14.王の選択 Ⅱ
ルチェルを下がらせ、わしはアランドと向き合う。
「何か言う事はないか。」
「はい、父上。早急にルチェルの披露を。」
それもせねばなるまい。
男爵なれば……侯爵の養女にして披露するか。
「そして父上、フィリアを至急、招聘して頂きたいのです。」
「招聘して、何とする?」
「フィリアの犯した罪を詳らかにし、断罪を。破棄は至極真っ当なものだと皆も理解するでしょう。」
わしはこの後に及んで、恐らく善良で何も落ち度がないであろう前婚約者フィルトーレ嬢を思う。
王家から申し出た事だ。
リトレイア公爵にも会わせる顔がないのだぞ。
それを言うに事欠いて断罪だと⁉︎
既に学院内で破棄を言い渡し、フィルトーレ嬢の未来を潰したと言えるのにだ。
我が息子ながら、本格的に育て方を間違えたのかもしれぬ。
教育係は何をしておったのだ……。
聡明である筈の王子は、自らの正当性を疑いはしない。
「父上がルチェルを下がらせてくれて助かりました。ルチェルは優しすぎるのです。きっとされた事も忘れてフィリアを庇うでしょう。」
わしは無言で先を促す。
「第一にフィリアは神聖なる私とルチェルの婚姻の誓約を途中で妨げたのです‼︎ あろうことか高位のルードとやらの言を遮って‼︎‼︎ 」
怒りも冷めやらぬ様だ……が。
フィルトーレ嬢には感謝をせねばなるまい。
ルードが何を為され様としたかは、わからぬが重制約は時に生命さえ脅かす。
わしはゴクリと生唾を飲み下す。
恐らく王子はルードの怒りを、買ったのだ。
綱渡り。であったに違いない。
薄氷を履むかの如く。
あの場でルードを止める事が出来たのは理を判じる元巫女であったフィルトーレ嬢だけであっただろう。
得体の知れぬ残酷な銀の麗人。
相対しただけで底知れぬ物を感じた。
あれは、良くない。
早々にお国にお帰り頂こう。
わしに敬意を払おうともしない側近共々な。




