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come to life again  作者: TAKERU
2/4

対話

前から半年ぶりの投稿です

超スロウペース

カート・ダレル、43歳。彼は餌を食べている豚を眺めながら固まっていた。


ーあの男、アルフォードとかいう男。色白で体は細いが華奢という感じではない。歳は精々20後半というところだ。見た目では…。


カートの脳裏にアルフォードの言葉が蘇る。


『私は吸血鬼だ。

 200数年前。戦争に負け、眠りについた。

 そして数時間前、復活したのだ。』


ー吸血鬼、あの男は確かにそう言った。人間の生き血を吸い、脅威的な力を持ち永遠の時を生きる。

弱点は十字架と聖水。確か銀の杭を心臓に打ち込んでも死ぬ。

狼男、フランケンシュタインの怪物と並び3大怪物と呼ばれる…。


カートは吸血鬼に憧れを抱いていた。子供の頃に見た吸血鬼の映画。

若く美しい姿のままで悠久の時を生き、食べ物は処女の生き血を吸えば、取らなくても数十日は保つ。

子供の頃からずっと憧れを抱いていた。その吸血鬼と自称する男がいる。

信じずにはいられなかった。

アルフォードは、カートが運転する車に轢かれたはずなのに、傷は家に帰った時にはほぼ治っていた。

目の前でそれを見せられたのだ。信じないはずがない。

それに、彼は見ていた。

食器棚、普通の人間ならば鏡の様に姿が映し出されるはずのガラス戸。だがそこにはカートしか写っていなかった。


「…これで…。」

カートは心の奥から湧き立つ興奮と興味を抑えられなかった。少年の頃の純粋な気持ちが蘇る。

息も少し荒かった。


そしてそのまま豚の首に包丁を入れ、桶に血を溜めた。


カート・ダレル43年の人生の中で彼は今、一番気分が高揚していた。




ーーーーーーーーーーー


アルフォードはカートが部屋を出た後、部屋にある家具や電化製品を眺めていた。


「ふむ…椅子や机などは200年前と然程変わってはいないようだ…。

だがしかし、この四角く黒い物体はなんだ

厨房も何か違う。小さい厨房だ。鍋などもあまり変わりはないが火はどうやって付けるのだ?この丸い物で火を付けるのか?」

アルフォードはガスコンロのツマミに手をかけた。


「Low...Highと書いてある。やはりこれで炎を調節するのか?」


アルフォードはそのままツマミを握っていた手を捻った。

だがツマミがガチガチと音をたてるだけで回らない。


「む…?動かないぞ。なんなのだこれは…。」


そのままアルフォードは項垂れる様に前のめりになった。


カチッ


その瞬間、火が付きアルフォードの髪の毛の先を焦がした。


「ぬおォ!!熱いッ!火が付いただと?!」


アルフォードは素手で髪を払い火を消した。


「まッ…まさかこいつは、こいつは前に押し込んで火を付けるのか!…そうか、これはふとした拍子に火が付き、事故が起きるのを未然に防ぐストッパーの様な役割を持っているというわけか…。なるほど考えるものだな

すると、火は逆にこれを逆に回せば消えるのか?」

ツマミを右に捻る。


「ふぅむ…。成る程、どんな原理になっているかは知らんが大したものだな。」


アルフォードはそのまま厨房を出るとテレビの方に向かった。


「キッチンよりも…奇妙なのはこの大きな板の様な物…。」


アルフォードはテレビをまじまじと見ながら観察した。


「色は黒く周りを光沢のある黒い物体に縁取られている…。その縁取りの内側…。これは薄い板…?質感はさらさらしていて縁取りの様な光沢はない…。

む…、板の横面、5センチもないこの細い面に出っ張っているものが5つ、付いている…。

一つは丸く、それ以外は三角形…?上向き下向きと交互に4つ…。」


アルフォードは丸いスイッチに指を伸ばした。


「ふむ…。これは…押すものなのか?」


アルフォードはスイッチを押した。

その瞬間。テレビが付いた。


「うぉおおおおおおおぉおぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


アルフォード278年の人生の中で彼は今、一番驚いていた。


「な、なんだ…こっこれはッ…こッ腰が抜けたァ!!」


テレビにはコメディアンがゲストと喋っている映像が流れていた。


「これは…悪魔の道具か…?!この時代の人間は皆これを持っているのかッ?!」


アルフォードは他の4つのスイッチに目線をずらした。


「ほッ…他の4つの突起物は何なのだろう…こ、これは確かめられずにはいられないッ…!」


アルフォードが触ったのは番組切り替えのスイッチだった。




パニック映画だった。

テレビには、恐竜が大きくなった様な怪物と戦車や戦闘機が戦っている映像が流れている。


「うッ…うおォォォおおおおおおおぉおお!!!!!!!!

こッこれはァ!!悪魔の化身かァッ!!人間が悪魔の化身と戦っているのかッ!

驚いたッ!この時代は戦争の様子を一般市民が見られるようになっているのか!

すると!この板は!!今世界で起こっていることを見ることができるものなのか?!」


アルフォードはテレビを観察し、考察し、これが魔法の板の様なもので世界中のいろいろなものが見れる物だと解釈した。


「凄いッ!!こんなに近くにいるのにこの怪物の被害を受けている様子はないッ!しかもッ!!人間と怪物と人間が乗っている謎の物体の間を高速で移動している!!

