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女大公様とわたし  作者:
わたくしのすきなひと
12/13

わたくしの、

 こどもを産むのは王族の女に生まれた者の責務。


 ずっとそういわれて育ってきましたの。

 そのために健康には気を配り、危険から身を遠ざけ、万一の時には最低限自分の身は守れるよう、護身術も習わされましたわ。なにしろうちの兄弟には、わたくしの他に【金瞳】を持って生まれた者はいなかったのですもの。

 何故『護身術』か、ですって? 【金瞳】があるなら、防御魔法を掛けておけば済むのに。……それはまあ、そうなのですけど。

 幼少期はそれで済んでいましたのよ。【金瞳】の力を使って、お父様や他の魔法使いに防御魔法を掛けていただけましたもの。


 でも。


 魔法を習い始め、一年経っても防御魔法は使えるようになりませんでしたの。

 仕方なく、お父様はわたくしに護身術を身につけさせましたの。あくまでも『護身術』なので、本格的に闘うことはできないのですけど。


 白状すると、身につかなかったのは、防御魔法だけではありませんの。攻撃魔法も補助魔法も。

 そもそも、基本といわれる【集中】‐【解放】もうまくできなくて。【集中】の方は、見よう見真似でもそれなりのかたちにはなりました。でも、【解放】はさっぱりダメ。

 一番の問題は、わたくしが【魔力】を感じることができない、ということらしいのです。魔法の効果としての光や熱は感じられるのですけど。

 ですから、【集中】しても、必要十分な魔力を集められたのか判らない、だからそれを魔法として使うと、魔力不足で不発に終わるか、魔力過剰で暴走するか。このどちらかでしたの。

 ごくごく稀に、ちょうどいいだけの魔力を集められていて不発も暴走もしなかったことはありますが、だからといって「その感覚を覚えておけ」などといわれても困るのです。判らないのですから。かろうじて調整できるとすれば、【集中】し始めてからの時間、くらいでしょうが、それも聞いた話によれば、体調や気分によって変化するのだとか。

 そんなことを言われてしまってはお手上げです。


 エレオノーラには魔法は扱わせない。


 八歳の頃にはそんな不文律ができていました。

 【金瞳】を持たない次兄が、それなりに魔法が使えたせいもあって、魔法を使う場面になるといつも肩代わりしてくれておりました。甘やかされていたのですね。

 とはいえ、魔術関係の書籍や道具類を、わたくしの手の届かないところに隠してしまうのはやりすぎだと思うのですが。いくらなんでも、使いこなせもしない高度な魔法を試してみる、などということはしないだけの分別はありましたのよ?


 それでも、まだわたくしは希望を捨ててはおりませんでした。

 王立魔法学院です。

 王族が必ず一度は通うことと定められているここで、きちんと体系だてて学べば、きっと魔法が使えるようになるでしょう。

 だって、学院での王宮魔法使いには、わたくしと同じように『魔力を感じる? 何それ』の方がいらっしゃるのですもの。


 ……その考えが甘かった、と、解るまで、さほどの時間はかかりませんでしたわ。

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