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女大公様とわたし  作者:
女大公様とわたし
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王族の責務

 一般的な国王の責務といえば、――細かく分ければいろいろとあるだろうが――国土の統治と後継者の育成、だろう。

 わが国ではその二つをどちらも半ば【龍】に依存している。


 【龍】は初代国王・ユーサーが契約し、己が身に封じた幻獣である。

 封じられた幻獣は、【契約の証】とともに子孫に継承される。たいていの幻獣は一人か二人、継承されずに一代限りのこともあるのに、【龍】の継承者は桁が違った。よほど力の強い幻獣だったのだろう。

 だからこそ、今まで王国が、王族の血統が続いてきたのだ、と言えるのだが……

 それゆえの弊害、というものもある。



 『始祖ユーサーは五人の女性との間に五人の子供をもうけました』


 これは、ある程度以上の年齢の者ならだれでも知っている『始祖ユーサー伝』の一説だ。……子供に話す場合は、『五人の女性と』の部分は曖昧にぼかすのだが。

 五人の王子王女の母親が皆違うのには理由がある。

 彼女らは皆早世しているのだ。

 【龍】の魔力に耐え切れなかったから、というのが魔法使いの間では定説となっている。


 二代国王トリストラムは死んだ母親から取り出された子だし、その弟妹たちも十歳になる前に皆母親を失っている。

 そして、トリストラムが王妃との間に儲けた三人の子供たちには、【金瞳】は受け継がれなかった。王弟の息子には【金瞳】が現れた。

 かくして、王位継承戦争は起こった。

 【金瞳】のない長子の子か、【金瞳】のある王弟とその血筋か。

 どちらが玉座を継ぐのにふさわしいのか、と。



 ユーサーがその統治期間の間周辺諸国からの攻撃を退けられたのは『【龍】の加護』があったからだ、と言われている。彼自身の体と、彼の統治している国土に。

 事実、どの戦でも、ユーサーは疾風のごとく敵軍の前に現れ、前線で指揮をとっていたにもかかわらず、傷を負うことはなかった、とされている。


 だが、王位継承戦争ではどちらの陣営にも『【龍】の加護』は働かなかった。

 争っているどちら側も、ユーサーの子孫なのだから、当たり前と言われれば当たり前だ。

 王冠の主があいまいなまま二十年余りが過ぎ、最終的に王冠が渡ったのは、ユーサーの末娘、アデリシアの許だった。

 戴冠当時三十代半ばだった彼女には、夫との間に二人の娘と生まれたばかりの息子がいた。そしてその子供たちは、みな【金瞳】を受け継いでいた。

 彼女の戴冠以降、不安定だった天候は落ち着き、陸でも海でも収穫高は目覚ましく上がった。



 かくして、『王族は【金瞳】を持つ者に限る』という不文律が出来上がった。

 王族に関する様々な決まりごとは、この不文律を基にしている。

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