁉︎ 受けて立ちましてよ Ⅲ
審問官が襟を正され、私の前に進み出て厳かに口を開かれます。
「フィルトーレ・ダリアース・リトレイア公爵令嬢。只今より、この場にて話される事に嘘偽りはないと誓われるか」
「誓います」
「聖リュファス祭にて、王子は貴女に婚約破棄宣言をされた」
「その通りですわ」
「それを不満に思われた貴女は、隣国の祭司長の言祝ぎを敢えて中断されたと」
「中断は致しました」
どよめきに揺れる聴衆の貴族達。確かに不敬なのは分かっているわ。
「ですが、誓詞は真なる言葉。それが隣国の祭司長様の詞であれば理はとても強く一章一節でも強い制約が掛かります。祭司長様は更に言祝がれましたわ。王子は王族なれば耐えられた。ですがルチェル様はー」
「ルチェルを愚弄する事、許さぬ ‼︎ 」
壇上から王子に射られる様に睨まれます。
ルチェル様は瞳に涙を湛え
「私が下賤な身の上だと…おっしゃりたいの?」
消え入りそうな、ただ凛とした声音で仰りましたわ。
「いえ、違いますわ。王子との親和性で耐えられたみたいですわ。ただ、あれ以上の言祝ぎは必要ないものですわ。重誓約は時として命を掛けねばなりません」
私が巫女として隣国に行っていた事はこの国の重鎮の貴族なら知っている事。
何人かの方は納得された様に見えましたわ。
「命なら掛けましたわ ‼︎ 私の命が王子と愛する事の代償だと言うのなら、私は迷う事なく私の命を捧げます」
可憐な声が再び場に響き渡ります。
「ルチェル様は王子を愛していらっしゃるのですね」
私の心の中に暖かさが降り積もり、自然と笑顔になります。
これなら、重誓約も大丈夫そうだと。
祭司長様もお二人の絆を見出されて、重誓約したのかもしれないわね。
「っバカにしないで ‼︎ 」
ルチェル様の悲鳴の様な声に引き戻され、壇上の王子は強い眼差しで射抜き
「フィルトーレ・ダリアース・リトレイア」
「何でしょうか」
「お前は私と対等ではない」
「存じておりますわ」
「そして、ルチェルは王も認める私の妃だ 」
披露もまだなのに王子の爆弾発言に場内はざわつき始めます。
「ルチェルにお前は傅く身だ。対等では勿論ないし、
下に見る事が最上級の不敬だと、なぜ気づかぬ⁉︎」
激昂される王子に場は再び静まります。




