2045年のラブレター
夜。恵子はノートパソコンのメールをチェックしていた。
件名:恵子さま、昼間の件で
今日はほんとにごめん。20年の付き合いだからって油断した。
いつも君は僕のことを見てるって自惚れてた。
大学で僕が消しゴムを試験中に落としてしまって、その時君が監督官に挙手して、消しゴムを拾ってくれてから、僕は君を意識し出した。今でも忘れちゃいない。
ほんとに君の事が大好きなんだよ。不甲斐ない僕を許しておくれ。
圭一より。
何これ?一向に思い当たらない内容のメール。でも名指し。ちょっと気味悪くて恵子はそのメールを迷惑メールに割り振った。
数日後、期末テストが始まった。
憂鬱な数日間。ここを乗り切れば夏休みがやって来る!
「あっ!」
試験中、後ろの席から声がして、ころころと消しゴムが転がってきた。恵子は数日前のメールに既視感を覚えながら、挙手して試験官に伝えた。
試験会場から出るときに、1人の青年が恵子に追いついてお礼を行った。
かっこいい。
恵子はドキドキした。
「僕は圭一っていいます。よかったらお礼させてください」
「は、はい」
もちろんです、と心で思った。
その日、夕食は喫茶店で圭一のおごりだった。
「恵子ちゃんは夏休みの予定決まってるの?」
「いいえ」
「じゃあ、一緒に海に行かない?」
「行きたい。でもカナヅチなの」
「じゃあ、海岸散策しようか」
「はい」
いい雰囲気だった。
帰宅してからノートパソコンを開き、あのメールをメインに移動した。
メールの日付が20年後の2045年になっている!
不思議なことだ。
海に行った。風が心地よく、カモメが飛んでいた。ピンクの貝殻を拾い、きゃあきゃあ言いながらデートした。
デート!そう、それはたしかにデートだった。
「恵子ちゃん」
圭一が耳元で囁いた。
「圭一くん」
一瞬、唇と唇が触れそうになった。
「いや!」
どん、と恵子は圭一を突き飛ばした。
「なんだよ、そっちだってその気だっただろう!」
「展開が早すぎる!」
「……帰ろうか?」
その日はしょんぼりして帰った。
「また未来からメール来てる!」
件名:あのときみたいだね
恵子。いつも君の気持ちを考えないで先走ってごめん。
今日もそうだったから、そろそろ愛想尽かされるんじゃないかってヒヤヒヤしてるよ。
ほんとにいつもごめんな。
圭一
恵子は居てもいられず、電話をかけて仲直りした。
「未来からメールでラブレターが届くって?!」
圭一がびっくりして恵子のノートパソコンを見た。
「どう思う?」
「別に、いいんじゃない?」
「えー?」
「本物はどうかこれからわかっていくんだろ?楽しみじゃないか」
「もう」
2人は仲睦まじく微笑んだ。