ここまでッ…ここまで文明は進化していたのかッ!!!!!」


アルフォードは叫んだ。が、瞬間「いや、それは作り物ですよ。」

カートだった。手には血が並々入った桶を持っていた。


「作り物だと…?とてもそうは見えんぞ?どう見ても本物ではないか。」

怪訝そうな表情でアルフォードは言う。

「それだけ文明…科学が発達したということですよ、アルフォードさん。人間はもう月に足を踏み入れているし、宇宙には人間の作った衛生がたくさん飛んでる。それに兵器だってそのテレビに映ってるような物以上の恐ろしいやつがたくさんあるんです。」


薄ら笑いを浮かべながら早口で言う。


「この箱…テレビというのか。」


カートは続ける。

「恐ろしいんですよ、科学ってやつは。今や一国に何発も恐ろしい爆弾がある。

しかもそいつは1発落とせば一国、いやもっと大きな被害が出るんだ。たった1発で…。

この映画なんて比較にもならない。」


アルフォードは黙って聞いていた。

口を横に結び、表情には翳りが見えた。


カートはアルフォードのその様子を見て我を取り戻した様に笑って言った。

「あぁ、すまなかったね。つまらないだろう。さぁ血だ。」


「…すまない。」

アルフォードは桶に手を入れた。

指先から、とくとくと血が血管を伝い身体中を巡っている様だった。


「口からは吸わないのか?」

指先から血を取り入れるなどとはどの文献にも載っていなかった。


「ああ、口から吸うのは処女の生き血だけと決めている。」


全て血を吸い終えた様だった。桶には一滴も血は残っていなかった

アルフォードの肌は先程の病的な程白い肌より、少し赤味が増していた。


「ふぅむ…やはり豚では…腹は満たせるが英気を養うことはできんな…。」


美しい。カートはそう思った。

決してカートは同性愛者ではない。

だがアルフォードにはそう思わせる色気と雰囲気があった。


「ところでカート、さっきの話だが、なぜ…なぜ人間はそんな物を作ったのだ?」

アルフォードの目は真剣そのもので彼の怪しい色気と合間ってカートは一瞬言葉を詰まらせた。


「戦争で負けないため、としか言えないよ。あとは慢心かな…どんどん調子に乗ってやっていくうちに、終わるに終われなくなってこの様さ。くだらないよ、人間なんて生き物は。」

ふぅ、と息をつくとカートはアルフォードを一瞥した。


「ふむ…。荒んだ世になったものだな。こんなに便利な物があって良い感じなのだが…。」

アルフォードは少し考えこんでいるような感じだった。


カートは迷っていた。

いや、迷っているというよりは躊躇していた。

言おうという決心はしていた。

だが実際に目の前で、吸血鬼にそれを言うとなるとやはり恐怖はあった。


カートが口を開きかけたその時、

「わかっている。」

ぽつり、と一言。静かだがとても重い響きを感じさせた。


「今までにそういう奴は何人かいた。だがそいつらは、この能力を利用し悪事を働こうとしている奴か、その場のノリというのか。一時の興味でなろうとする後先考えないやつばかりだった。」


アルフォードは自分の考えを悟っていた。カートはそれがバレて一気に血の気が引いた。


「断ると十字架を出してくるやつもいてね…。あの時は困った。死体をどうするか、放置すれば吸血鬼の仕業と知れて騒ぎになるかもしれなかったからな。」


カートは息を飲んだ。

俺も殺されるかもしれない。

血を抜かれて?それとも別の方法で…?


「一人だけ…吸血鬼にしてやった奴がいたんだ。いい奴だった…。だが奴は馬鹿だったのだ。日の出前になっても暴れ…陽を浴び、消滅した…。

いい奴だった。私を守るために警察の足止めを…馬鹿なやつだった…。」


カートは思った。彼は吸血鬼になってから一人だったのだろうか。何年も孤独だったのだろうか、仲間が欲しかったのではなかろうか。


「その…、吸血鬼にした人は…友達…だったのかい?」

アルフォードの表情は変わらない。

「友達…とは少し違う。まあ腐れ縁のようなものだ…。」


「その後はずっと一人だったのか…?」

「ああ、それから27年間、眠りにつくまで一人だった…。まあそんな長い時間ではなかったよ。」


アルフォードは少し苦笑いに近い表情を見せた。


「俺を吸血鬼にはしてくれないのか…。」


カートはもう諦めていた。

アルフォードの過去を聞き、彼はもう他の人間を吸血鬼にはしないだろうと思ったからだ。


アルフォードはふっ息を吹くと笑みを浮かべた。


「いや、豚の血と、ここまで連れて来てくれた礼だ。

お前を我が同胞に迎え入れる…。お前は私を楽しませてくれるのだろうな?」

そう言うとアルフォードは静かに笑った。


カートは思った。

なんだかんだ言っても、やはり元々アルフォードは人間。一人は寂しかったのだ。




2012年

吸血鬼アルフォードは200余年の孤独から解放された。




To Be Continued.

次がいつになるかわかりませんがゆるゆると更新しようと思います

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