第3章 変わらない
「わー! 近い、離れて。そ、そうやってすぐちゅうしないでよ!」
「えぇ〜、いいじゃないですか。ほらほら、お嬢様。俺とデートしましょ」
手を繋げば顔を真っ赤にさせて、顔を近付ければ恥ずかしそうに涙を溜める少女。顔を俯かせれば赤い耳を覗かせる、その愛らしい姿に今日もネオはご満悦。
自分に飼われている弱い人間が、召使いのフリをしている悪魔の上に立っていると勘違いしているのも。作られた偽りの感情に気づかないまま、本気で恋をしていると思っているその可愛らしい笑顔も。ネオにとっては、全てが愛おしくて堪らない。
「そういえば、ネオって私の召使いやめたら次はどこに行くの?」
「さぁ、どこでしょうかね。お嬢様のお婿さんとか」
「な、お、お婿さんって! だ、ダメだよ。ネオはもっと大出世して――」
冗談すらも真に受けて、慌てふためく少女は気づかない。ネオの伸びる影に生えている、人ならざる者の角と羽に。否、例え気づいてもまた魂と紐づく大切なその名前を呼ばれ、記憶から消されるだろう。
移ろう季節の中。二人は幸せそうに笑い合う。何百年の時が流れても二人はずうっと一緒。
悪魔と契約をしたあの日から、少女の時は止まってしまった。大人になる手前で、ネオがこの時間を愛してしまったから。触れる度に魔力を少しずつ馴染ませて、そうして人から逸脱を。
「ま、まぁ。ネオがどうしても、大人になった私をお世話したいんだったら……雇用の再契約して召使いのままにしてあげてもいいけど」
「あはっ♡ 大丈夫ですよ。だってお嬢様は私がいる限り、自立なんてぜーったい出来ませんからね」
「な! そんなのわかんないじゃん!」
最初はほんの好奇心。けれど、赤ちゃんの頃からお世話して、自分に懐いてくれる少女にネオは少しづつ絆されてしまった。悪魔は忌み嫌われる存在。恐れられ、群がることもなく孤独。だからこそ、無償の愛を癒しをくれる少女に執着心を抱いてしまうのは時間の問題だった。
彼氏が出来たと言われた当初は、腸が煮えくり返りそうだった。しかし少しの間くらいは、人としての楽しみも与えてあげようと許したらこれである。たとえ相手が友人であれと、ネオは一日も少女との時間を奪われるなんて許せなかった。
だがこれからは、何の邪魔も入らない。入ることなど出来ない。二人は永遠に、何度でもやり直すのだから。
「ねぇ、お嬢様。――これからも、末永くよろしくお願いしますね♡」
読んでいただきありがとうございます。
良ければブクマ登録、評価して頂けると嬉しいです。
モチベーションに繋げていきます。




