23.束の間の休息
螺旋階段を降りると、迎えのソーヤが礼服を着ていました。
「なぜ、礼服なの ? 」
「隣国の祭司と話していたので。」
は ⁉︎
「フィリア様にはお話したい事もありますので、白金の間にご用意しています。あぁ、リナはここまでで大丈夫ですよ。」
「はぁ〜っ ⁉︎ 昼食の時間も独占ですか ⁉︎ そろそろお嬢様離れされてはどうですか。私、お手伝いしますよ ソーヤ様 」
リナ……笑顔が恐くてよ。
小柄なリナが長身のソーヤに対して怒っている様は、まるで子犬や小動物が威勢よく言ってるみたいで和むわ、微笑ましい。
ささくれ立った心が丸くなるて言うのかしら。
「フィリア様、恍惚とした表情やめてもらえますか 。リナ 」
「なっ何ですか ⁉︎ 負けませんが ‼︎ 私のお嬢様への愛はソーヤ様の想いよりルキタ海溝より深いですが ‼︎ 」
世界三大海溝の一つね。
ソーヤは無表情なだけで、何もしてないわよ。
圧も出してないし、ただ黙って見下ろしてるだけなんだけど……リナは、ぷるぷる震えているわね。
「…………ん 」
リナが小さく呟いたわ。
「リーー」
「無表情仮面に譲ってあげますよ ‼︎ そんなに恐い顔しなくていいじゃないですかぁ‼︎ 弱い者いじめは反対ですっお嬢様、後でお庭案内しますからね!そこからは私と二人だけの癒しの時間なんだからぁ〜〜 ‼︎ 」
一息で言いきって、走り去り際の涙目の捨て台詞とか
可愛いすぎてよ、リナ。
「フィリア様、頬が緩みきってますよ 」
「っ。朝から失礼なんじゃない、ソーヤ?」
「もうお昼です。こちらへ 」
昨日の優しいソーヤは幻だったのね。
そうに違いないわ。
先を進むソーヤは、立て襟の付いた瞳と同じ水色に銀糸の縫い取りが細やかに施された品のあるサーコートに身を包んでいます。
地の生地にも光沢があり派手になりすぎず落ち着いた雰囲気がよく似合ってる。
ドルセニスの意匠とは違う、どこで仕立てたのかしら。
私達は陽の光を取り入れる為の窓が点在する長い廊下を突き当たりまで進み、リトレイア家のプライベート空間に着いたわ。
隠された庭にそのまま面しているから、季節毎に咲き乱れる花々を愛でながらソファに横たわって読書するのが好きだったのよね。
怒られたけど。
白壁と金に彩飾された一息つける、懐かしい場所。
自然と私の顔も綻びます。
ソーヤは慣れた手つきで紅茶を淹れてくれます。
「隣国の珍しい茶葉です。香りも良い 」
「美味しい。どうしたの?」
「祭司長から頂きました 」
「っ。」
落ち着くのよ、私。
ソーヤの前では動揺しなくてよ。
「そ、そう。」
もうっ、味が分からなくなってきたわ。
「フィリア様 」
「どうしたの? 」
平静を装いますよ。いや、バレてるかもしれませんが。
ソーヤは怖い位、真剣な瞳で私を見据えます。
何でしょう。
「なぜ、馬車の中で祭司長と誓約をされたのですか 」
「 ⁉︎ 」
ーーーーあり得ないわ ‼︎




