凍った日々に愛の炎を
やあ!麦畑だよ_φ( ̄ー ̄ )
バレンタイン記念にとある傭兵のお話を書いてみたよ〜。直接的な表現はあまりないのだけれども、微妙な表現はあるので一応指定を付けておくねー。
私は傭兵だ。休みなどない。今日も戦争へと駆り出されて、互いの銃弾を交わしているところさ。私は金の奴隷。金に振り回される人生を送っている。家族は…遠い昔に捨てた。他人を養う余裕なんてあったら、そもそも傭兵なんてやっていない。
私の従ずる国は戦争の虜。利益を求めて東奔西走。お陰で四方八方に敵を作った。四面楚歌。つまりは、負け戦なんだ。私の世界は終わりを告げる。もっとも、これで77回目だが。ここまでくると笑えてくるな。アン・ラッキーセブン?
傭兵は良い。金の潤い具合が他に比べて断然良い。それは当然のことだと思っている。戦いたい奴は大きく分けて2つだ。
1つは、単純に戦うことが好きな奴。戦闘狂…とでも言えばいいのか。とにかく、戦っていないと落ち着かない奴等。これにはやはり種類があって、先天的な性質または後天的な性質と私は呼んでいる。何らかの理由で戦うことになって、それで新たな目的のためにまた戦って…と繰り返していく。すると人を傷つけ、殺す感覚が麻痺してしまう。よくあることなのだ。
もう1つは、金が欲しい奴。私のような奴だ。そもそも、各国が手当たり次第に戦争を仕掛けているのは利益のためである。少なくとも、私の世界ではそうだ。パラレルワールドという概念が流行った頃は、それはそれは大変だったよ。皆がパラレルに夢を見て、現実から逃げたくなって、死体が飛んだ。
はあ。まただよ。また、戦争が始まった。金は…まだ足りないな。仕方ない。
「悪いけど…死んで?」
私は足を挫いた敵兵に向かって引き金を引いた。
はあ。またか。夜逃げでもしてやろうかな?
「止めとけ。真昼間だぞ。それに、体力の無駄だ。」
分かってる。
「逃亡者は敗者。敗者には死を。散々言われただろ?」
分かってる…。
「俺だって逃げてーよ。嫁が待ってるしよぉ。」
分かってる!
「…最近、嫁と連絡が取れなくなったんだ。ほら…連絡線を敵に破壊されちまったから。」
情報は、いつの時代も要。たとえ劣勢でも情報ひとつで盤面がひっくり返った…など、いつでも起こり得ることだ。
「だから、心配で…。」
ああ、心配だとも。敵兵の死に際がな。しかしながら、嫁のことは心配要らない。
「お、おい…!なんでだよ!!なんで、俺の嫁が…。」
私は敵に名前を付ける。この前の奴は「捻挫君」。そして、目の前の奴は「嫁狂い」。嫁狂いは兵士の中なら優秀な部類に入る。戦闘能力良し、服従度良し。ただし、全ては奴の嫁の為…らしい。
ところで現在、嫁狂いの周りには敵が潜んでいる。本来ならば気づいているはずだ。しかし、奴は嫁を失ってそれどころではない。気づいていない前提で考えると、ここで普段の私なら「気をつけろ!近くに敵がいるぞ!!」と教えてやるところだが、今の私にその義理はない。義理はないのだけど…。
「…良かったな。」
ゴシュウシンのところ、失礼した。
寒い。寒すぎる。
「アッツ!!」
「は?」
私は傭兵。雇われの傭兵である。昨日の敵は今日の戦友。昨日の戦友は明日の敵。だから、世界中を転々とする。
世界を回されれば色々な奴と出会う。今日の戦友は、少し変わった奴みたいだ。いや、戦場にまともな奴は残っていないのだろう。
「今の一撃、見たか?最高にイケてるぜ!」
寒空の下で敵味方関係なしに興奮している君は、途轍もなく滑稽だ。考えてもみてくれ。氷点下21℃で元気に飛び回ってる同僚が居たら、ちょっと引くだろ?おまけにソイツが新人兵士で寒冷地に出向いたことがなかったのならば、尚更だ。
「ああっ…。死んじまった!惜しかったなぁ。俺がスカウトしたかったのに。」
駄目だろ。今の「バク宙野郎」は敵兵だぞ?たとえ味方だとしても、近接格闘型の部類はこの部隊では扱いづらいから却下で。
待てよ。味方なら問題ないのか。戦争は人数勝負なこともあるしな。技術力…は、上がなんとかしてくれるだろ。私たちはただ、目の前の敵を潰せばいい。頭を使わない、肉体がある程度育っていれば誰でも出来る仕事。それが下っ端のあるべき姿。
まあ、そう言い切れないのが現実。最低限の知能がないと生き残れない。世知辛いことだ。
「どうしたんだ?ため息吐いちゃって。栄養失調か??」
栄養失調だって?前からだろ。
「安心して!さっきレベルの技は見れないかもしれないけど、目の保養ぐらいにならなるよ!」
撤回しようか。馬鹿でも強ければ生き残れる。戦いで空腹を誤魔化すぐらいなら、やってのけよう。しかし!戦いを眺めて興奮しろ、だって?冗談だろ。
「えぇ。あの程度じゃあもの足りないのか?贅沢な奴!」
よし、決めた。今日からお前の名前は「戦」だ。処刑方法は千本ノックで良いか?同じ'セン'読みだし。
「ああ、なるほど。寒かったのか!手が震えているもんな。」
戦が私の手に触れて温めようとしてきた。珍しく鋭いじゃないか。だが、少しだけ違うことがある。これは、怒りの震えだ。
「イテェ!!何すんのさ。」
戦の手を叩いた。本来なら骨を折ってやるところだが、今は味方だからこれで勘弁してやろう。使い物にならないと困るからな。敵になる日までは、大人しくしててやる。
戦が焼かれた。彼が燃料になったのは、我が雇い主の秘密を知ってしまったからだと他の同僚から聞いている。
「これで暖が取れたね!」
気になる。
「まったくだ。だが、所詮は一時的なものだ…。」
コイツを燃やしてまで隠したかった秘密とは、一体何なんだ?
