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NOAH -ノア-  作者: 孝乃 (編集中)
第1章『現実世界にて』
9/26

Lood..007 始まる終わり(4)

 夏輝(なつき)の言葉に、室内が一気にザワつく。



「この『Network(ネットワーク) of(オブ) Adventure(アドベンチャー) Hall(ホール)』は、クエスト進行型のRPG。1クエストにつき、クリアや失敗だったとしても自動的に拠点の町『トーキョウ』に戻るシステム。だが回線が切れた今、それも機能していない可能性が高い」

「えっ、じゃあダンジョンクエストに出ていたユーザーは…?」

「クリアしたとしても、『トーキョウ』に戻れずダンジョンに取り残される…エネミーだらけのエリアに」

「しかもっスよ。そのクリアデータは反映されない。いくら敵を倒してもレベルだって上がらない…回線が切れてますからね」

「そんな…それじゃあ裏面データなんて意味無いじゃないのよ!」

「だから出番なんスよ、β(ベータ)テスターのお3方」



そう言う(ひろ)は、夏輝(なつき)愛莉(あいり)、そして大次郎(だいじろう)の3人の顔を見る。



「え…俺ら?」

「何で、あたしらが?」

「このNOAH(ノア)の推定クリアレベルは85。現NOAH(ノア)ユーザー最強のレベルでも、確か68っス」

「だが僕らのデータのレベルは…」

「80…まさか、あたしらに『ゲームをクリアしろ』って事?」



(ひろ)は無言のままに頷く。



「ただし、βテスターのデータは、条件に関係無く更新を停止したもの。つまり、今ログイン中のユーザーと同じ扱いっス。だから裏面データ込みの新規ユーザーを連れてログインするんスよ」

「更新は出来なくとも、同行は出来る。『同盟(※)』を使う訳か」



(※)…クエスト中に出会ったプレイヤーと、そのクエスト内だけ共に戦い、クリアデータなどを共有出来るシステム。



「そしてクエスト中にログインユーザーと会ったら、『同盟』を結ぶんス。そうすればクリア後に、一緒に町へと帰る事が出来るっス」

「待って(ひろ)…そしたら、あたしらがユーザーと接触する事で、そのユーザーとの回線を元に戻せるんじゃないの?」



その問いに押し黙る(ひろ)は俯きながら呟いた。



「…すみません…それは出来ないんス」

「え?何で?」

「先輩方が裏面データでログインした時点で、現ログインユーザーは回線の切れた旧データから外れ、裏面データに移される…これはデータ上から一時的に消える事。つまりIDやパスワードも無くなり、ゲームがクリアされるまではNPC扱いになるんス」

「それじゃあ、現実世界(こっち)からの作業での救出が出来なくなって、あたしらがクリアするのを待つ状態になるって事?」



頷き返す(ひろ)が言葉を続ける。



「それにこの裏面データはまだ未完成っス。データ自体にログインは可能ですが、まだ全ユーザーを受け入れられるような"世界"としての確立がしていないんス。確立出来るまでは1日…現NOAH(ノア)システムにインストールさせるだけでも、データ量的に最低10時間は必要っス」



NOAH(ノア)への滞在可能時間は72時間。単純計算で失われる時間は34時間……その間に制限時間を迎えるユーザーも0では無いはず――…っと考え、唇を噛み締める夏輝(なつき)だったが、その考えを察したのか、(ひろ)は首を横に振り言葉を続けた。



「このデータでログインすれば、ユーザーはNPC扱い。つまり制限時間がリセットされ、再び24日の猶予が与えられるっス。でも現実の脳はそうはいかない…だからそこは現実では医療機関との連携が必要となるっス」

「猶予はある。だが、僕らがゲームをクリア出来なければ…18万人共々僕らも死ぬ」

「そうっス。新規ユーザーは大丈夫ですが、先輩方βテスターも旧データ扱いっスから…だからトータル50%の成功率なんスよ」



静まる室内……夏輝(なつき)愛莉(あいり)だけでなく、全てを理解した社員らも何も言えずに黙り込むだけ。


重い空気となる室内で、最初に口を開いたのは実織(みおり)だった。



「説明通りに上手くいけば、1度に多くのユーザーが助かるけど、成功するかは50%の道。地道に1人1人、ユーザー1人1人を救い出していく全滅無き道……さ、舵は渡されたわよ?夏輝(なつき)君」

