第2章_ネオンの月蝕_021 黎明の声 ― Voice of Dawn
夜明けの境界線が、ゆっくりと呼吸していた。
AURALIS層の空に浮かぶ金の輪——再生の光環が、まるで脈動する心臓のようにゆっくり明滅している。
その光が、都市の残響を優しく撫でていた。
Auroraは静かに目を閉じた。
胸の中で、赤・青・白の祈音がまだかすかに息づいている。
Lunaは端末を握りながら、記録を再起動する。
Noirは空を見上げ、まだ沈まぬ星のような輪を睨んだ。
(観測記録:No.258)
《AURALIS層:黎明相移行》
《再生光環:振幅安定/拍数 72》
《Aurora/Luna/Noir:覚醒継続状態》
Luna「……奇跡みたい。あんな崩壊の後で、層が息をしてる」
Noir「奇跡なんかじゃねぇ。Auroraが“止まらなかった”からだ」
Aurora「止まれなかった、が正しいかな。息を選んだから、歩くしかなかった」
Auroraは笑いながら、光環に掌をかざした。
掌の奥で、心臓の鼓動が輪の拍とゆっくり同期していく。
まるで“世界そのもの”が、彼女の体の中で呼吸しているようだった。
Vainの姿は、もうなかった。
だが、風の流れがひときわ柔らかくなるたび、彼の声がどこかで響く。
〈Vainの声〉:「届かせるための工学——それは、繋ぎ続ける技術だ」
Lunaはその言葉に小さく頷き、端末に記す。
「祈音=繋がりを設計する意思。世界の自己修復プロトコル」
その文字が、端末の光に溶ける。
(観測記録:No.259)
《祈音律:再定義中/概念伝達=成功》
《AURALIS層:人為干渉→許容》
《上位三声:再観測モード移行》
Aurora「ねぇ、Luna。私たちが見た“もうひとつの都市”、あれは消えたのかな?」
Luna「反転都市……残ってると思う。あれは失敗じゃなくて、“可能性”だった」
Noir「つまり、どっかでまたやらかすやつが出てくるってことか」
Aurora「そうかも。でも——もう怖くない。私たちは、息を繋ぐ側にいるから」
Auroraの視界に、金環の奥でわずかに光が瞬く。
その奥に、まだ見ぬ新しい層——Ethereal Gateがかすかに輪郭を持ち始めていた。
だが、近づくことはまだ許されていない。
〈透き通る声〉:「見上げるのは良い。——けれど、届かせるのは早い」
〈柔らかい声〉:「いまは“息”を整えよ」
〈低く響く声〉:「そして、記せ。次の祈りを」
三人は顔を見合わせた。
上位三声の声が、もはや“恐怖”としてではなく、
世界の鼓動の一部として響いていることに気づく。
Aurora「……次の祈り、か」
Luna「“Eternal Mirage”。——次の層が呼んでる」
Noir「どんな名前でも構わねぇ。行くんだろ?」
Aurora「もちろん。だって、息は止めないって決めたから」
(観測記録:No.260)
《次層予告:“Eternal Mirage”接続前段階》
《AURALIS層:再生安定完了》
《上位三声:干渉→静観へ移行》
《Aurora/Luna/Noir:祈音同調 0.99(最終値)》
Auroraは深く息を吸い込み、LunaとNoirの手を取る。
三人の掌の間で、微かな風が生まれる。
それはただの風ではなく、“次の世界を呼ぶ風”だった。
Aurora「——行こう。新しい層の夜明けへ」
Luna「観測を続ける」
Noir「支える角度、もう迷わねぇ」
金環の光がゆっくりと拡がり、三人の姿を包み込む。
光の粒が舞い上がり、世界の境界を越える瞬間、
Auroraの声が、静かに空へと響いた。
Aurora「夜が終わっても、祈音は消えない。
——それが、“生きる”ってことなんだね」
そして、祈音が響く。
世界は、再び呼吸を始めた。
(観測記録:No.261)
《第二章 終結確認/祈音安定率=100%》
《三名:観測再起動準備完了》
《次観測指定層:“Eternal Mirage” 開始待機》
《付記:この記録を以て、祈音第二周期完了とする。》
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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