24.私、やってしまいましたか ⁉︎
ソーヤの言葉が反芻します。
私の動揺は手に持つティーカップに振動となって伝わりましたが、割らなかったのは褒めて下さいね。
お母様と対で購入したもの。片方だけになったら悲しむわ。
じゃなくて ‼︎
「ソーヤ、する訳ないじゃない ‼︎ 」
私の声は悲鳴になっていました。
だってある訳ないんです。
私は巫女でした。
だからこそ、ですよ?
リュファス・ダルトの誓いの重さは知っています。
「私は宣誓してないわ 」
見縊らないでちょうだい。
ソーヤの透き通る様で深い色合いの瞳を毅然と見返します。
「フィリア様ではありません。祭司長の誓いを受けられた 」
祭司長様の誓い?
「そんな事…… 」
「馬車の中で何があったか、思い出されて下さい 」
真剣味を帯びた声に誘導され、つい昨日の出来事に想いを馳せます。
ーーいきなり膝枕をされたかと思えば……
怒りにまかせての……
ごくっ。
ソーヤは、知らない事よね。
泣いた私を、祭司長様は優しく膝抱きされて、甘やかに言われましたわ。
『フィルトーレ・ダリアース・リトレイア。君の事は私が守るから許してほしい。』
頬が少し熱くなります。
後悔の念も含んだ声音でしたが、思わず許してしまいたくなる位には真摯な想いは伝わりました。
『もう二度とこんな扱いはしないと誓うーーーー』
ーーーーーーえ?
嘘でしょう……。
あ、あれ ⁉︎
何度も瞬きをし、情景と交わした言葉を飲み込みます。
「ソーヤ…… 」
私の声のなんとか細いことでしょう。
「思い当たるのは一度だけ。ただ、会話の中の事よ 」
無言に促され、喘ぐ様に伝えます。
祭司長様は宣誓はしていない。
刻印も、一陣の風もなく車内は静寂に満ちていましたわ。誤解だったと、言ってちょうだい。
ソーヤは固く瞳を閉じ、容赦なく告げてくれました。
「一瞬、周りの景色が飛ぶ程、眩しくなり清浄な空気が辺りを包みました 」
祭司長様は結界遮断されていたのよね。
なのに馬車を突き抜けて?
嫌な予感しかしないわ。
まさか……ね。
「あれはリュファス・ダルトの最上位版、星の誓いアムス・ダルトです 」
「ーーーーっ ‼︎」
陶磁器が砕け散ります。
「っ嘘、でしょう?」
やだ……両目から水が、じゃなくて涙が ‼︎




