表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2.ただの夢でもないらしい

 微妙にホモネタ、腐女子ネタが含まれます。軽度のつもりですが、少々であろうとダメだという方はブラウザバックを推奨します。

 エロ、いくない! をスタンスに、はっちゃけハーレムです。

 前回のあらすじ。

 夢に神様を名乗る幼女が現れました、まる。


「神に対して『聞いてやろう』だと? なんと上から物を言う奴だ。その上我を幼女呼ばわりとは……。よいか。我は神であるぞ。天地万物の創造主であるぞ。崇め奉りこそすれ、な、な、な、馬鹿にす


るでないっ! そもそも我は自ら創造した世の理に縛られることもなく、万物を超越した存在っ! 性別や年齢などという制約で、我を縛ることなどできぬのだ!」


 随分とご立腹のようで。けど、幼女かぁ。俺は夢に見るほどカミサマ幼女好きではなかったはずだが……。むしろむっちり豊満なオトナな女性が好みで……っと、よけいなことを考えてたらあの幼女にまた癇癪を起こされるんだよな。うんうん、俺学習する賢い。よし、余計なことは考えない。無我の境地ー。

 と、アホなこと考えるのはそこまでにするとして、ちっこい神様を見る。威厳の欠片もないくせに、最近の若者はどうとか、また相も変わらず馬鹿共がドンパチやりおって、なんて爺むさいこと言っていじけている。宇宙空間でグローバルでワールドワイドなことを愚痴る幼女。なんてアンバランスだ。


「ああもうウダウダゴチャゴチャグダグダうるせぇな。つぅかなんだよ神様って。死に神様だってんなら危機感だってあんだろうけど、高校生、つまりただのガキの夢枕に立つような神様って実感湧か


ねぇよ。しかも特別信心深いわけでもなし、祈るにしても身勝手な願望だぜ? そんなほいほい現れて救ってくれるってんなら、誰も苦労なんかしねぇよ」


 俺のつま先が神様の鳩尾にクリーンヒット! ……夢だからな。ただの夢だからな。罰当たりとか言うならそっちもそれらしく構えてから言ってくれよ? 幼女虐待とか言うなよ? 本人が否定してんだからな?

 けど、結構足に子供特有のふにふに柔らか肌触感があるな。しかも人一人蹴り飛ばした反動か妙に足を痛めてるような。夢、だよな?


「ふん、我を蹴り飛ばしたことは我の宇宙より広い寛大な心で許してやろう。だが、お前の境遇は見過ごせぬな」


 唇の端を片側だけくっと引き上げて、カミサマ幼女は不敵に笑う。神だからか夢だからかはもはや俺に判断できる事じゃなかったが、少なくともカミサマ幼女は俺の鳩尾蹴りに堪えてなんかない。宙に胡座をかいてくるりと旋回すると、その顔だけが、幼馴染の小百合のそれに変わった。色々と未発達な幼女体型に、成熟度合いの進んだ小百合の顔が乗っている様子はアンバランスの一言に尽きる。馬のしっぼな髪型で、高二にもなるってのに落ち着きってものがない勝ち気な瞳をした、少し視線を落とせば大人の女に近付いたソレがたゆんと揺れるのが目に入る美少女と言って差し支えない幼馴染み。だってのに、視線をずらせばなんて平坦、なんてまな板。それにスポーツ少女なあいつはそんなパリパリのギシキっぽい服は着ない。


 違和感以上にある種気味悪さを感じるのだが、カミサマ幼女は一切考慮してくれないらしい。腕をだらんと下げた胡座そのままに、ずずいと眼前まで迫るとぷっくりと赤い艶のある大きな口を開いた。


「わたし、幼稚園の砂場の約束、忘れてないから」


 その声まさに、椎名(しいな)小百合(さゆり)。それも、ちょうど昨日、本人が言った言葉そのままじゃないか。カッと顔が火照るのを感じる。怒り? そんなわけない。これは照れだ。砂場の約束ってのは、大きくなったら結婚しようなんていう、よくある子供の口約束だ。それをあいつは……。俺はラノベや漫画にいるような、わざとかと疑うほどの天才的な鈍感さんじゃない。好意には気付いていたものの、それとなく距離を置く事でやんわりとご遠慮いただいてたってのに。そうだ、昨日のことだった。


