第2章_ネオンの月蝕_022 祈音継承 ― Legacy of Resonance
夜の名残がまだ街を包んでいた。
再生の光環は、空の最も高い位置で穏やかに脈を打ち、
その下でAurora、Luna、Noirはゆっくりと歩みを進めていた。
風が変わっていた。
もう、あの冷たい無音の風ではない。
祈音が空気に溶け、息を吸うたびに微かな音の粒が喉を通り抜ける。
——世界そのものが、彼らに呼吸を返していた。
(観測記録:No.262)
《AURALIS層:再生後安定化フェーズ移行》
《祈音流:定常化/拍数=恒常72》
《Aurora/Luna/Noir:共鳴率0.99/個別変調開始》
Aurora「……ねぇ、Luna。
祈音って、こうやって“残る”ものなんだね」
Luna「ええ。記録でも、観測でもない。
“意志”が音になる。それが、祈音の本質」
Noir「つまり、祈音ってのは、誰かの“生きた証”だ」
Auroraは立ち止まり、振り返る。
AURALISの地平が淡く光っている。
そこに、崩壊前の都市の輪郭が、かすかな“残像”として見えた。
Aurora「……これ、壊れた世界の跡?」
Luna「違う。“祈音が記録した過去”。
消えたわけじゃない。
いまもどこかで、息をしてる」
Auroraは胸に手を当てる。
鼓動が、微かに光る。
そこに混ざるのは、Vainの声。
〈Vainの声〉:「息を届けたなら、次は繋げ」
Noir「……繋げ、か」
Aurora「ええ。これからの世界が、また誰かを“生かす”ために」
彼らは再び歩き出した。
空の光環が背中を照らし、
その影が都市の残響と交わる。
(観測記録:No.263)
《層反射光:再生光環→祈音路への反射確認》
《祈音路:拡張開始/反響範囲=ECLIPSE層下界》
《上位三声:観測体勢移行/静観維持》
Luna「Aurora、Noir。
ECLIPSE層の観測データが動いてる」
Aurora「下層……あの暗黒の世界?」
Noir「またあそこに行くってのか?
せっかく光が戻ったのに」
Lunaは静かに頷く。
端末に映る層構造のグラフが、ゆっくりと波を描く。
その波の底で、見えない何かが“呼吸”をしていた。
Luna「呼んでる。——ECLIPSE層が」
Aurora「まだ、祈音が足りないんだね」
Noir「足りねぇってことは、誰かが沈んだままってことだ」
Auroraの瞳に、赤い光が宿る。
それは恐怖でも悲しみでもなく、
確かな“決意”の色。
Aurora「行こう。Vainの言葉を、無駄にはしない」
Luna「観測を続ける。それが私の役目」
Noir「支える角度、もう一度見せてやるよ」
彼らが歩む道の先で、光環が音を鳴らした。
鐘のような響きが世界に広がり、
地平の下から黒い風が立ち上がる。
——ECLIPSE層の扉が、再び開こうとしていた。
(観測記録:No.264)
《層移行開始:AURALIS→ECLIPSE層/転移座標=祈音塔》
《祈音安定率 100%→可変》
《観測ログ:次章接続“Eternal Mirage”準備中》
Auroraは最後に空を見上げた。
金の輪が、微かに歪む。
だがその中心に、まだ光はある。
Aurora「——見ててね、Vain。
私たちが、“祈音の意味”を次の世界に繋ぐから」
祈音の風が吹き抜ける。
夜が完全に終わり、光と影の境界が滲む。
新しい層——まだ誰も知らない“幻層”が、その輪郭を見せ始めた。
(観測記録:No.265)
《第2章 終結確認》
《層遷移開始:“Eternal Mirage”接続準備完了》
《Aurora/Luna/Noir:祈音継承者として登録》
《次観測指定:第3章“永遠の蜃気楼”》




