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10.

「っ。すまない。君にひどい事をした。」

悔いる様な祭司長様の声。


いたわる様に抱き起こされます。


上背のある広い胸に優しく抱き込まれます。

私を膝の上に乗せて、甘く壊れ物を扱う様に髪の毛をくしけずられます。


「フィルトーレ・ダリアース・リトレイア。君の事は私が守るから許してほしい。もう二度とこんな扱いはしないと誓う。」


真摯な眼差しを受けて、心が動かされそうになります。


「私は君に対しては、自制を失ってしまう。」


震えた唇が恐る恐る、落とされます。


涙の上に。目元に。口元に。


温もりのあるそれには細かな粒子が纏い、仄かな

加護があるのでしょう。


心が、暖かく落ち着いてきます。


加護はそういう使い方もあるんでしょうか。


詐欺ではありませんか?

ずるく思います。


瞬きと共に溢れ落ちます。


泣きすぎて頭が朦朧としている私はなすがままでした。


優しく労わられるのは、嫌いではありません。


私はこんなにも弱かったのでしょうか。


……………。




「…リア。フィリア。起きて、フィリィー。」


「……?」


泣きながら眠ったからでしょうか。

瞼が重く、視界がぼやけます。


カチリとドアが開き、身動みじろぐ私を

「そのままでいいよ。」


「いいわけないでしょう。」


「降りて下さい。フィリア様。」


「私が良いと言っている。」


「こちらは、貴方の国ではありません。ましてはここは王宮敷地内です。王が婚約破棄を認めない限りフィリア様はまだアランド王子の婚約者のままです。」


「誓約は成された。」


「でもです。」


「フィリア様の名誉の為にもお願いします。」


「……。」


「ルード、貴方は出るべきではありませんでした。」


祭司長ルードの紫の双眸が細められる。


「フィリア様を、お離し下さい。」


「そして王への謁見はお一人でどうぞ。」


頑として譲らず、ソーヤが祭司長様の手から私を奪い、担ぎ…もとい横抱きにしてくれます。


以前ソーヤに担ぎ上げられた時に、肩がお腹に当たり苦しいと訴えたから改善してくれたのね。


取り留めもなく考えていると


「結界遮断までして、未婚の娘にする事ではありません。フィリア様は知恵熱の様です。寝かせます。」


知恵熱て‼︎‼︎

子供じゃないんだからっ‼︎

でも、熱くてふわふわ…する、かも。


熱を持った目が潤み出します。


「っ。」


祭司長様とソーヤが同時に頬を赤くし目を逸らします。


「?。ソーヤ…私…。」

ぽんぽんと優しく背中を叩かれます。

「大丈夫ですよ。フィリア様は責任を持って私が持ち帰りますから。」

ソーヤのぽんぽんは懐かしいわ。

「安心してお休み下さい。」

「ん。」


意識が遠のきました。



「自覚して下さい。貴方は破壊力がありすぎるんです。」


氷点下のソーヤの水湖の瞳が、ルードを捉える。


「フィリア様は良くも悪くも純粋培養で育ちました。」


熱を抜き去った

冷たい2人の視線が交わる。


無言のままソーヤは、一礼をして立ち去る。


残されたルードは溜め息を吐きながら

「過保護な事だ。氷の司祭がよく言う。」

誰に聞かれるでもなく呟き、王城へ向かった。


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