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女大公様とわたし  作者:
女大公様とわたし
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女大公様の一日

 女大公(エレオノーラ)様の朝は早い。


 冬であれば夜明け前、夏であれば日の出る頃にお目覚めになる。あるいは、侍女に起こされる。

 着替えと洗面、軽い化粧を済ませると、寝室に続く自室の居間で家令とその日の予定を確認しながら朝食を摂られる。ちなみに、エレオノーラさまは朝食をしっかり食べるタイプなので、料理人の朝はとても早い。おそらく王国中の料理人の中で一・二を争えるだろう。


 そして、朝食の後、執務の時間まで魔法の練習。ただし、出掛ける予定、午前中に来客の予定がある時は、その限りではない。

 魔法の練習中に何らかのアクシデントが発生した時には、即刻中止となるが、この一年ほどそのような事態は発生していない。目覚ましい進歩だといえよう。


 エレオノーラ様のご領地は比較的狭くていらっしゃるので、直接管理なさっているが、いくつもの領地を持っているひとは領地を任せる代理人の監視も必要だからその見極めが大変らしい、とエレオノーラ様は笑って仰っていた。


 午前中の執務を終えると、昼食になる。これは、来客があれば、主食堂または来客用食堂、なければ家族用食堂で摂られる。


 午後のスケジュールはさまざまだ。領地に視察に出たり、午前中に終わらなかった執務の続きをしたり、来客の応対をしたり、庭園を散歩したり。王都におられる場合は、お友達やご親戚を訪ねられたりもする。……特に予定のない時は魔法の練習をしたり。


「せっかく王都にいるのですから、学院にも顔を出したいのですが」

 派遣された最初の年、エレオノーラ様が王都に赴かれたときにそう申し出てみた。

「明日の朝食までにお帰りになる、という保証は?」

「……」

 王宮に要請すれば、結界を張れる魔法使いの一人や二人派遣してもらえるだろうに。

 それ以降、エレオノーラ様がご公務などで赴かれるときに随行する場合を除き、私が学院に戻る機会はなくなってしまった。……エレオノーラ様が魔法を使えるようにならなければ、失職の憂き目に遭ってしまうかもしれない。


 朝の早いエレオノーラ様は、夜もまた早くお(やす)みになられる。

 日の長い夏などは、明るいうちは頑張って起きておられるが、日が沈み辺りが暗くなると瞼が開けていられなくなるらしい。

 そのため、夜会のある時などは午後の早い時間に仮眠の時間が設けられるくらいだ。それでも夜会の中盤から眠気が襲ってくるらしく、ソファやカウチに半眼で凭れ掛かっていることが多い。その姿が気怠げに見えるのか、『倦怠女大公』というのが社交界でのエレオノーラ様の綽名だ。


 夜がどんなに遅くても、やはりエレオノーラ様の朝は早い。

 夜半過ぎに夜会を辞して邸に戻っても、日が昇るころにはお目覚めになる。

 エレオノーラ様が夜会に赴くことはめったにないとはいえ、彼女の着替えを手伝う侍女は全く気の毒だと思う。

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