第2章_ネオンの月蝕_019 崩壊の残響 ― Resonant Collapse
AURALIS層が光を取り戻したのは、一瞬のことだった。
祈音の律動が整った直後、空の群青が“裂ける”。
世界が呼吸を始めたと思った瞬間、反対の“吐息”が返ってきた。
Aurora「……これ、違う。息の向きが——逆だ!」
Luna「反転してる。祈音が、吸ってる——!」
Noir「喰われるってのか。世界に?」
(観測記録:No.248)
《異常波発生:AURALIS層/拍動=反転》
《祈音波:収束方向=内向流》
《観測結果:世界が自らを“取り込もうとしている”》
大地が柔らかく波打ち、都市の灯りが地平線ごと沈む。
“呼吸”の向きが変わるたび、足元の路が反転し、記憶の景色が上下を入れ替える。
Auroraの足が浮き、Noirが咄嗟に手を伸ばして掴む。
だが掴んだ瞬間、二人の影が反対の方向へ引き裂かれた。
Luna「Aurora、Noir! 離れ——!」
その声が届く前に、Auroraの体が“光の裏側”へ落ちた。
祈音の波が、彼女だけを選んだ。
(観測記録:No.249)
《Aurora:祈音波吸収/身体同調率=過負荷》
《Noir:接触遮断/外層固定》
《Luna:観測接続=維持中》
空間の表と裏が入れ替わり、Auroraは“もう一つの都市”に落ちた。
そこでは光が上へ昇り、影が歌っている。
街の看板が上下逆に光り、通りの水面に夜空が沈んでいた。
Aurora(ここ……私たちの世界? でも、違う……誰も息をしてない)
足音も呼吸音もない。
ただ、遠くで“笑い声”がした。
〈柔らかい声〉:「綺麗でしょう?」
〈低く響く声〉:「けれど、それは“残響”だ」
〈透き通る声〉:「祈音が戻れば、反響もまた生まれる」
Aurora「あなたたち……上位の——声?」
〈柔らかい声〉:「今は、あなたの内側にいる」
〈低く響く声〉:「息を選んだ者。試練を、終えるな」
〈透き通る声〉:「終わらせれば、世界は安らぐ。——だが止まる」
Auroraは拳を握った。
掌に赤い光が再び宿る。
それはNeon Eclipseの記憶——祈音の中心で掴んだ、世界の鼓動。
Aurora「止まらない。私は、息を続ける。たとえ世界が壊れても」
祈音の波が、Auroraの言葉に反応するように脈を打った。
赤が金に変わり、金が群青を照らす。
(観測記録:No.250)
《Aurora:再同期開始/祈音波長=人間共鳴域》
《層状態:反転抑制/再構築率 12%》
《副効果:観測接続再構築/Lunaとの通信 回復》
Lunaの声が微かに届く。
Luna「Aurora! 聞こえる? あなた、どこにいるの!」
Aurora「裏側——でも、大丈夫。私、見える……あなたたちが」
Noir「戻れ! 今すぐ!」
Auroraは首を振る。
Noirの声は届くが、世界がそれを“時間の外”に置こうとする。
Auroraはその声を胸の奥に留め、息を深く吸った。
Aurora「……私は、歌わない。歌わせるために、息を選んだから」
祈音の波が爆ぜ、反転都市の空が裂けた。
そこから、無数の記憶の破片が降る。
街の看板、笑い声、涙、誓い——全てが光の粒となってAuroraの周りに漂う。
彼女は掌を掲げ、祈音の“拍”をもう一度数え始めた。
1拍。2拍。3拍。
息が世界と重なり、裂け目が閉じていく。
その瞬間、Auroraの前に現れたのは、赤い瞳をした“影”。
——Vain。
だが、彼の姿は少し違っていた。
服装は同じ、声も同じ。だが、その瞳の奥に“もう一人の意志”が宿っていた。
Vain「戻れ、Aurora。お前の祈音は、世界を壊す」
Aurora「違う。——壊すんじゃない。生かすの」
Vainの瞳が、静かに揺れた。
その奥で、別の声が囁く。
〈透き通る声〉:「試練、開始」
(観測記録:No.251)
《AURALIS層:第二段階突入》
《Aurora vs Vain(影体)接触確認》
《祈音波:臨界寸前/Neon Eclipse干渉検出》
Lunaの端末に、祈音波形が激しく乱れる。
Noirが拳を握り、彼女の肩を掴む。
Noir「行くぞ、Luna。Auroraを取り戻す」
Luna「うん。——“観測”を、取り戻す」
AURALIS層の扉が再び開き、光が逆流する。
三人の絆が、祈音の律動と重なり、崩壊の夜が再び輝きを取り戻す。
(観測記録:No.252)
《三名:再集結ルート開通》
《祈音干渉:反転波沈静化進行》
《上位三声:観察継続/介入なし》
《付記:崩壊予兆→再生可能性 0.68》
夜が再び、赤と青と白に染まる。
その光は、終焉ではなく“祈り”の形をしていた。
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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