「僕が…舵を…」



呟く夏輝(なつき)の肩に、ポンっと何かが当たる。何だ?と振り向くと、そこにいたのは愛莉(あいり)。彼女の拳が夏輝(なつき)の肩に当てられた状態だった。



「室長はアンタ。あたしはアンタについてくって決めてる。だから従う。そして同じ責任は負うわ。もしも決めらんないなら、一緒に悩む。だって仲間じゃん?あたしら」

愛莉(あいり)…でも、いくら強いレベルだといえ、たった24日でクリアなんて…出来るかわからないじゃないか…」

夏輝(なつき)!」



続き響く声に振り向くと、そこには大次郎(だいじろう)



「『出来る』とか『出来ない』で迷うな。『やる』か『やらない』かの覚悟を決めろって」

「オージロウ…」

「どっち選ぼうがお前ならやれる!向こうで1日何個もクエストクリアしてやればいいんだ!信じて決めろ!」

「………」



夏輝(なつき)を見つめ、大きく頷き笑顔を見せる大次郎(だいじろう)。続き見る愛莉(あいり)は、ちょっと照れたような笑みを見せ、再び夏輝(なつき)の肩を叩く。



乃愛(のあ)ちゃんが待ってる。さっ、決めよ?お兄ちゃん」

「…うん」



夏輝(なつき)は1度頷き、社長に向いた。



「社長…行かせて下さい」

「…わたしに止める理由は無い。ただ、行くからには失敗は許されない。わかっているな?夏輝(なつき)室長」

「はい。人選は…?」

「βテスターの3人なのだろ?細かい所は君に任せる」



そう言われ、横目に見るのは愛莉(あいり)



「本当にいいのか…?」

「とーぜんですわん、室長」



再び社長に戻した視線で問う夏輝(なつき)に、同じく社長に向いた愛莉(あいり)が敬礼を返す。



「社長。新規ユーザーとして、ご子息、飛依斗(ひいと)さんの同行を許可願えますか?」

「なっ…!?」

「はっ、はぁっ!?オレ!?」



突然な提案に驚きの声が上がる社長と飛依斗(ひいと)。これには愛莉(あいり)や周囲の社員らもびっくりしたように夏輝(なつき)を見た。



「トイズ・クランピアの社員は社長を含め、ゲーム内のショップ経営の為、全員がNOAH(ノア)アカウントを持っています。NOAH(ノア)アカウントは1人1つしか持つ事が出来ない。ちなみにですが、飛依斗(ひいと)さんはアカウントはお持ちですか?」

「はぁ?持ってる訳ねぇだろ、こんな子供騙しのゲームのなんか」

「わかりました、ありがとうございます。…旧データよりアカウントを探し出し、ID解除後に新規作成するより、飛依斗(ひいと)さんのようなまっさらな人でログインする方が圧倒的に早い。だから許可を――…」

「ちょっと待てって室長さんよォ。オレは『行く』ってひと言も言ってねぇだろ」

「…償いの意味ではよかろう」

「おい親父!何勝手に話しを――…」

「だが!ログインしたとして…息子に危険は無いのだろうな?」



そこは『父親』…やはり息子の事は心配なのだろう。夏輝(なつき)の視線は(ひろ)に向く。



「本当に大丈夫なんだろう?(ひろ)

飛依斗(ひいと)さんのデータは新規ものっス。ログアウトに問題は無し。危険性は0%っス」

「そうか……ならば行ってこい、飛依斗(ひいと)

「ふ、ふざけんなよ!何でオレが行かなきゃなんねぇんだよ!?お前らだけでやりゃいいじゃねぇかよォ!!」

「お前が犯した事態だ。早く行け」

「…っだよ…オレのせいじゃねぇ…オレは何もやってねぇ!!」

「お前が引き金となったのだぞ!お前がバカげた事をしなければ――…」

「『お前が――…!お前が――…!』は聞き飽きた!!」



っと声を荒げる飛依斗(ひいと)は、近くの机を蹴り飛ばし、その机に乗ったパソコンをも蹴り飛ばす。



飛依斗(ひいと)!!」

「うるせぇ!!どうせ全部オレが(わり)ぃんだろ!?全部だ全部!悪かったな、親父…母親の命と引き代えに生まれてきたのがこんなバカ息子でよォ…何やってもダメなクズでな」