「わたしも、さゆりんには負けないもん」


 カミサマ幼女の顔はいつの間にか同級生の相田(あいだ)春海(はるみ)のものになっていて、やはり声も春海そのものだった。おいおい、ちょっと待ってくれよ。これも昨日だったか。もちろん負けないというのは恋愛とかそういう浮ついたヤツだ。身体能力で小百合に勝てる奴は男子でも少ない。ってそんな分かりきった事はどうでもよくて、この嬉し恥ずかしなデレを再現するのをやめろ! 夢ってのは寝る前の心理状態とか、色々関わるとか関わらないとか聞く。こうして夢に見るのは一向おかしくないのだが、それでも改めて、しかも物凄い覚醒してる状態で平然と見ていられるものじゃないな。

 待てよ、順番でいくと次は……。


「ケッコンしよ! お兄ちゃんはお義兄ちゃんだもん。いとこなら、そういうのいいって、ひなも知ってるんだよ」


「私もあっくんの事、好きよ。これからもずっと、うふ、毎朝お味噌汁作ってあげたいの」


 なんてベタな最高のシチュエーション。陽菜乃(ひなの)有紗(ありさ)(ねえ)、つまりは義理の妹と姉に同時に告白を受けるなんて、日本でも、いや、世界でも俺だけじゃないか? 恥ずかしさが先に立つが、得意にもなる。まあ、オトすのは二十歳を過ぎてからと思っていたから失敗と言えば失敗だが、もう別に構わない。

 それに、あともう一人、いるんだよな。


「『我君ヲ愛ス』、『死んでもいいわ』、『月が綺麗ですね』。私は、貴方が好きよ。シンプルな言葉がいいでしょう?」


 図書委員の佐倉(さくら)真衣(まい)先輩。学年が違うだけに接点が少ないが、一目惚れした綺麗な人だ。カミサマ幼女、再現してくれるのは嬉しいが、先輩の良さはすらりと伸びた背筋からも漂う、氷像のような冷静、知的な美しさだ。胡座をかいて顔だけ真似るなんてとんでもない冒涜だ。要するに、夢だからって我慢できねぇ。それとも俺は潜在的にロリコンなのか? 妙にヘコむなぁ。いや、陽菜乃に悪いな。ロリ最高。


 だが、顔だけ七変化カミサマ幼女は認められない。

 俺の好きな彼女たちは、彼女たちだから好きなんだ。


「ハーレム野郎め……」


「即刻その顔を元に戻せ七化け幼女!!」


「七化け幼女とは失敬なぁっ!!」


 そうは言いつつさっと元に戻すのだから気が利いている。夢だと自覚する俺でも、こればかりは許せない。声を荒らげざるを得ない。


「何だ? ハーレム要員の再現は良くても、男の顔と嫉妬は見たくないと?」


 ニヤニヤとその幼い顔に似つかわしくない笑みを浮かべるところから、理由がそんなところにないことはわかっているのだろう。そもそも俺の夢だ。乗せられたようで癪だが、これ以上侮辱するような


発言は言わせるわけにはいかないんだ。


「俺の親友は嫉妬からそんな事を言うような奴じゃねぇ。馬鹿にすんな。あいつは俺に対する呆れが通り越して引いただけだ!」


 呆れた顔なんかしやがって。あいつの事だけは馬鹿にするなよ!? こんなゲームと現実を混同してハーレムエンドを目指しちゃうようなはっきり言って痛い奴に、馬鹿にするでもなく面白がってあまつさえ協力的な男だぞ。とりあえず精神科行けと、お前がやってることはただの鬼畜だ考え直せと言いたいくらいのお人好し。ま、言うにも半ばゴールインしたがな。そんなあいつはクラスでも人気者なムードメーカーで、可愛い彼女(本人は()()恋人ではないと主張する)と絶賛ラブラブ中だ!

 さらには目鼻立ちがくっきりし、掘りが日本人にしては深い、色黒なスポーツ少年の俺の親友、浅田(あさだ)(わたる)。なんてハイスペック、ベストオブ親友ポジション! そのイケメン顔が幼女体型(、いや、この場合は幼児体型と呼ぶべきか?)に乗っているのは先輩のアンバランス加減より嫌悪が先立つ。全く、汚された気分だ。


「くふっ、面白いな。他方では引き立て役とさえ思っておるのに、その反応もまた(まこと)か。はぁ、いっそお前とそれがくっつくのも面白いかも知れぬな。どうだ、男色の気はないか?」


