21.深夜、夢の最中に目覚めましたわ Ⅱ
「貴女が気に病むことは、何もありません。夢の中の出来事です。忘れてしまいなさい。」
どきっとする様な優しい声音で、囁かれます。
夢ーー。
「現実じゃ、ない ? 」
「ええ。巧妙に夢と現実が混ざっています。」
「断言されると、そうじゃないかと思えてくるわ。」
ソーヤは屈んで視線を私に合わせると、長い手指を私のおでこに沿わせます。
「貴女は、昔から熱を出すと子供返りされる。」
笑顔で言われました。
「っ。」
「熱は下がられましたね。少し冷えられているか。」
暖かな夜着を被せられます。
「着替えた方が良いかもしれませんがーー。」
言葉を切って、熱に濡れていた黄金色の髪がソーヤの手で柔らかく解されます。
されるがままに、その手付きを見続ける私に
「弱られている貴女を見せたくないので、リナは呼びません。」
労わり、幼子をあやすみたいに、頭を撫でられます。
「眠るといいーー。もう、魘される事はない。」
ソーヤの言葉が耳朶を打ちます。
子供じゃありませんが、こんな至れり尽くせりのソーヤは初めてなので寝ます。
仄かに、真空色の光を
閉じかけた瞼の先に、感じます。
加護みたいにーー温かいそれは
私に降り積もる。
混濁した想いを
酩酊した意識を
真綿に包む様に。
何で……ソーヤは、私にそんなに、優しい ?
凝ったものが、溶けていく開放感を身体で感じて
ソーヤが紡いだ真実を私は聞く事が出来ませんでした。