「…飛依斗(ひいと)…」

「室長ぉ~?」



舌打ち混じりに夏輝(なつき)を呼び、振り返る飛依斗(ひいと)



「なぁ~んかオレのせいでこうなっちまったみたいで、申し訳ありませんっしたぁ~。でもオレみたいなクズが行ったら、出来る事も出来なくなっちまいますよ~?」

「………」

「たぶん全員殺しちゃうなぁ~オレ」

「ちょっとアンタねぇ!!」



瞬間、愛莉(あいり)飛依斗(ひいと)に詰め寄っていく。



「人の命かかってんのよ!?ふざけんじゃないわよアンタ!」

「ふざけてねぇよ…オレみたいなのが行ったって、何も出来ねぇで終わりだ。だから――…」



飛依斗(ひいと)はゆっくりと視線を廻し、連れ込んだ女性を見た。



「お前が行った方がいいんじゃねぇの?」

「え?私?」

「そーそー。オレなんかよりも、まともな人間が行った方が、愛莉(あいり)ちゃんとしてもいいだろ?」

「…アカウントは持ってるの?あなた」

「持ってます。けど、昨日までログインしてて…あと1日はログインが出来ないんです。すみません…」

「けっ、使えねぇ女だ…」

「謝れるだけアンタよりマシ。本当にまともな人間だわ」

「………」



愛莉(あいり)の言葉に、無言のままに舌打ちをして俯く飛依斗(ひいと)



「やっぱそうかよ…」

「え?」



呟く声に反応する愛莉(あいり)だが、飛依斗(ひいと)は何も返さずに黙るだけ。するとそこに歩み寄ったのは夏輝(なつき)



「何だよ室長…無駄だぜ、オレみたいなクズ連れてったって――…」

「連れていきますよ。あなたが必要だから」

「…は?」

「必要なんですよ、飛依斗(ひいと)さん。あなたが」

「必要…オレが?」



キョトンとする飛依斗(ひいと)に、頷き返す夏輝(なつき)



飛依斗(ひいと)さんはボクシングで格闘経験もある。ゲームの戦闘にもすぐに対応出来るはず。それに、相手が誰であろうとも気負わぬ気持ちの強さもある。そうですよね?」

「お…おぉ…」



キョトンとしたまま、思わず頷き返す飛依斗(ひいと)



「今の即戦力となるものを持っている、飛依斗(ひいと)さんだからこそ必要なんです」

「………」

「お願いします、一緒に来て下さい」



っと夏輝(なつき)は頭を下げた。するとすぐさま愛莉(あいり)夏輝(なつき)の元に駆け寄り、その体を起こす。



「ちょっと夏輝(なつき)!何してんのよ!?こんなヤツに頭下げる事ないわよ!飛依斗(ひいと)、早く準備しなさいよ」

「よせ愛莉(あいり)