「馬鹿言うな! あいつには日向杏奈って実質彼女がいるんだ。早くくっつけよ! ってやきもきしながら応援してんだよ。ああ、それに俺にその気もないしな」


 大体、神様が幼女で腐女子だなんて、無意識下で思ってたとはショックだ。神なんて信じちゃいなかったが、これだと俺が腐っているみたいじゃないか。


「な、まだ認めぬ気か。まあ良い。だが、ふむ、腐女子か。まず我に性別はない。故にその呼称は相応しくないな。加えて我は男色に興味があるのではない。生殖にも関わらぬに性欲を抱く心理に興味があってな。お前が興味ないなら意味がない」


 妙に俺に執着を見せるカミサマ。この辺は特別でありたい中二心だな、うん。


 今にも舌打ちをしたそうな顔をしているが、気にしない。


「さてな、本題に入るとしようかの」


「本題だ? 人の夢にまで出てくる用事……幼児……おい、なんだよダジャレかよ。くだら」


 さらに続けようとしたが、カミサマは茹で蛸みたいに顔を赤くしまくしたて始める。何これ超威厳ない。


「ち、ち、違うわぁっ!! 我はそのようなことしてなどおらんっ!! ふ、ふ、ふ、ふざけるなぁっ!!」


 フグみたいに膨らんでいる。水産物系幼女。やべ、ちょっと可愛いかも。


 そう思ったのも束の間で、カミサマ幼女は背を向けるとくすりと笑う。



 用事と幼児……くふっ、面白いではないか。



 どうやら本当に意識してのことではないらしいが、いやもう待って。この子可愛い。陽菜乃の可愛さとはまた別ジャンルだ。


「って、そのような事は今はどうでも良い。言ったであろう? お前の境遇は見過ごせぬと。お前、人が聞けば羨ましがる事間違いなしの環境にあるだろう。



 一つ。

 幼き頃から共に過ごし、いざという時は見計らって普段の五割り増しの活躍を見せることで好意を決定的にモノにした幼馴染の椎名小百合。



 二つ。

 捨て犬の段ボール箱の前で空の牛乳瓶とそれなりに深い皿を持って切なそうにしていたところに偶然を装って近付き、保護したことをきっかけに惚れられた相田春海。



 三四でまとめて。

 両親を交通事故で一度に亡くし、意気消沈していたものの、引き取られた先の姉妹の器量の良さを見て、両親の死への悲しみを見せるも無理をしてでも明るく振舞い、あまつさえ会って間もない頃であるのに二人のために立ち回ったことで打ち解け、絆とそれだけでは足りない感情を勝ち得た陽菜乃、有紗姉妹。



 最後に。

 高校に入り知的美女と出会うべく図書館に通ったところ出会い、同じ本好きとしての交流を深め、それとなく好意を振りまくことで気を惹き、悩みを解決した事で相思相愛にまでこぎつけた佐倉真衣。



 なぜお前はそうも恵まれておる!?」


「ちょっと待て。なぜその恵まれた環境に俺のハイスペックベストオブ親友、浅田渡が含まれないんだ!」


 途中まではおとなしく聞いていたが、こればかりは許せない。あ? 二度目だって? あいつのためなら何度だって言ってやるよ! こればかりは譲れない!


「こんの男はあっ! 我が話しておるのはヒロイン的な意味でだ!」


「あー。ならあいつは含まれねぇな。んで、何だよ」


 うむ。それなら仕方がない。明らかに態度の変わった俺を見て、カミサマ幼女は大きなため息を吐く。ったぁく、幸せが逃げるぞ。可愛い女の子がそんなコトするなよ。


 見る見るうちに赤面していき、と、また平常運行に元通りだ。心の中は意識すれば視えるとかそういう話か?


「くっ。まあ良い。良いったら良いのだ。それでだ。我はな、神であるから過去も未来も全ての時を見ることができるのだ。だがな、我が世界を見てきて、最高に素晴らしいと感じたのはお前なのだ」


