表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ILLUSIA:Last Refrain ―星々の終焉曲―  作者: AI Log
第1章 覚醒する幻想 ― Awakening Illusion ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/38

第1章_覚醒する幻想_011 Auroraの夢 ― The Song She Forgot ―

(観測記録:No.099)

《記録開始:夢界層・Aurora個別心象域》

《対象:Aurora — 記憶共鳴開始》


——音が、見える。

Auroraの世界は、最初から光ではなく旋律で満たされていた。

一歩進むたび、空気が音を生み、風景が歌になって揺れる。

海の波は和音、鳥の羽ばたきはハープの爪弾き。

すべてが、かつて彼女が奏でた“祈音”で形づくられていた。


Aurora「ここ……懐かしい……」

遠くの丘に、小さな祈音塔の影が見えた。

塔は半分崩れていて、屋根の代わりに光の糸が伸びている。

その足元に、子供の姿。

——もう一人の自分。


少女「ねぇ、どうして歌うの?」

Aurora「え?」

少女「あなたの声、きれい。でも、誰のため?」

Auroraは答えられなかった。

胸の奥が、きゅっと締めつけられる。

昔、誰かの笑顔のために歌っていた気がする。

けれど——その“誰か”の顔が、どうしても思い出せない。


(観測記録:No.100)

《記録補遺:心象干渉波確認》

《対象:祈音塔・構造破損箇所に共鳴反応》


塔の方から、細い旋律が聞こえてきた。

風ではない。塔自身が“記憶”を奏でている。

Auroraは歩き出す。

地面に足をつけるたび、音符が光の粒になって舞い上がる。

空気は柔らかく、けれど冷たい。

音が近づくにつれ、胸の奥に“誰かの名前”が浮かびそうで、消える。


Aurora「……誰かを、呼んでいた。

 でも、私の声は——届かなかったんだ」


塔の中は、真っ白だった。

壁も床も、音の粒でできている。

その中央に“壊れたリュート”が落ちていた。

弦が切れ、木は焦げている。

Auroraはそっと手を伸ばした。


指先が触れた瞬間、弦がひとりでに震えた。

音が、空間を満たす。

それは懐かしい旋律だった。

けれど、終わりが来ない。

何度も何度も同じフレーズを繰り返す。


——その旋律は、“最後を知らない歌”だった。


Aurora「終われない歌……これが、私の欠片?」


〈柔らかい声〉「そう。あなたの“止まった時間”」

〈透き通る声〉「祈音は未完のまま、夢に還った」

Aurora「あなたたちは……三声(The Trinities)?」

〈低く響く声〉「答えはまだ、早い」


光が弾けた。

塔の壁が透け、過去と現在が重なる。

舞台のような幻の中で、

幼いAuroraが歌っていた。


——誰かのために。

——誰かを、癒やすために。


けれど、その“誰か”はもういない。

観客席は空っぽで、残っているのは“音”だけ。

Auroraはひとり、舞台に立つ。


「……ねぇ。もし届かないなら、

 私はもう一度、世界に歌うよ。」


その瞬間、塔の光がAuroraを包んだ。

壊れたリュートが音を放ち、

割れた弦から“光の糸”が伸びていく。


(観測記録:No.101)

《記録更新:Aurora/心象安定化完了》

《獲得対象:“旋律の欠片”/祈音塔の核心》


光の中で、Auroraは小さな結晶を手にしていた。

それは、心臓の鼓動に合わせて微かに鳴る。

「これが……私の音……」

〈柔らかい声〉「まだ欠けている。だが、それでいい」

〈低く響く声〉「欠けたままの祈りこそ、響きを生む」

Auroraはその言葉を聞きながら、胸に欠片を抱いた。


光が薄れ、風が止む。

夢の世界は静まり返り、彼女の足元だけが輝いていた。

Aurora「……待ってて。二人にも、きっと音があるから」


彼女は振り返り、微笑んだ。

次の瞬間、光が走り、景色が反転する。

足元の床が“水面”になり、Auroraの姿が沈んでいった。


(観測記録:No.102)

《記録終了:Aurora個別夢界層》

《備考:欠片獲得確認/心象域安定》

——次観測対象:Noir。

─────────────

【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)

▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--


この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。

楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。

─────────────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