第3章 そうして
世界に平和が訪れた。
人々は空を見上げ、二度と邪神が訪れないようにと祈りを捧げる。
「クラン、あのねあのね! きょうは、おそとでおさんぽしたい! ぴくにっく」
「あぁ、今日は天気がいいからね。私の傍から離れないと、約束できるなら、ここの庭園行こうか」
クランは少女の手を引き、外へ出た。下界に住む人々には少女を贄とし与えてくれるのであれば、二度と手を出さないと結んだ約束。
その約束を違えられない限り、クランは下界に降りることはないだろう。
「クラン、これからもずっといっしょにいようね! やくそくだよ!」
「あぁ、約束だ」
なぜなら、初恋であった少女の魂を手に入れることが出来たのだから。
二人は笑う、花畑の中央で。たった二人きりの世界で花々は祝福するように揺れる。
「そうだ、これをキミに。手を、出してくれるかい?」
少女の柔らかな黒髪がふわりと靡いた。澄んだ眼は以前とは異なる海を宿す。ここに来る前は、そんな容姿ではなかったというのに。鏡も時計もない空間で、少女は異変に気付くことができなかった。
「わっ、ゆびわだ。かわいい!」
「気に入って貰えてよかった。あの日から、キミは私の……私だけの眷属になってくれたからね。愛してるよ、これからもずっと。永遠に」
少女の左手の薬指に、小さな指輪が咲いた。
料理をする度に手を怪我するクランの思惑に、気づけなかった少女。その身が染まるまで食してしまったスープは、もう不要なのだろう。
――今の二人は、美味しそうにケーキを頬張っているのだから。
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