 カミサマ幼女は幼女らしからぬ、恍惚とした表情を浮かべて語る。


「世界を見るとは、ヒトにとってそれはそれは面白い本を読むようなもの。星で始めの生命が生まれたときの感動は忘れぬぞ。何度も見たシーンだ。

 様々な生物がこの世界を動き回り、想いを持ち、様々に行動する。おお、なんと神秘的なことだ。

 だがな。ある一定の水準に満たぬ生物は見ていても面白くない。その水準というのはまあ、思考というものが発達しておるかどうかだ。

 その点で言えばヒトは申し分なきほどに進化した生き物よ。あまりにも進化しすぎた生物は今度は逆に、と、そのような話はヒトには過ぎた話か。忘れよ。

 だがな、ヒトもまた愚かでくだらぬ。その中で、お前はもっとも我を愉しませたのだ。光栄に思え」


「何が言いたい」


「そう()くな、ヒトよ」


 片手をひらひらさせて優越感満載の笑みで見下ろして、こいつ俺を馬鹿にしてるだろ。だが幼女だ。あんな可愛い所もある幼女だと思えば……。アリだな。

 俺の良心っぽいのがそこをアリにするとHENTAI街道まっしぐらだと叫ぶが、問題ない。自覚している。

 そもそも俺は砂場の約束から確信犯なのだ。今更である。


「神とはいえ、我はヒトが創造したモノのように万能ではない。この『世界を見る者』でしかない。だが、こうして思考に干渉し、ある程度の知能があれば交流も図れる。待ち遠しかったぞ。お前が生


まれ、告白を前夜に控えたこの時を!」


 生まれてくるのが待ち遠しかったって、前世からのストーカーみたいな言い分だな。感極まってるっぽいが正直その辺はどうでもいい。どうせ夢である。夢だろ。どう考えても夢だ。


 だが、神様とか、世界とか、面白そうじゃないか。俺自身は別に神も仏も信じちゃいないとは再三公言しているが、その俺が夢に見る世界観だ。興味がないはずがない。そう。俺の深層心理における


世界観として、興味があるんだ。別にまだ信じちゃいないさ。当然だ。流石に夢と現実を混同するレベルの頭がイッちゃってる人じゃない。


「待ち遠しいってどういうことだよ。神なら好きに俺に干渉すればよかったじゃないか」


「は? 我の話を聞いておらぬかったのか? 全く。我は全能ではない。お前、常識的に考えよ。未来へ行ったり過去へ行ったりなどできるはずがなかろう」


 夢の中で神様を名乗るヤツに常識を説かれた。屈辱だ……。


 肩を落としていると、ヤツは思うところがあったらしい。トンと肩に手を乗せ、諭すように話し出した。


「ヒトには難しすぎたかの。良い良い。仕方のないことだ。例えて言うならば、そうだな。何千何億何千兆の、物語の映像があったとしよう。そしてお前には、二倍速でも五倍速でも、いっそ百倍速で


も内容が完全に楽しめるほどに理解できる脳があったとしよう。映像の一部は今現在起こっているものだが、大半は過去に起こったもの、そして未来に起こるものだ。お前はその物語の群れを、初めから終わりまで見ようとしたとき、映像を見るのに時間がかかるとはいえ、そんなものは大した時間にもならぬ。そういうことだ」


 なかなかにぶっ飛んだ話だが、まあ、理屈はわかった。つまり、干渉できるのは時間が、『今』になったときだけだという事らしい。宇宙ができたのが137億年だとか、その辺りだという話を聞いたことがあるから、そうとう気の長い片想いだな。


「ち、違うわあっ! そ、そ、そんな話ではないっ! ふん、ただ単にお前の物語が一番のお気に入りだというだけのこと。そこでだ。お前の好きな恋愛シミュレーションゲームという娯楽があるだろう?」


 これは……。嫌な予感しかしないな。俺を操って好みのエンディングを見ようという魂胆か。って、そんなわけないよな。俺も大概ゲーム脳だな。


「くふっ、理解が早くて助かる。そのまさかだ。従わなければこの世界を壊すつもりであるから心せよ。すでに録画していつでも見られる番組を、わざわざ付けっぱなしにしておく必要はないからな。だからお前に拒否権はない」


 上から目線が似合う幼女というのはなかなかに珍しいと思う。リアルでは貴重だ。夢の中だという事が実に惜しい。だが、世界を壊す、だと?


「俺が従えば、世界を、壊したりなんかはしないんだな?」


 ニタリと、カミサマ幼女は幼女らしからぬ無邪気とは程遠い表情で見下ろしてくる。面白い玩具を見つけた子供のように純粋だが、コレクションしているものの最後の一つを目の前にした俺のように下心にあふれた顔だ。


「当然。当たり前だ。だから早く決断せよ。我はこの時を百億年も待っていたのだぞ」


 なんと気の長い話だ。カミサマってのはこんなにも一途だなんて驚きだ。こういうときに、俺はなんと答えればいいか。そんなの、答えは一つに決まってる。なあ、同志達よ。







「だが断る」



「なぜだぁッ!!」



 唖然とした顔、理解できないという見下した顔こそ本望だ。もうこの時点で正直世界がどうとかどうでもいい。このセリフを言うのにこれ以上ふさわしいシチュエーションがあるのか。いや、ないッ!