「戦闘狂だったんだから、敵軍に突っ込ませてやれば良かったのにな。」
戦闘狂…。確かに、あいつは戦闘が好きだった。自分に言い聞かせていた。
「ま、その話はおしまい、おしまい!せっかく暇を貰えたんだから、楽しい話をしようぜ。」
夢見がちが、1匹。
「楽しい話?そんなものがあったっけ??」
お気楽抹消ちゃんが、1匹。
「アレだよ、今日は2月14日!覚えてるか?」
『バレンタイン!』
記念日抱き枕が、2匹。
「馬鹿!バレンタインの話はするなってお達しでしょ?」
慎重派お嬢が、1匹…。
「良いじゃないか。あの戦闘馬鹿が生きてたら、あいつが言ってたことだろうし。」
…皆は、知らないのだろう。その「ちょっとだけ」が身を滅ぼす最も簡単な考え方だということに。
「ちゃんと、始末したんだろうな?」
煌びやかな隊服に身を包んだ男が、部下に確認をとっている。
「勿論です。あの者はもう、何処にも存在しておりません。」
部下は得意げに、はきはきと答えた。あんなに表情を出しちゃって。敵兵が来たらどうする気なんだ?裏方で活躍しすぎて、表情ひとつも命取りなことを忘れてしまったのだろうか。
「よろしい。アレがバレたら、大変なことになっていた。よくやってくれたね。今回の報酬は弾んでやるから、楽しみにしていなさい。」
「!ありがとうございます、隊長!!」
馬鹿馬鹿しい。
「…?今、誰かが居たような…。」
熱い。どうして私は、死んだはずの人間からキスをされているんだ?
「んっ…!?」
「なあっ?!ハシタナイ!!」
目の前に迫っていた敵兵が悲鳴をあげた。そりゃあ、見てしまった人はドン引き必須だ。運が悪かったな。でも…。
「戦争中によそ見が許されるとでも?夜更かしさん。」
「キスビックリ星人」は、私によって引導が渡された。どうぞ、安らかに地獄へ堕ちやがれ。
「酷い奴等だよ、ホント。キス中に襲ってくる礼儀知らずがいるなんて!君もそう思うだろ?」
寒い、暑い、熱い、寒い。呼吸を乱している場合ではない。とりあえず、現状を整理するんだ。
今日は2月14日、バレンタイン。私は極寒の戦場にいて、今日の戦友達と戦っていて、上司は失踪して…。
でも戦況は寧ろ良くなって、死んだはずの同僚「戦」が実は生きていてー。
ーキスをしてきた。チョコレート味のキス。
「は??」
駄目だ。まったくもって脈絡が無い。どうして私が同じ兵士からチョコレートを貰わなくてはならないんだ?仮にチョコレートが成立したとしても、だ。何故、口で渡してきた??
