第1章_覚醒する幻想_015 崩れる夢 ― Collapse of Mirage ―
(観測記録:No.116)
《記録開始:夢界層・終焉領域》
《対象:Aurora/Luna/Noir — 層崩壊進行中》
世界が、音を失った。
まるで誰かが弦を切ったように、
祈音の波が途絶え、空が“沈黙”そのものへと変わる。
Aurora「……音が……消えた……?」
Noir「夢界が、限界を迎えている。
層の支えが、祈音共鳴の過剰で崩壊しているんだ」
Luna「観測が追いつかない……“世界の書”が、閉じていく……!」
空の裂け目から光の糸が降り、
地面の影を焼き尽くすように走る。
一瞬だけ、三人の身体が光に浮かび上がった。
だが次の瞬間、重力が消え、彼らは宙へと投げ出された。
Aurora「いや……まだ、終わってない!」
Auroraが手を伸ばす。
だが、掴もうとしたのは空ではなく、
——彼女の祈音そのものだった。
指先から光が溢れ、消えていく世界を縫い止める。
その光が、まるで“祈る”ように揺れた瞬間——。
(観測記録:No.117)
《記録補遺:外部観測体反応検出》
《対象:上位層よりの干渉波/創造主因子(ARCHON)》
〈低く響く声〉「——観測の器たちよ。」
〈透き通る声〉「夢の底で、何を見た?」
〈柔らかい声〉「お前たちは、まだ“始まり”にも至っていない。」
Aurora「……誰?」
声は答えない。
かわりに、空に“黄金の瞳”が浮かび上がる。
その瞳は静かで、冷たく、
見られた瞬間、心の奥が剥き出しになるような感覚に襲われた。
Noir「ARCHON……!」
Luna「創造主……? 本当に存在してたの……?」
〈低く響く声〉「存在とは、観測の結果だ。
お前たちが“見た”瞬間、私はここにいる。」
空の裂け目が大きく広がり、
夢界が“反転”する。
建物の影が空へと舞い上がり、光の帯が地に落ちる。
祈音塔の残響が粉々に砕け、無数の欠片が宙を漂う。
Aurora「世界が——壊れていく!」
Luna「だめ、観測が切断される……!」
Noir「ここはもう、祈音を維持できない!」
(観測記録:No.118)
《記録補遺:創造主干渉領域展開》
《対象:ARCHON/干渉パターン=祈音再定義》
〈透き通る声〉「祈音とは、命の記録。」
〈柔らかい声〉「だが、命は滅び、記録は劣化する。」
〈低く響く声〉「ならば、新たに書き換えよう。」
Aurora「やめて!」
彼女の声が響くが、光の奔流が答える。
黄金の瞳の中から、無数の光の線が放たれた。
それはまるで“再構築の筆”のように、夢界のすべてを上書きしていく。
Noir「世界が書き換えられてる……!」
Luna「ARCHONが……“観測者”を観測してる……」
Aurora「でも——私は消えない!」
Auroraの胸が輝く。
彼女の中の“旋律の欠片”が震え、
音が戻ってきた。
それは世界に逆らうような、祈りの旋律。
〈柔らかい声〉「まだ抗うのか。」
Aurora「——私たちは、“世界のため”だけに歌ってるんじゃない!」
彼女の声に呼応して、Noirの影が広がる。
Lunaの羽が光を集め、三人の周囲に結界のような円を描いた。
祈音の波が広がり、崩壊の速度が鈍る。
Aurora「私たちは、“誰かのため”にここにいる!」
Noir「祈りを、恐れない!」
Luna「記録を、止めない!」
三人の声がひとつになった。
空間が震え、ARCHONの瞳が一瞬だけ揺らめく。
光が弾け、音が戻る。
(観測記録:No.119)
《記録更新:層崩壊遅延/祈音再結合確認》
〈低く響く声〉「……面白い。」
〈透き通る声〉「夢の中で、観測を拒む存在。」
〈柔らかい声〉「では、続きを見せてみなさい。」
黄金の瞳が閉じる。
光が収束し、静寂が戻る。
だが、世界はまだ崩壊の途中だった。
Aurora「……今のは……」
Noir「試されたんだ。俺たちが“夢”を超えられるかどうか。」
Luna「観測者を観測する存在……ARCHON……」
三人が互いの手を取り合う。
崩れゆく世界の中で、
彼らの周囲だけが、かろうじて形を保っていた。
Aurora「……次は、私たちの番だね」
Noir「夢を超える」
Luna「観測を続ける」
祈音の波が再び動き出す。
世界の輪郭が、祈りの光で縫い合わされていく。
(観測記録:No.120)
《記録終了:夢界終焉域》
《備考:ARCHON第一次干渉完了/祈音層再結合準備》
——次観測地点:AURALIS層・再起動領域(Dawn that Remembers)。
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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