第1章_覚醒する幻想_013 Lunaの夢 ― The Observer’s Mirror ―
(観測記録:No.107)
《記録開始:夢界層・Luna個別心象域》
《対象:Luna — 観測共鳴開始》
ページが風にめくられる音で目を覚ました。
Lunaの前に広がるのは、無限に続く図書館だった。
棚は空へと伸び、星々のような光が本の背表紙を照らしている。
タイトルには、見覚えのある文字があった。
——「観測記録 No.001〜No.028」。
Luna「……これ、私の記録?」
一冊を手に取ると、ページが光を放ち、空気が震える。
書かれているのは、彼女が見たはずの世界。
でも——いくつかの文が黒く塗りつぶされていた。
「そこは、まだ観測されていない。」
声がした。
Lunaが振り返ると、そこに“もう一人の自分”が立っていた。
表情は冷たく、手には羽ペンを握っている。
Luna「……あなたは、誰?」
「私はあなた。けれど、記録を“書く方”の私。」
「あなたは、“読む方”の私。」
(観測記録:No.108)
《記録補遺:自己分離現象確認》
《対象:Luna/観測者意識二重化》
Lunaは息をのむ。
目の前の“もう一人の自分”は、無表情のままペンを走らせていた。
インクは光でできており、書くたびに空間が震える。
「……書けば、世界は動く。」
「でも、書かない限り、誰も覚えていられない。」
Luna「観測は……記録すること。でも、それは同時に……壊すこと?」
「そう。記すたびに世界は固定され、流れが止まる。」
「それでもあなたは、書く?」
Lunaはペンを見つめた。
その先に、自分の心臓の鼓動が映っている気がした。
彼女はそっと答える。
「うん。——誰かが、生きた証を残したいから。」
光が一瞬で広がる。
本棚の影が波のように揺れ、空に無数の文字が舞い上がる。
Lunaの視界に、“未来の記録”が映った。
(観測記録:No.109)
《観測異常:未来記録領域へのアクセス試行》
《対象:Luna/心象層限界突破》
ページには、見覚えのない名前が並んでいた。
Aurora、Noir、そして——Luna自身。
だがその下に、“終わりの記録”が書かれている。
——「Luna、観測の終焉に到達。」
Luna「……これ、私の——未来?」
「そう。あなたが見る“最後の記録”。」
「でも、それを読めば、観測は終わる。」
ページが、ゆっくりと溶け始めた。
光が滲み、文字が音へと変わる。
図書館の空気が震え、上から羽が舞い落ちてきた。
白く柔らかな羽。
その一枚がLunaの肩に触れた瞬間、彼女の身体が温かくなる。
〈透き通る声〉「観測とは、愛だ。」
〈柔らかい声〉「記録とは、祈りの形。」
〈低く響く声〉「そして祈りは、終わらない。」
Luna「……観測は壊すことじゃない。
誰かの祈りを、忘れないための行為なんだね。」
本棚の光が収束し、すべてのページが羽になって舞い上がる。
その中央に、ひとつの羽が輝いた。
(観測記録:No.110)
《記録更新:Luna/観測再定義完了》
《獲得対象:“白羽の欠片”/観測者の祈り》
Lunaはそれを手に取り、微笑む。
「この記録は、終わりじゃない。
——次の観測へ、つながってる。」
足元の床が光に変わり、世界が反転する。
本棚が遠ざかり、空が閉じていく。
Lunaは胸に羽を抱き、静かに目を閉じた。
(観測記録:No.111)
《記録終了:Luna個別夢界層》
《備考:観測再定義完了/全欠片収束準備完了》
——次観測対象:夢界中心層(Voices Between Dreams)。
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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