「…君の栄養失調を治してあげようと思ってね。気に入ってくれたかい?」
あ、口移しか。しかし、感染症の問題もあるから普通に手渡ししてほしかった…。アレだと量が心許ないし。
「お!血行が良くなっているじゃないか。良かった。」
敵を油断させる手段。それは、星の数ほど存在する。どんなにくだらないことでも、相手が反応すれば、それは隙に繋がる。それに、たとえ口移しであろうが、戦争中での空腹満たしは重要なことだ。そう、理屈は分かっている。だが、選択の余地があるというのにわざわざキスを選ぶとは。
「いや〜、隊長に刺激されちゃって。本当は終結まで生きてたら言おうと思ってたんだよ?でもさ、隊長ったら敵の女とxxxしてやがったんだ!最低だろ?」
マジか。
「お、俺は、その。そういうことはするつもりはないぞ?少なくとも、終結までは。」
終結したら、どうするつもりなんだか。隊長達にあてられちゃったのかー。可哀想に。
「とにかく!それでおっかなびっくりしてたら見つかってさ。でも隊長はお楽しみ中だったから、俺の処分を部下に任せてたんだよ。しかもその部下、顔以外俺にそっくりだったんだ。だから、顔を見えにくくして成りすましたらバレなかったんだよね。」
ええ!?隊長…。
「あとは分かるだろ?同志に隊長の手下を焚き火させてる間に隊長と女を1つにしてやったのさ。挽肉万歳。」
それは、まあ…寛大な心遣いだ。たとえそれが挽肉ハンバーグにされることだったとしても、彼等にとっては幸せに逝けたことだろう。それにしても、貴重な戦力がこんなくだらないことで殺されそうになっていたのか。これだから、人間は…。
「でもさぁ。俺が見つかった時、俺を始末しに来た奴以外に何人か敵の下へ走っていったたんだ。多分、俺の死亡届でも出しに行ったんだろ。折角だし裏切り者を追う途中で何人か敵の核を破壊してみたんだけど、上手くいって良かったな!」
戦…クレイジーな男だ。やけに敵が崩しやすいと思ったら、作戦の内だったとは。ただの戦闘好きだったわけではなく、敵情を見極めた上での味方ごと欺く演技。なんてことだ。君には脱帽だよ。
「まあ、ざっとこんな感じだ。で、返事は?」
返事?
「えっ。まさか、聞いていなかったのか?参ったな…。これだと、俺がキス魔みたいになるじゃないか!」
あれ、違うのか?てっきり、ソッチ系だと疑っていたところなんだが…。
「じゃ、じゃあ、もう一回言わせてくれ。好きだ!!」
あらそう。戦、アンタ私のことが好きなんだー。
「…へ?」
「君のことを愛してる!君の戦場での迷いのない姿がカッコよくて。でも、仮眠中の君は可愛くて。キスした時の君はもっと可愛かった…。」
可愛…!?
「叶うことなら、君をもっと見ていたい。違う感情、反応を見せてほしい。戦争中だって何度も自分に言い聞かせてたけど、それでも好きで。だから、こっそり調達していたチョコレートを渡して告白しようと思っていたのに、気持ちが先行して…。」
うん、そうか。動いてしまったのなら、仕方がないことだな。うん…。
それからというもの、私の調子はすこぶる良かった。過去最高と言っても過言ではない。短期決戦は頭を空っぽにした方が逆に上手くいくことがあるという話を耳にしたことがあったが、噂は本当だったのか。私は昇進に昇進を重ねて、とある軍の幹部にまで昇りつめてしまった。雇われの傭兵では比べ物にならないぐらい、お金を貰った。遂に、私は金を
従わせる側に回った…ということだ。
戦は…とにかく優秀だった。戦績に合わせて昇進も比例式でどんどん増えていって、最終的に私と同じ地位になってしまった。戦場は実力主義。実力や経験が認められれば即座に昇進できる。実に合理的だ。
ただし、同じ幹部でも私と彼には違いがあった。それは能力の活かし方だ。簡潔に言うと、私はよく居る指揮官、戦は参謀だ。私が全体の戦略を練っている間に、彼が外部に交渉する。彼の強さは交渉も遺憾無く発揮され、彼が参謀ポジションに就いてから早1週間で和平交渉が成立してしまった。…末恐ろしいものだ。
「イエイ!俺らの勝ち。あの日頑張った甲斐があったってもんよ。」
今となっては、懐かしいものだ。まだ雇われだった頃は戦争で遭遇する度に戦い、共闘し、そしてキスをした。そのイかれたサイクルが、いつの間にか私の潤滑剤になってしまっていたのだから呆れてしまう。
「なあ、キス…してもいいか?」
何を今更。キスぐらい、こちらからしてやるわ。
「っ…!!」
温かい。人肌とは、ここまで気持ちの良いものだっただろうか。あの時の隊長とその女も、こんな気持ちになっていたのだろうか。彼らと私達に大した差はない。単に、彼らは最低限の自制すら出来なかった。そして、運がなかっただけ。実力は知らない。まあ、私はあんな輩に負ける気はしないけど。
「…んっ…。」
心なしか、いつもより彼が嬉しそうに見える。私からしたキスだといつもこうなるんだ。
戦…。いや、この名前ともサヨナラバイバイだな。いくら私の脳内で完結している呼び名とはいえ、そろそろ本名で呼んでやろうじゃないか。彼の努力もあって戦争も落ち着くことだしね。
私達は元傭兵。休みはたっぷりとある。今日も朝日に照らされる窓の内で私と彼はキスをした。
この話はバレンタイン記念の話(終盤の時期もそのくらい)だよ。設定がガバガバだったかもしれない…が、小説なんで許して☆