飛依斗(コイツ)もあたしらと同じ元凶よ!行くのが当たり前でしょ――…」

「そうカリカリすんなって愛莉(あいり)ちゃん」



っとヒートアップしていく愛莉(あいり)の後ろから突然抱きつく飛依斗(ひいと)。すると愛莉(あいり)のヒールが飛依斗(ひいと)の足に落とされる。



「のアッ!!」

「触れるな危険。触りたいなら有料よ」

「…ったく、あいかわらず手厳しいぜ、愛莉(あいり)ちゃんは…」



踏まれた足を擦る飛依斗(ひいと)は、鼻で笑うように息をはき、夏輝(なつき)に向いた。



「わかったぜ室長。オレも連れてけ」



突然の承諾に、室内がザワついた。



飛依斗(ひいと)さん…」

「オレは室長、アンタについていく……必要としてくれんならな…」



今までにない真剣な表情でそう告げる飛依斗(ひいと)に、夏輝(なつき)はゆっくりと頷いた。すると突然、



「うっし!決まりか!」



そう言いながら大次郎(だいじろう)が背後から肩を組んできた。



「さっさと行って、18万人全員助けてやろうぜ?な?」

「オージロウ…君は残ってくれ」

「おうよ!俺は残って――…は?」

「そうよ、オージロウ。アンタは残りなさい」

「は、はぁ?何でだよ…俺もβテスターの1人だろうがよ」

「そうだけど、この作戦は失敗すれば命を落とす。君は協力者ではあるが、開発チームではない。そんなリスクを背負わせる訳にはいかない」

「おいおい、バカ言ってんじゃねぇって…親友の為に命かけるくらい――…ふぎ~っ!」

「バカはアンタよー」



大次郎(だいじろう)の言葉を切るように、その両頬をつねる愛莉(あいり)



「アンタは既婚者。【雪菜(ゆきな)】ちゃんと、アンタに似なくてよかった【嘉人(よしと)】君が待ってんのよ?命かける所が違うでしょ?」

「………」



両頬を解放されるも、2人の名を聞き押し黙る大次郎(だいじろう)。視線は夏輝(なつき)の肩を組んだ左手薬指に輝く指輪に留まる。



「あ~ぁ…帰ってきたら、雪菜(ゆきな)ちゃんのカレー食べたいなぁ~」

「え…?」

「僕もだ。あと、乃愛(のあ)の分も頼むよ」

「…え…?」

「『え』じゃないわよ。もー早くカレーの材料買って家に帰りなさいよ。んであたしら帰ってくるまで煮込んでなさーい、和製北京原人」

乃愛(のあ)はああ見えてけっこう食べるから、ご飯は多めに炊いててくれよ、オージロウ」



そう言って、組まれた腕からすり抜ける夏輝(なつき)は、大次郎(だいじろう)の肩を叩く。



「…お…おぉ…」



大次郎(だいじろう)は戸惑いの表情のまま、ゆっくりと後退りしていく。


気持ちはわからないでもないが、待つ家族のいる、罪無き親友の命はかけられない。夏輝(なつき)愛莉(あいり)は、大次郎(だいじろう)に向く事なく(ひろ)を見た。



「裏面データのログインは3人だ、(ひろ)

「了解っス。飛依斗(ひいと)さん、アカウント作成はどうするっスか?」

「ん?んなもんテキトーでいいぜ。あ、なら実織(みおり)姉ちゃ~ん。オレみたいにカッコいいアカウント作ってくれよ」



飛依斗(ひいと)の提案に、「はいはい…」っといったような表情で数回頷く実織(みおり)は、ため息をつきながらパソコンにてデータを作り始めた。


作業する実織(みおり)に向かい、ピューっと口笛を鳴らしつつ、並ぶ愛莉(あいり)の肩に腕を置く飛依斗(ひいと)



「でもさぁ~オレ…ご褒美があった方が頑張れんだけどなぁ~?愛莉(あいり)ちゃん?」

「あ~ら、手でも繋いでほしいの?ボーヤ」

「ハハ、ボーヤは大人の遊びを教えてほしいのさ、お姉様」

「あらそう…無事に戻って来られたら、1日くらいは付き合ったげるわ。その後の展開はアンタの活躍次第、ねっ!」



肩に腕が置かれた事から、ガラ空きとなった飛依斗(ひいと)の脇腹を、愛莉(あいり)のエルボーが強めに打つ。



「ぐフォっ!!」

「さ、早くあたしを惚れさせてちょうだい。お坊っちゃま」

「キっ、キツいぜ…愛莉(あいり)ちゃん…」



蹲り、打たれた脇腹を抱える飛依斗(ひいと)を他所に、(ひろ)からログイン用のNOAH(ノア)を受け取る夏輝(なつき)愛莉(あいり)



愛莉(あいり)…」

「何さ?」

「さっきの…飛依斗(ひいと)さんに言った、『惚れさせて』って、まさか…」

「ちっ、違うわよ!あぁ言えば、あのバカも頑張るかと思って……何…まさか…妬いてんの?」

「いや、それは無い」



余りにも迷い無き即答に、ズルっとコケる愛莉(あいり)