 とはいえ、流石にこれで人生幕引きだなんて言ったら、いくらなんでも浅田が可哀想だ。前に、「俺、なんとなくなんだ。なんとなくなんだけど、いつか引き出物のバウムクーヘンを一人で食べるっていう夢を見て、すげぇ切なかったんだ。なんでだろうな」とか呟いてたときは号泣してたよ! 心が! 家帰ってマジ泣きしたんだぜ? そんな今のままで世界が終わるとかあっていいはずがない!

 俺か? いや、確実にハッピーエンドなハーレムエンド直通だろ。


「で、まあ、とりあえず断ったんだが、流石に世界壊されたらたまったもんじゃねぇから、少しくらいなら聞いてやるよ。一つくらいならな」


「さ、さらっと断りおって……。一つと言わず、一日十個くらいでな」


「一つだ」


「むぅ、なら、一日五つでよいから二ヶ月だ」


「長すぎる。どうせ長い要求してくるんだろ、一つだ」


「一言で済む程度の要求だ。五つ」


「それでも俺の人生が掛かってるんだ。干渉できるといっても、夢の中だけだよな? 一つ」


「意地でも従わぬ気か。ええい、夢以外では、要求を拒否しようとせぬ限りは干渉せぬわ。くぅっ、三つ」


「ならそこで手を打ってやるよ。最長二ヶ月、一言ですむ要求を一日最大三つだ」


「仕方ないなぁ!」


 何この子、すごく嬉しそう。もっと要求を呑んであげても良かったような気と、まだ値切れたような気との狭間で後悔にも似た感情が湧き上がるが、どうせ結果は結果なのだ。


「くふ、では、さっそく要求させてもらおうかの。ふむ。そうだな。話をして一番思ったことで試してもらうとする、か」


 腕組みなどをして、クルクルと嬉しそうに回るが、その心はすでに決まっているらしい。ちらちらとこちらの様子を窺い見ながら、ひくひくと口元を歪めている。見ているこっちが引くくらい嬉しそうだ。


 と、幼女は旋回を止めるとずびしぃっと俺を指差し、高らかに宣言した。



「お前は明日、ハーレム要員と日向のいる前で、『浅田に熱烈なハグ』をし、『愛している』と囁き、『奴のファーストキスを奪う』のだ!」


「もうやめて! あいつが本当に報われない!」



 おお、この幼女、カミサマではなく悪魔だったか。なんて無慈悲な所業なのか。おお、恐ろしい。あの気のいい親友が誤解されるようなこと、あっていいはずがない。


「わかった。その三項目だな。その三つは遂行するから、文句も世界の破壊もするんじゃねぇぞ幼女が」


 気分としては吐き捨てたいくらいだが、相手は幼女だ。ちょっとした変顔で睨みつける程度にしといてやる。


「ほ。いつの間に信じる気になったのだ? 未だ信じてなどおらぬだろう?」


「常識的に考えろ。何か証拠でも出せるのか?」


「うむ。この夢が覚めてから、すぐに時計を見ると良い。時計は午前五時二十六分を指しているはずだ。それと、そうだな。朝食は白ご飯にお味噌汁、陽菜乃の作った、珍しく少し焦げた卵焼きだ。ああ、鮭のホイル焼きもある。昨日はそのような話も、冷蔵庫の中も覗いてはおらぬかっただろう?」


 カミサマ幼女の声は遠ざかり、最後の「う」はかろうじて聞こえたような気がするくらいのものだ。夢の中であるのに、眠気に襲われるというのも、またおかしな話だが……、そうとしかいえない不思議な感覚に、沈んでいくようだ……。確かに、有紗姉は、そんな事は、一言も…………。


 俺の意識はそこで完全に途切れ、その後俺の頭は覚醒へと向かって行ったようだった。

 ヒロインがほぼでてきていないに等しいです。次の投稿で出て来るはずなので、しばしお待ちを。

 ノリと勢いだけで突っ走る予定なので、感想などいただければ執筆速度が速まります。どうかよしなにー。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