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女大公様とわたし  作者:
女大公様とわたし
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女大公様とご公務

 女大公様はその名が示す通り王族であらせられる。

 それゆえに相応のご公務が課せられるのだが、その中には『魔法の行使』や『魔力の提供』が必要となるものもある。だが、エレオノーラ様は未だに『学院』を卒業させられないほど魔法が使えない。というか、未だ初心者の段階を抜けられない。『魔力の提供』には差支えがない(とはいえ、多少の助力は必要)ものの、『魔法の行使』はできない。

 ということで、そのような場合、わたしがサポート役に当たることになる。


 最初のふた月ほどは、大公領内の『魔力の提供を必要とする施設・装置』を把握するのに費やされた。


「っていうか、これって機密事項ではありませんか?」

 領内の重要施設に設置されている『監視装置』の情報(もちろん魔力で制御されているからだ)を提供された時、思わずそう叫んでしまった。

「そうですわね」

 エレオノーラ様はあっさりと肯定された。

「いいんですか? 一般人であるわたしなんかに明かして」

 驚いたせいか敬語が若干乱れた。

「……一般人ではないでしょう?」

「…………は?」

 いったい何を。

「王立魔法学院の教師は、すべての王族の教育に当たりますのよ? よろしい? 一人残らず、すべての」

「……そうですね」

 【金瞳】を持つ王族の子女は学院への入学義務を負う。

 『王族』と認められるものは、【金瞳】を身に帯びていなければならない。

「しかも学院は全寮制。一人一人の趣味嗜好性癖欠点弱点、などを得られる立場にありますのよ?」

 そして学院には、王族に限らず、すべての学生についての入学申請書類と在学中の記録を保管している。

「……はあ……」

 そう言われればそうだ。エレオノーラ様の『王族なのに魔法が使えない』というのも、欠点といえば欠点だ。

「既に高度な守秘義務を負っているのではなくて?」

「……そうですね。たぶん」

「ですから、いまさらもう一つ二つ秘すべき機密事項が増えても問題はないでしょう?」

 ……いや、問題はある。……と思う。


 とにかく、『魔力の提供』については大体の目処がつけられた。

 資料を作成しておけは、後任の役にも立つだろう。


 問題は、『魔法の行使』の方だ。


 式典の類の演出で魔法を使うようなまねはなるべく遠慮願っているが、正式な儀式として魔法を使うときは、回避ができない。必然的にわたしがエレオノーラ様の近くに控えて、代わりに魔法を使うことになる。

 なので、そのような場合は係員の制服を借用することにしている。こういう時、体型が標準的なのは便利だ。

「ごまかす必要なんて、ないと思うのだけど?」

 王宮の控室で、式部官の制服を待っていると、エレオノーラ様がポツリとつぶやかれた。

「あるでしょう。王族でないものがおおっぴらに表に出ていいと思ってらっしゃるんですか?」

「え? ……でも、みんな知ってることだし」

「みんな、って、王族の皆さんが、という事ですか? だからって内外に知らしめるようなことでもないでしょう、エレオノーラ様が魔法が使えないことは」

「……それは、周知徹底するようなことではありませんわね、たしかに」

「でしょう? だからわたしは目立たない方がいいんです」

 こういう儀式に参列する人たちには、王族の顔はよく知られている。だから見慣れない者が混じっていると注目を浴びてしまうのだ。数百人の『あれは誰だ?』と(いぶか)る目に(さら)されるのはご遠慮したい。

 教師という職に就いたからには、他人の目に曝されるのはある程度覚悟している。とはいえ、あくまでそれは少数の限られた人間に限るのであって、不特定多数の視線を前にするのは耐え難い。


 この一点だけでも、王族って大変だなあ、と思う。

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