19.巫女見習い当時のフィリア嬢
神気がだだ漏れの巫女見習いがいる。
聖職者の間で噂になっていた。
普通は、惜しむ様にあるかないかの具合で光らすが
取り敢えず何をするでも彼女は全力で祈るのだ。
あ〜早くなくなって還俗出来ないかな ? がフィリアのそれ以上でもそれ以下でもない、まごう事なき本心である。
噂が大きくなり、見過ごす事は出来ないと、ある人物達が彼女を見に来た。
「あの娘か。」
リディードとソーヤとカヤに見られている事など知らず フィルトーレ嬢は
「あ〜〜疲れたっ ‼︎ 早くお家帰りたいなぁ〜あ〜良い天気! 日光浴しないと‼︎ 」
そう言い、芝生の上にう〜んと、伸びをしながら横たわる。
「神様、リュファス様、良い天気にして下さってありがとうございます。」
祈る。
「芝生も良い状態だし、これからも頑張ってね! お休みぃ〜。」
寝た。
すやすや寝息を立てながら、奥神殿にある一角で気持ち良さそうに眠る幼女。
厳粛な本神殿に於いて、違和感は禁じ得ない。
だが、彼女の周りは途絶えることなく聖なる光が舞っていた。
隣国ドルセニスのリトレイア公爵家令嬢
フィルトーレ・ダリアース・リトレイア。
規格外だ。
黄金色の奥ゆかしい腰までのストレートヘア。
瞳は明け方の冬の空。
藍色の空に走る黄光道。
まるで暁の明星が現れる神秘的な美しさを兼ね備えていた。
だが、言葉は荒い。
祈りも荒い。
聖性は一際強い。
物心付くと、儚く霧散してしまう加護の力。
稀に成長しても、光の粒子を見に纏う事の出来る者もいる。
そうすると、還俗せず本神殿にて『聖女』と名乗り
一生をリュファスに仕える聖職者となる。
「まさか……な。」
リディードは独りごちる。
「っく。」
肩を大きく震わせ、一生懸命笑いを堪え様としているカヤ。
溜め息を吐き、仕方がないという風にソーヤは
「カヤ。彼女が、起きてしまいます。戻るまで我慢しなさい。」
冷たく言い放った。
リュファス・リュースに倣う部族長の息子で聖戦士の名を継ぎ、ソーヤの若い配下となったカヤは良くも悪くも取り繕う事をしない。
悪し様に言われる事もあったが、リディードもソーヤも飾らないカヤを特に好んでいた。
「彼女、面白すぎでしょう ‼︎‼︎ 」
カヤが目に涙を湛えて言う。
「あぁ可笑しい。」
「何れにせよ、このままでは……。」
言を紡ぐソーヤ。
「あぁ。フィルトーレ嬢を習いの神殿から本神殿へ。今日付けで巫女とする。」
リディードの采配。
習いの神殿から異例の早さでの本神殿、巫女への道。
フィリアの受難は続くのだ……どこまでも。




