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25.私、やってしまいましたか ⁉︎ Ⅱ

「祭司長様が生涯を掛けて一度、出されるか出されないかの最上位版誓約……アムス・ダルト 」


嘘。ーー嘘でしょう。

涙は瞬き多めで散らします。

まだ、信じていませんからね。


「本当の本当に? 」


念を押し、青褪める私にソーヤの無言の肯定。


「っ。でも、身体のどこにも刻印はないわよ? 」


リナに着せてもらった時に全身を鏡で見ています。

何も言われなかったわ。


「それでもです 」


言い切られてしまいましたが、内容は大事ではありません。むしろ、私事のーー。


「ーーただ、無理強いでもなく、会話の流れで誓われたのよ。私の嫌がる事はしないと 」


足掻きますよ。


冷たい瞳に絡まれます。


ソーヤの双眸がしかめられます。


「嫌がる事をされたのですか 」


「‼︎ 」


「話して下さい。前後を知らねば、守れない 」


「…… 」


「……ソーヤはずるいわ。そんな事、言われたら話さなくてはいけない気になるじゃない 」


「気ではなく、話して下さい。私は貴女を守る為にここにいる 」


「フィリア様 」


子供の頃から、側に居てくれている人に話すのは

恥ずかしいものがあるんです。

でも、事が事ですし逃げ切れそうにもないので、観念して話し出すことにしました。


「馬車に乗って……あ、本当は降りようと思ったのよ。自国の王より位の高い祭司長様と一緒にお乗りするには、私の立場では不敬だと思ったもの。王の不興も買いたくなかったし。今の私の立場は微妙よね、王子から婚約破棄されて。された時には自由を手に入れられる‼︎ と、心が逸ったけど。お父様はどう動かれるかしら 」


「続きを 」


促されます。


「……膝枕をされてしまいました 」


ソーヤの顔を見ずにうつむき加減で話します。


「私が、王子との幼少時を思い出して、感慨深くなっちゃって、破棄が悲しいとかじゃないんだけど、寂しくなってしまって涙が出たわ。祭司長様は拭って下さったのだけど、お怒りになって 」


やだ、鼻がツンとしてきました。


「冷たい接吻キスをされて、ショックだったの。想いはなくとも、王家を思い王子を思い努力はしてきたつもり。でも、届かずいらないと言われ、優しくして下さった祭司長様からは罰する為だけの様に口付けをされて……私は…… 」


矜持も何もなく、涙が溢れ流れます。

弱く、弱くなってますね、私。

感情が自分の物ではないようです。


「その後は抱き起こされて、謝られました 」


「それで、許したのですか 」


怒りを押し殺した低い声が耳朶じだを打ちます。


「許す。とは伝えてないわ 」


ソーヤを見つめます。

嘘は許さないと、断罪するかの如く清廉で凄烈な水色の瞳を勇気を持って見返しました。


「心情的には許されているんですね 」


淡々と返されます。

呆れられたかしら。


「真摯に謝られました。少なくとも、感情がこもっていた 」


怒りは持続しないのよ。

悲しみは持続するけど。

許す許さないもーー。


「甘い方だ 」


「っ。辛辣ね 」


ちょっと涙が引っ込んだわ。

優しくないわ、全然。


「『君の事は私が守るから許してほしい。もう二度とこんな扱いはしないと誓う』と言われ、加護を受けたわ。馬車の中では以上よ 」


冷たくて厳しいソーヤに開き直ってきましたわ、私も。


「アムス・ダルトをされてしまったのは驚いたけれど、無理強いされないのよ? 」


まだ心臓はドキドキしているわ。

祭司長様は宣誓されなくても、誓いを口に出されるだけでリュファスが聞き届けられるのね。

知らなかったわ。


「本当にフィリア様は隙だらけですね 」


ぐっ。言い返せないわ。


「人を信じる甘い方でも良いですが、先を読めない

馬鹿にならないで下さい 」


深々と溜息を吐かれます。


「馬鹿ですって⁉︎ 」


「起こってしまった事は仕方がないでしょう 」


スルーされてしまいました。

涙は完全に止まりましたよ。

きつい従者のお陰で。

そこは、お礼を言うべきかしら?


「フィリア様 」


「何? 」


憮然と答えます。

少し投げ遣りなのは、私のせいでは無いはず。


「フィリア様に王より高等審問の場にて招聘しょうへいされています 」


は⁉︎



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