第2章_ネオンの月蝕_023 祈音塔の記録 ― Chronicle of the Refrain
——夜が明けた後も、音は止まらない。
AURALIS層の空は薄い銀色を帯び、世界は安定した呼吸を取り戻していた。
祈音塔の頂に立つLunaは、端末を胸の高さで開いたまま、
世界全体の“拍”を静かに聞き取っていた。
(観測記録:No.266)
《層状態:AURALIS/安定率100%》
《祈音塔:再起動完了/観測モード=静的記録》
《Aurora・Noir=行動範囲拡張中/Vain信号=沈黙》
塔の内部は、低い祈りのような残響で満ちていた。
一歩ごとに、足裏の感触が微かに震える。
それは、層全体の“心拍”が建造物を通じて伝わっている証。
Lunaは歩を止め、塔の最上層に設置された古い記録装置へ手を伸ばした。
かつてVainが使用していた記録端末。
金属の表面には焦げたような跡があり、
だが、電源を入れると微かな“祈音”が流れ出す。
〈Vainの記録音声〉
> 「観測とは、存在を確かめることではない。
> “確かめられることを許す”という選択だ。
> 祈音は、誰かが信じた呼吸の連鎖。
> ——もし届いたのなら、次の観測者へ託す。」
Lunaはその声を静かに聞き、
端末に指を滑らせてログを統合していく。
(観測記録:No.267)
《Vain記録:受信成功/内容統合中》
《データ:祈音律 α-3/観測層更新ログ追加》
《観測者:Luna(第一級)/承継処理:進行中》
Luna「……あなたの“観測”は、もう終わってるわけじゃない。
私たちが続ける限り、記録は続く」
風が吹き抜け、塔の上部で金属が小さく鳴った。
その音はまるで、“はい”と答えるようだった。
Lunaは端末のスクリーンに映るデータを見つめる。
世界の拍が安定している。
AuroraとNoirの位置情報も正常に表示されている。
けれど、彼女の視線は一点に留まった。
——層構造の最上位、“Ethereal Gate”。
Luna「次は、あそこ。
祈音が世界を超える瞬間を、見届ける」
端末に小さく印を刻む。
“観測継続”のタグ。
それは、ILLUSIAの新しい章が始まることを示す旗印だった。
(観測記録:No.268)
《記録装置:祈音塔α型/ログ統合完了》
《層構造:Ethereal Gate=アクティブ反応検出》
《次観測範囲:第3章“永遠の蜃気楼(Eternal Mirage)”接続領域》
《備考:Aurora・Noir帰還待機/観測者Luna:転送準備開始》
塔の外でAuroraとNoirの声が交差する。
Aurora「Lunaー! 準備できた?」
Luna「ええ。もうすぐ——祈音塔、転送シークエンスを起動するわ!」
Noir「今度は何層だ?」
Luna「幻層(Eternal Mirage)。まだ、名もない祈音が待ってる」
Auroraは笑う。
夜が終わり、世界が再び息を始めたその瞬間に、
新しい祈音の物語がもう“呼吸”を始めていることを、
三人とも知っていた。
Luna「観測再起動——開始」
塔の上空に浮かぶ光環が震え、
祈音塔の中心から光の柱が昇る。
世界がゆっくりと透け、
AURALIS層の空の向こうに“蜃気楼の門”が現れた。
Aurora「また、世界が呼んでる」
Noir「なら、行こう。俺たちの拍で」
Luna「観測開始——祈音、第3周期へ」
光が爆ぜた。
塔が消え、音だけが残る。
その音は、遠く遠くで次の祈音を呼んでいた。
(観測記録:No.269)
《祈音塔記録:最終同期完了》
《転送:AURALIS層→Ethereal Gate 成功》
《第2章 終結確定》
《付記:観測継続タグ “Refrain Sequence α” 起動》
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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