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愛が重い人外さんに執着される短編集  作者: つゆ子
邪神さんが初恋の女の子を籠絡するお話
3/12

第3章 そうして

 世界に平和が訪れた。

 人々は空を見上げ、二度と邪神が訪れないようにと祈りを捧げる。


「クラン、あのねあのね! きょうは、おそとでおさんぽしたい! ぴくにっく」

「あぁ、今日は天気がいいからね。私の傍から離れないと、約束できるなら、ここの庭園行こうか」


 クランは少女の手を引き、外へ出た。下界に住む人々には少女を贄とし与えてくれるのであれば、二度と手を出さないと結んだ約束。

 その約束を違えられない限り、クランは下界に降りることはないだろう。


「クラン、これからもずっといっしょにいようね! やくそくだよ!」

「あぁ、約束だ」


 なぜなら、初恋であった少女の魂を手に入れることが出来たのだから。

 二人は笑う、花畑の中央で。たった二人きりの世界で花々は祝福するように揺れる。


「そうだ、これをキミに。手を、出してくれるかい?」


 少女の柔らかな黒髪がふわりと靡いた。澄んだ眼は以前とは異なる海を宿す。ここに来る前は、そんな容姿ではなかったというのに。鏡も時計もない空間で、少女は異変に気付くことができなかった。


「わっ、ゆびわだ。かわいい!」

「気に入って貰えてよかった。あの日から、キミは私の……私だけの眷属になってくれたからね。愛してるよ、これからもずっと。永遠に」


 少女の左手の薬指に、小さな指輪が咲いた。

 料理をする度に手を怪我するクランの思惑に、気づけなかった少女。その身が染まるまで食してしまったスープは、もう不要なのだろう。


 ――今の二人は、美味しそうにケーキを頬張っているのだから。

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