「妬けやコラ!心ん中でちょっと照れたあたしが恥ずかしいわっ」

「そういう事じゃない。ただ…ちょっと、カッコよかったと思っただけだ。ありがとう」

「は?何でお礼な訳?…全くもう…頭良いくせ、ホント女心がわかってないわね…」

「え?…『カッコいい』がそんなに嫌か?」

「アンタねぇ…もういいわ。行きましょ」



膨れっ面のままに、手にしたNOAH(ノア)のスタンバイをする愛莉(あいり)。同じくスタンバイする夏輝(なつき)を横目に、



「…バぁカ…」



っと小さく呟いた。




◆◆◆――…




 ログインをする夏輝(なつき)ら3人は、リクライニングで少し寝かせられた、個々に分かれたマッサージチェアのような黒革の椅子にかけていた。その頭にはNOAH(ノア)がヘッドギアのように装着されている。


鼻まで隠すバイザー越しに周囲を見渡すも、大次郎(だいじろう)の姿は無い。もし失敗なら、もう会う事は出来ない……出立前に言っておくべき事もあったが、姿無き今はどうする事もない。



「オージロウ、いないね…」



並ぶ愛莉(あいり)の声。愛莉(あいり)にとっても親友である大次郎(だいじろう)…同じ事を考えていたのだろう。



「うん。でもいいんだ。彼には家族が待ってる」

「そうね。で、アンタはその家族が向こうで待ってる。そうよね?」

「…うん」

「あたしは、待ってる親もいなけりゃ兄弟もいない…悲しいくらいにこの作戦にうってつけの人材」

「…乃愛(のあ)は待ってる」

「そ、アンタは乃愛(のあ)ちゃんがね」

「君の事も、だ」

「はぇ?」

乃愛(のあ)は待ってる。君の事も」

「えっ…」

「君は"お姉ちゃん"で、家族とも同じような存在なんだよ…乃愛(のあ)にとっては」

「お姉ちゃん?…家族?」

「…迷惑か?」

「めっ、迷惑な訳ないじゃん!…お姉ちゃん…あたしが…」

「僕は悪影響だと言ってるんだけど、乃愛(のあ)がそう言ってきかないんだ」

「おいコラぁ~!雰囲気ブっ壊すなぁー!」

「さぁ行こう、"家族"を迎えに」

「まとめんなァー!!遺恨が残るからさっきの発言撤回しろォーい!」



愛莉(あいり)の怒りの声と共に、



「痴話喧嘩もいいっスけど、準備の方はいいっスか?お3方」



(ひろ)の声の響く管理ルーム内。



「大丈夫だ。それに付き合ってもいないし、そんな感情も無いから痴話喧嘩じゃない。断じて違う」

「真顔で断ずるなぁ!!あ~もう!大丈夫だからよけいなあおりをするな小デブ!」

「オレもいつでもいいぜ~、小ブタちゃ~ん♪」



締まり無き「大丈夫」宣言に、頷く笑顔を引きつる(ひろ)。その指は、ログイン実施のGOを出すEnter(エンター)キーへと置かれた。



「じゃあ行くっスよ…」



(ひろ)の声を聞き、ゆっくりと目を閉じる3人。



「システムバックアップはお任せ下さいっス」

「…頼むぞ、(ひろ)

「了解っス!皆さんの成功、祈ってるっスからね」

「うん」

「ほいほーい」

「ふぁ~あ…(ねみ)ぃ…」

「では行きます!リンク――…スタート!!」





◆◆◆――…





 夏輝(なつき)らがログインをした頃……あるテレビ局のパソコンに、1通のメールが届く。



「…ん?何だ?」



気づいたのは1人の男性報道記者。マウスを動かし、届いたメールを開くと……



「え~っと何々――…


〔件名〕メディア各所の皆様へ

〔本文〕

  古きツギハギの『ノア』の時代は今

  終わりを告げた


  新たな方舟は

  1人の神により創られし

  神聖な『NOAH(ノア)』となる



…――何だよこれ…」

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